<第1回>今だからこそ考える 事業変革・社内改革のはじめ方 ~「問」の立て方~

社内改革は「問を立てる」から始める

環境の変化により、われわれの意識や「便利」の概念は大きく変わることを余儀なくされている。いずれストレスが無くなり意識が緩やかにこれまでに近づいていっても、「便利」はもどらないといわれている。
これは、生活者たる個人もそうだが、法人間の取引、はたまた社内業務も同様である。
今こそ、その変化をとらえ「変わってしまった」ではなく、「変えていく」手を打つタイミングではないだろうか。

長期的に事業構造を「変える必要がある」と考え“ない”企業は少なくないが、いざ精鋭メンバーでプロジェクトチームを立ち上げて議論を繰り返してもどう課題に取り組めばいいか分からず具体的な動きに繋がっていかない、ということはよく相談をうける。

変化が多すぎる/変化させたいことが多すぎる結果、イシューや課題、施策の因果関係や優先順位の整理ができていないことが多い。事業や業務上の問題(と思われること)をとりあえず全部上げてみて課題として設定する、などのアプローチである。この方法は、グローバル企業やコングロマリット(少なくとも長いサプライチェーンや複数事業をもつ企業)では、対象が広すぎてそもそも問題・課題を現場から吸い上げて一覧すること自体現実的ではなくなってしまう。

つまり、事業変革や社内改革に向けてどこにフォーカスすべきか、「問を立てる」ことに戸惑っていることが多いのである。

本コラムでは、事業変革・社内改革プロジェクトを動かしていく上で、見落としがちな3つのアプローチについてご紹介し、現状打破に向けたヒントを提供したい。

第1回となる今回は、特に問題・課題・戦略の整理について解説する。

 


事業構造を「変える必要がある」が、なかなか動かない

2019年10月に日本マーケティング協会が企業経営者を対象に行った調査において、日本企業の約8割が10年後に向けて事業構造を「変える必要がある」と考えていることが明らかになった(※1)。少子高齢化、国内市場の成熟化、デジタル技術の発達などによって変わっていく生活者ニーズや購買行動に合わせて既存ビジネスの見直しが迫られる中、いかにして根本的な経営課題に取り組んでいくべきかが問われているのである。アフターコロナの2020年5月末時点においては、ますます対応の必要性を感じる企業や業界が増えている。

しかし漠然と何かを「変える必要がある」ことは分かっていても、何から取り組めばいいのか分からない。事業変革・社内改革プロジェクトチームを立ち上げてみても、なかなか思うように進まない。定期開催されるミーティングではメンバーから色々と面白いアイディアは出ているが、それらがどの程度効果を発揮するものなのか判断する術がない。毎回なんとなく議論するだけで、具体的なアクションに繋がっていかない。こうした悩みを抱える経営者も多いのではないだろうか。

そもそも、「課題」とは何か

事業変革・社内改革プロジェクトを具体的に進めるための第一歩は「課題」を明らかにすることである。これはあまりにも当然のことながら、意外とここでつまずくことも多い。それは、「課題」という言葉があまりにも一般的に使用されるために、そもそも「課題」とは何であるのかの共通認識がないままに議論を進めようとしてしまいがちだからである。

そもそもビジネスにおいて「課題」と「問題」は、全く性質が異なるものとして捉える必要がある。

問題とは事業目標(KGI)の達成を阻害している核心的な要素のことであり、多くの場合、問題は複数の要因が重なって発生していることが多い。一方で、課題とは、問題を解決するために取り組むべきテーマのことを指す。例えば、問題が「社員の当事者意識の希薄」であれば、課題は「社員の当事者意識の向上」となる。問題と課題は表裏一体でありながら、全く性質の異なるものであるため、しっかりと切り分けて理解する必要がある。

課題を明らかにすることができれば、その課題に取り組むための戦略(活動の方向性や全体設計)を検討することができる。そして、その戦略に基づく具体的な活動内容が施策であり、その施策が適切な効果をもたらすことによって、事業目標(KGI)が達成される。

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図1 問題と課題の関係性

 

原因・問題・課題・戦略・施策の関係性を整理しないままに議論を進めてしまうと、メンバーそれぞれが思い思いの視点から議論を展開してしまい、ひとりは問題について、ひとりは課題について、ひとりは施策について意見を言い、結局何についての議論をしているのかが迷子になってしまうことがある。事業変革・社内改革に向けた議論を始める際には、必ずこれらの要素の関係性を整理する必要がある。

いま目にしている問題は、あくまで「収益やプロセスにネガティブインパクトを与えている事象や事実」であり、解決すべき対象として課題化すべきものかどうかを選ぶ必要があるのである。

つまり、課題化するために解決すべき「問題」はなにか、その原因たる事象はなにかを把握すること、これが立てるべき「問」である。

第2回では、上記の各要素を明らかにしていくために必要となる3つのアプローチについて記述していきたい。

 


執筆協力: 吉田寿美(フェロー)

※1: 日本企業の経営課題2019調査結果(閲覧日:2020年3月29日)
https://jma-news.com/wp-content/uploads/2019/10/20221608cb407dda0467bd6d4d980720.pdf

 


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