企業/事業/製品レイヤーで複数のブランドを持っていたり、M&Aによって事業編成が変わったりした企業が、「自社ブランドの体系整理」という課題を抱えるケースは少なくない。また新規領域へと事業を広げようとする場合にも、既存ブランドと新規事業の関係性を検討する必要が出てくる。本コラムでは、そうした際にどのような考え方でブランド体系を整理し、運用すべきかについて解説する。
ブランド体系整理では、まず初めに現状分析を行って各ブランドの事業・製品戦略や顧客からの評価を把握し、あるべきブランド体系の仮説を導出する。それから実際にブランド体系を策定していくわけだが、ブランド体系のゴール像を描く際は、各ブランド間の「タテ」と「ヨコ」の関係に注意して全体最適を図ることが重要だ。
「タテ」の関係では、上位ブランドのカバー範囲が下位ブランドの提供価値を内包できているかに注意し、上位ブランドが持つブランド価値と、下位ブランドの事業・製品が持つその市場内での特長が顧客にバランスよく伝わるようにする。
「ヨコ」の関係では、同レイヤーの事業・製品ブランド同士で展開範囲の棲み分けはできているか、またそれらが相互シナジーを生む関係にあるかに注意する。
この「タテ」「ヨコ」の関係整理を行うためには、全ブランドの提供価値を棚卸して比較する必要があり、提供価値の整理には「ブランドの扇」というフレームが有効である(ブランドの扇については当社サービス資料「提供価値規定」で解説している)。
もう一つ、ブランド体系整理で中心となるのが「ブランドタンク」という考え方である。
ここでは「蓄積」「分配」「識別」の3視点でブランド体系を検証する。「蓄積」は、実際の事業活動でブランド価値を生み出す下位ブランドと、その価値を貯める上位ブランドの関係を明確にすること。「分配」は価値を蓄積した上位ブランドが他の下位ブランドの事業を支援すること。「識別」は下位ブランド同士の特性・提供価値の違いを、顧客を混乱させることなく伝達することだ。この3つを実現できるようなブランド体系を策定する必要がある。
以上のような視点を踏まえて、主なブランド体系のパターンは以下の4つに分類できる。
「マスターブランド型」:グループ・企業ブランドが下位ブランドよりも優先して認識される
「サブブランド型」:グループ・企業ブランドが強調されつつ、各社の個性もある程度守られる
「エンドース型」:下位ブランドが強調されつつ、上位ブランド名が併記されて信頼感・品質保護を与える
「個別ブランド型」:下位ブランドの独自性が押し出され、上位ブランドとは紐づかない
この4パターンは、上位ブランドがもたらすグループシナジーと、下位ブランドの独自性・識別性のトレードオフによって選択される。
ブランド体系のゴール像を描くことと並行して、今あるブランドの整理も必要だ。既存ブランドの評価には、一般的な事業性ポートフォリオに加えてブランドポートフォリオを用いる。ブランドポートフォリオでは上位ブランドとの提供価値の近似度と、そのブランド自体の認知度を評価し、ブランド統廃合の判断材料とする。
ブランド体系を策定できたら、新体系への移行プロセスを設計する。ブランド体系整理では、ブランド名の変更に伴ってロゴや全制作物を作り直す必要があったり、人事異動や組織の再編が必要だったりする。そうしたタスクを洗い出し、社内外のステークホルダーと調整しながらスケジュールを設計する。
さらに、今後新規事業・新製品を展開した際に、それをどの既存ブランドに組み込むべきか、あるいは新しいブランドを立ち上げるべきかを判断する運用ルールを明確に定める。既存ブランドの提供価値と新事業の包含関係や、新規ブランド立ち上げの可否といった事業上の都合を判断材料とし、自走的にブランド体系が整理される状態を作る。
ブランド体系整理のサービス詳細にご興味のある方は、サービスページをご覧いただき、ぜひ資料ダウンロードまたはお気軽にお問合せいただきたい。