博報堂コンサルティング・アジア・パシフィックは2020年10月29日に、「OMO先進国の事例にみる近未来のショッピング体験」と題したオンラインセミナーを実施した。このセミナーでは、OMO(Online Merges With Offline) 時代における競争力のあるショッピング体験を提供するための新しいカスタマージャーニーを描くためのヒントが提供された。ゲストスピーカーに、AI技術を活用したシンガポール発のメガベンチャー企業ViSenze社のCEO創業者Oliver Tan氏を迎え、中国、アセアン、欧米の世界最先端のショッピング体験の実例と、Oliver氏の日本企業との協業経験に基づく熱のこもった日本企業への提言もあり、大変活況なセミナーとなった。
コロナ禍で加速するショッピング行動のデジタル化
コロナ禍により、世界中でオンラインショッピングの浸透が加速しているが、ViSenze社のビジュアル検索データ(スマートフォン内の画像検索)によると、商品カテゴリーによる利用度に違いがある。ASEAN諸国におけるオンラインショッピング指数のカテゴリー別トレンドを見ると、Covid-19がASEANで広まり始めた3月では、健康・美容カテゴリーの検索数が急増した一方、その後、ロックダウンにより在宅時間が増える中で、スポーツ・ジム用品の急増に加え、衣料・アパレルも含めて全体的に検索数が増加するなど、コロナ禍に生活者の買い物行動の変化が見られる。
また、オンラインショッピングをサポートするデジタルプラットフォームの機能として、ライブコマース、VRショールーム、オンラインイベント等様々な新しい機能の浸透が一気に進んだ点も触れられた。
出典:ViSenze社「ビジュアル検索データ」
OMO時代におけるカスタマージャーニーとリアル店舗の再定義
OMOは、元Google Chinaの李開復(リ・カイフ)が提唱した「消費者は常時オンラインに接続され、オンラインとオフラインの境界が曖昧になり、両者が融合していく」というコンセプトである。OMOの浸透により、消費者のあらゆる行動が一つのIDの下でデータとして蓄積され、オンラインとオンラインで複数のタッチポイントで統合されることで、顧客にとって、より最適なショッピング体験をもたらすことが可能となる。これにより、マーケティング戦略を検討する際に考慮すべき点として、1)消費者の属するコミュニティにおけるブランドの評価が顧客の態度を左右すること、2)商品情報の調査段階において顧客同士が積極的に繋がり推奨し合うこと、3)ブランドロイヤリティは、購入者でない人も含めてブランド推奨意向の高さで定義される、という3つの変化がある。
また、OMO時代における店舗は、「ブランド価値の体験」の場としての役割がますます重要になる。フィリップコトラーは、著書「コトラーのリテール4.0」の中で「フィジカルなタッチポイントが、ブランドを祀る神殿のようになる」と書いている。ブランドの哲学、ストーリーを体験できるフラッグシップショップが世界で人気になっている。セミナーでは、ASEANのOMO先進事例として、若者の間で人気となっているオンラインショップから始まったブログショップ(Blogshop)等、様々な事例が紹介された。
近未来のショッピング体験に重要な3C:ViSenze社
AIビジュアルツールを活用してオフラインとオンラインの世界を統合するViSenze社のテクノロジーは、日本や欧米を含め、世界の主要リテールチェーン、グローバルブランドショップで利用されており、世界中の消費者に効率的で快適なショッピング体験を提供している。
Oliver氏は、これからのリテールに重要なことは、3C(コンテンツ、コマース、コミュニティ)の最適化であるとし、OMO時代における変化を具体的な事例を通じて紹介した。これまでのカスタマージャーニーは、オンラインタッチポイントとオフラインタッチポイントが区別された直線的な経路であったが、OMO時代のカスタマージャーニーは、多様なタッチポイントが融合し、その中でコンテンツ、コマース、コミュニティそれぞれが、最適なタッチポイント、タイミングで提供されることが求められる。消費者は、自分が属するオンラインコミュニティの影響を受けながら、ブランドに対する選好を形成し、商品の検索を支援するためのオンライン・オフラインのプラットフォームで提供するコンテンツが意思決定を左右する。また、「店舗で試着し、オンラインで購入する」、「AR/VRで試着・購入し、店舗で受け取る」など、購買プロセスの多様化も進む。店舗体験も、蓄積された顧客データによるリコメンデーション機能、在庫データと連携した店舗での商品検索サービスなど、パーソナライズ化されたリアルタイムのショッピング体験を提供している。
出典:ViSenze社
アジア市場開拓に向けた課題
このような状況でアジア市場を開拓していくためには、市場環境と技術の急速な変化、各国内でのセグメントの多様性、各国により異なるショッピング行動、ローカルパートナーとの関係構築といった課題がある。博報堂コンサルティング・アジア・パシフィックから、未来洞察、戦略的なセグメント設定、生活者インサイトに基づくビジネスモデル開発、ローカルパートナーとの関係構築など、有効なショッピング体験提供に向けたソリューション構築に関するソリューションが紹介された。
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