共創プラットフォーム構築成功のために ~設計から立上げ~

  • 事業変革

事業開発のプランニングの中で必ずあがる二つのワードがプラットフォームビジネスである。(もう一つがサブスクリプションもしくはリカーリング)その中でも、関連する商品やサービスを集め、その提供者と利用者をつなぐ「場」を提供することで収益を上げるプラットフォームができないか検討するケースが多い。さらに、プラットフォーム検討の過程で自社および業界のバリューチェーン※1を棚卸し、その中での機能整理や最適化にもつながる副産物もある。


また、プラットフォームビジネスの設計から立上において、ジョイントベンチャー※2のような形で、バリューチェーンを担う複数の企業や組織が協業し「共創」という形で進めるケースは少なくない。しかし、実際にはうまく進めきれなかったり、プラットフォームがきちんと動く状態にならなかったりすることも多い。それは一体なぜか。

 

ここでは、共創プラットフォームの設計と立上げにあたり重要となるポイントを、廃棄物処理・リサイクル業界というエコシステム※3を例にご説明する。

 

目次:

廃棄物処理・リサイクル業界における共創プラットフォームとは

ポイント① プラットフォームにおける成長レバレッジポイントはどこか

ポイント② プラットフォームの持続と成長のために必要なこと

ポイント③ プラットフォーム「スタート」の最大のボトルネック


廃棄物処理・リサイクル業界における共創プラットフォームとは

まず、今回の事例の前提知識として、廃棄物処理・リサイクルのしくみを簡単に整理する。

廃棄物は、排出者のもとから中間処理事業者のもとへ運搬され、減量・減容化される。それから、リサイクルできるものは再生加工を経て再び資源として活用され、それ以外のものは埋め立て処理される。この一連の流れにつき、その責任は排出者にあると廃棄物処理法に定められている。これは、例えば廃棄物処理を委託された中間処理事業者や最終処理事業者が、不適切な処理や不法投棄などを行った場合でも、その責任は排出者にあるということであり、排出者はその処理状況をきちんと把握・管理するために、処理の委託時にマニフェストを交付することになっている(図1)。

 

1:廃棄物処理・リサイクルの流れ (HCIにて作成)

 

マニフェストには、廃棄物の内容はもちろん、運搬事業者や各処理事業者の名称まで予め記載する必要がある。そのため、排出者は事前に各事業者を手配・調整する必要があるのだが、その情報は一元化されておらず、各中間処理事業者が代行しているのが現状である。

このように業務プロセス上の機能を各社が担い、かつ情報とモノ(廃棄物やリサイクル対象)がそれぞれの企業をまたがって引き継がれていく状態がこの業界のプロセスである。

では、それがバリューチェーンに置き換えられるとどのようなバリュー=価値が必要とされるのであろうか?

まず、バリューチェーンを誰にとって、どのようなバリュー=価値を実現する「画」を書くかである。廃棄物そのものやリサイクル原材料として再生企業・設備に引き渡されるサプライチェーンや事業構造を描くのであれば、プロセスを整理して、最下流の生産業者がリサイクル原料や半製品などを受け取るフローとなる。一方で排出者側に回って考えると、「法において適正に」「安いコストで」「自身の手間暇少なく」処理が完遂されるフローを描く必要がある。特に、排出者にとっての大本のマニフェストの存在意義から考えると「エコ」で「最も社会負荷や環境負荷が少ない」方法で完了されるべきである。

よって、バリューチェーンを設計した場合、そもそもの「ゴール設定」がまず第1段階なのだが、本件についてはまた別の機会としたい。

ここで設計されるべきは「排出者にとって適法であり」「社会・環境負担が小さい」方法での処理を行うためにどのような最適化を行うプラットフォームが作れるか、というお題であったとして話を進めよう。

すると、いくつかの最適化施策のなかで『それぞれの関与者の持つ情報をいかに共有するのか』という課題が見えてくる。特に、全体をプラットフォーム化するにあたり、部分的に機能提供をする側の企業群、つまり図1でいう運搬業者や最終処理業者、であるが、彼らからすると、ニーズとデマンズの可視化こそが、コストを削減する・売上を最大化=リソースを最大限活用することになり、それらの経済的なメリットがプラットフォームに参画する動機となる。

つまり、この全体のビジネスシステムの中で、上流から下流までの情報を共有し、最も無駄のないサプライチェーンを稼働させることがプラットフォームの役割となる。

と、極めて当たり前のプラットフォームへの機能要求が導かれた。しかし、プラットフォーム立上げは簡単ではない。それはなぜか?

実際にプラットフォームを設計し、立上げるために 抑えるべきポイントは何であろうか。

共創プラットフォーム事業のポイントとは?

ポイント① プラットフォームにおける成長レバレッジポイントはどこか

プラットフォームの立上げには、いうまでもなく、複数の企業・ユーザーの参画が必要であるが、企業間のプラットフォームの場合は特に、案件を依頼する「顧客」企業を集めることが必須である。

今回のケースの場合では、廃棄物処理を依頼する「排出者=顧客」と、このプラットフォームを通じてサービスを提供する「参画事業者」が必要だ。中間処理事業者が共創してプラットフォームを立上げる場合、参画事業者はすでに複数社存在しているため、まず大事なのは、顧客となる排出者が「廃棄物を出す」という案件情報をいかに集めるか、ということである。

この、案件情報の吸い上げという点で成功している事例の一つに、不動産業界において国土交通省から指定された機関が運営する「レインズ(REINS)」という情報ネットワークシステムがある。レインズは、不動産会社の持つ案件情報をひとつに集めて検索することができる、不動産会社間の情報共有システムだ。不動産の売り主との契約が一般媒介契約という形でない限りは、情報をレインズに登録することが義務づけられているため、ほぼ一元的に情報が集まっている(※4)。また、売り主から見れば、多くの不動産会社が情報閲覧するため、買い手とマッチングされる可能性が高まるというメリットがある。

この、レインズの仕組みと同様に、例えば排出者がマニフェストを行政へ提出する段階の情報を一元的に吸い上げられるような仕組みなど、案件情報を集めるには、排出者=顧客がこのプラットフォームにアクセスする「理由」を仕組みとして作ることが大切なのである。

案件獲得のためには、顧客が集まる仕組みが必要であり、顧客情報が集まるからこそ参画社が集まるというサイクルがプラットフォームの成立には必要である。

 

ポイント② プラットフォームの持続と成長のために必要なこと

プラットフォームにおいて、初期に設計しておくべきことは短期的なマッチング支援で終わるのではなく、持続的なプラットフォームとして成り立たせられるかどうかの準備である。この準備次第で、そもそものプラットフォームが継続的に使われるか、さらには参加者が増えて成長するかが左右される。

そのためには、参画企業・ユーザー企業それぞれにとっての参加動機作りが必要になる。

ポイント①で、排出者=顧客の動機付けが重要なことを指摘した。さらに、図1に示した運搬、埋め立て処理、再生加工など、このプラットフォームに参画しサービスを提供する事業者に対しても動機づくりが必要となることは言うまでもない。

それも、参画とは、「参加企業に名を連ねること」や「協力金を拠出する」ではなく、プラットフォームが動くために必要な工場の稼働状況やトラックの空き状況などの情報を積極的に提供してもらうことである。これらがなくては、うまく案件とマッチングできず、利用者も減少するスパイラルに落ちうる。

しかし、現状でそれなりに順調に事業展開している事業者にとっては(そうでない企業にとっても)情報提供の手間をかけるにはそれなりの動機が必要である。事業経営が順調な事業者の多くは、立地が良い、性能が優れているなど、何らかの優位性があると考えられ、彼らの参画がこのプラットフォーム自体の質にも影響し、プラットフォームの質の向上は、ひいてはこのプラットフォームビジネスの持続と成長に深く影響する。

では、彼らをプラットフォームに参画させ、プラットフォームの質を向上させるにはどうすれば良いのか。

 

ここで、大手グルメサイト「ぐるなび」「食べログ」「一休」の戦略の違いを見てみよう。皆さんご存知のとおり、いずれもユーザー(顧客)と飲食店(参画事業者)をつなぐリクルートさんが言うところの「リボン型」のプラットフォームビジネスであるが、それぞれ立上げ時のアプローチが異なっている(※5)。

「ぐるなび」は、飲食店への価値提供を重視したため、参画したい飲食店にとってメリットの多いサービスを提供し、そこで収益を得ると同時に掲載情報を膨大に増加させ、一般生活者から利用獲得をしてきたといわれている。

一方、「食べログ」はユーザーへの価値提供を重視し、口コミやランキングなどを充実させ、リピート率の高い優良なユーザーを獲得することで、掲載店舗の質への信頼性を得てきたといわれている。

「一休」は高級ホテルの宿泊予約サービスから発展していることもあり、ターゲットを絞り込み、そもそも掲載店舗の質を厳選して高級ホテルや旅館、レストランに特化してきたといわれている。鶏タマゴ論となるが、ハイエンドなコンテンツを用意し、高くてもよいものを「確保したい」ユーザーに絞って利用者を獲得したと考えられる。

それぞれの、ユーザー獲得とコンテンツ戦略が、現在のサービス全体の成長へとつながっているといえる。

顧客かコンテンツ/サービサーか、というで言えば、コンテンツ/サービサーが利用には必須であることは自明であり、プラットフォームの持続と成長のため、顧客にとっての質を向上させるには、優良な参画事業者が集まることが必要である。そして、優良な参画社 を集めるための動機付けとしてもまた、優良な顧客を獲得することが大切だ、というところに戻ってくる。

上記3者は、参画企業の利便性と業務削減ニーズに応えたぐるなび、リピート率の高いユーザーを送客するメリットを提供している食べログ、さらにコンテンツで利用者を圧倒的に絞り込みクローズドでのアプローチを実現した一休、とそれぞれプラットフォームに参加させる動機をつくり、プラットフォームを成立させている。

いずれにせよ、継続と成長のためには、参画社の動機付けによる数と質の確保が必要不可欠となる。

 

ポイント③ 運用体制と決裁・決済権限の明確化

これまでは、プラットフォームの仕組みについてポイント①②で説明をしてきた。

しかし、プラットフォーム化の最大の壁は、運用体制と権限の設計・設定である。

プラットフォームのように複数の会社や組織がジョイントベンチャーのような形で共創して立上げる場合、難しいのがその意思決定の進め方だ。本来、一社が主導権を握ると話は早いが、それでは複数社が同等の立ち位置で共創する意味がない。

しかし、船頭多くして・・・となることも避けたいところである。

そこで、以下の要素が必要となる。

 

・運用体制を決めること

 ジョイントベンチャーの最大のネックは、船頭が多く進まないことである。従って、このプラットフォームを中心となって進めていく、ニュートラルな立ち位置の事務局機能を作ることが重要である。

 

・プロジェクトの原資を決定し、投資可能な最大予算を予め確保すること

 予算は必要に応じて都度集めるのではなく、各々がいくら投資するのかを予め決めておくこと。それをプロジェクト原資としてプールし、そこから出資するという形をとることであある。基本、株式のマジョリティという考え方を踏襲するとわかりやすい。

 

・決裁(方針)と決済(お金)の決定権者を決めること

 最大のネックとなるのが、決定がすすまないことである。合議制をとったために流れが止まってしまうケースは非常に多い。そのため、合議の仕組みを持ちつつも、最終的には方針と費用の最終的な決裁・決済権が誰にあるのかを明確にしておくことが大切である。

 

・最終判断の判断基準と判断方法を決めておくこと

 仮に決定権者を決めたとしても、その判断がブラックボックスであるとどこかでコンフリクトや不満が生まれる。最終的な決裁・決済をするために、どのような方法で最終決定をするのか、ということはJVを進めるうえで非常に重要である。そのため、投票したうえで決裁・決済権者が最終判断を下す、など、絶対排他で決まる方法とその経緯の共有方法を決めておくことが必要である。

以上のポイントを踏まえた上で、どのような仕組みでキャッシュポイントを設計するかが、共創プラットフォームビジネス立上げのポイントである。

当社では、共創パートナーとの協業によるプラットフォームビジネスの設計・構築から運用までトータルで支援できるため、ぜひお問い合わせ頂きたい。

 

※1:バリューチェーンとは、企業の競争優位性を高めるための考え方で、主活動の原材料の調達、製造、販売、保守などと、支援活動にあたる人事や技術開発などの間接部門の各機能単位が生み出す価値を分析して、それを最大化するための戦略を検討する枠組み。価値連鎖と邦訳される。ハーバード・ビジネス・スクール教授のマイケル・ポーターが著書「競争優位の戦略」の中で用いた。(日本大百科全書より)

※2:ジョイントベンチャーとは、複数の企業が互いに出資し、新しい会社を立上げて事業を行うこと。合弁企業とも呼ばれる。

※3:エコシステムとは、生態系という意味の言葉。ビジネスにおいては、複数の企業や団体がパートナーシップを組み、それぞれの技術や強みを生かしながら、業種・業界の垣根を越えて共存共栄する仕組みを指す。

※4:一般媒介契約とは、物件売却の仲介を不動産会社に依頼する場合に締結する、媒介契約の一種で、複数の不動産会社に仲介を依頼することができる契約。また、依頼者が自分で購入希望者を見つけた場合も売買することが可能。指定流通機構(レインズ)への登録義務も任意で行え、販売状況の報告もない。

※5:リボン型ビジネスモデルとは、ユーザーと事業者の間に立ち、プラットフォームとして両者をつなぐサービスを提供するビジネスモデル。参考:リクルートホールディングスhttps://recruit-holdings.co.jp/who/reports/2018/vcp-mission.html


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