経営に今取り入れるべきデザイン

  • 事業・製品開発

世界ではアップルやダイソンなど、多くのグローバル企業がデザインの力を巧みに経営に取り入れる「デザイン経営」によって、飛躍的な成長を遂げている。この潮流を受けて、日本企業に対して経営資源としてのデザインの価値を訴えるべく、2018年に経済産業省と特許庁より「デザイン経営」宣言が発表された。しかし、多くの日本企業は「デザイン」というものをまだまだ狭義でしか捉えておらず、企業経営やビジネスの文脈で理解・活用することができていないのが実情だ。

そこで本稿では、広義の「デザイン」あるいは「デザイナー」が、どのように経営課題の解決に寄与するのかということについて、筆者なりの考えを述べたいと思う。

日本企業に共通する経営課題

現在、多くの日本企業が直面している共通の経営課題は、主に3つ挙げられる。それは「①社会課題への対応」、「②組織・業務プロセスの再構築」、「③新たな顧客体験の創出」である。これらの経営課題に対して、デザイナーの力が具体的にどのように寄与するのかについて以下に述べる。

課題① 社会課題への対応

●ESG投資/ SDGsの台頭

地球環境保護をはじめとする社会課題は、今や世界中のどの企業にとっても無視できない重要な経営課題となっている。世界の機関投資家もESG基準による投資銘柄の選別を強めており、もはや社会課題に本気で取り組まない企業に対しては資本が回らない状況が着々と出来上がりつつある。

そんな中、日本企業はというと、政府によるコーポレートガバナンスコードの導入などもあり、ようやく株主や資本市場に対して真摯に向き合うようになってきたばかりという状況であり、さらにその先の社会課題やESGへの対応についてはまだほとんど着手できていない。行き過ぎた「株主第一主義」を修正する文脈でESG投資への注目が集まっている米国と比べると、周回遅れの状況と言わざるを得ない。

事業課題×社会課題=経営課題

そのような環境下において、経営にデザインを取り入れるとはどういうことなのか。それは、デザイナーの持つ「社会をよりよくするための関係構築力」を活用するということである。アートが内発的な動機から生まれる自己表現である一方、デザインの大前提は社会や暮らし、人の営みをよくすることである。つまり、デザイナーは、目の前にある課題を拡張して社会課題として捉え、さらに自らのプロジェクトの社会的意義まで昇華して考え、自問自答を繰り返している。

事業戦略を定量目標やKPIに落とし込むということは、経営者にとってそれほど難しいことではない。しかし、自社の事業戦略と社会課題、いいかえれば社会をよりよくするための課題を高度に結びつけ、そこに新たな関係性を見出し、自社なりの独自の意味や意義を定義づけるということは極めて難しい。なぜなら、そこには「社会性」すなわち「社会からの共感」という、曖昧で捉えどころのない視点が入り込むからだ。そして、この「社会からの共感」を知り抜いたプロフェッショナルこそが、デザイナーなのである。

課題② 組織・業務プロセスの再構築

●業務プロセスのパッケージ化

業務プロセスについて、これまで日本企業は「自分たちのやり方」にこだわり、業務システム導入の際も自社の業務プロセスへのカスタマイズを追い求める傾向にあった。よく言えばこだわりが強いということになるが、単に現状維持バイアスによる場合も多く、結果として非効率で高コストな体質に陥っていた。

しかし、近年では「自分たちのやり方」よりも、グローバルレベルの業界ベストプラクティスに基づいて設計されたパッケージの方が効率的な業務プロセスであるということは共通認識となってきている。そのため、日本企業においても「自分たちのやり方」に合わせてシステムを設計するのではなく、逆にシステムの方に自分たちの業務プロセスを合わせにいくというアプローチが主流となってきている。その流れの中で、今では経理財務や労務管理など、ありとあらゆる業務がパッケージ化され、アウトソーシング可能となっている。

●「コア業務」と「非コア業務」

ここで重要になってくるのが、「コア業務(本業)」と「非コア業務(非本業)」の見極めと選別である。そして、「非コア業務」については大胆にアウトソーシングを活用し、そこで創出した資金余力を思い切って「コア業務」に投下することができるかどうかという経営判断が、組織の命運を握るようになってきている。

「コア業務」と「非コア業務」の線引きは難しいが、たとえそれができたとしても経営者の仕事はそこで終わりではない。その業務がコアである「意味合い」を明確にし、それを組織の構成員1人ひとりが実感できる仕組みを作らなければ、組織は動かないからだ。そのためには、その「意味合い」を誰にでも直感的に理解できるストーリーにまで昇華させなければならない。ここに、ストーリーテラーとしてのデザイナーの力を経営に取り入れる必要性が生じる。デザイナーはいつも物事の背景にあるストーリーを考えている。魅力的なストーリーこそが、人の心を動かすということを誰よりも知っているからだ。

ともすると、組織設計というと「事業別組織と機能別組織のどちらが適しているか」というような無機質な議論に陥りがちだが、そのような外形的な視点だけでは不十分であることは明らかである。むしろ、社員一人ひとりがどうすればその業務の意味を深く理解し、実感しながら、モチベーション高く取り組めるかという内面的な視点の方が、現代の経営においては重要となっている。

課題 新たな顧客体験の創出 

●顧客体験は経営戦略と一体

デジタルテクノロジーなどを活用して、いかにして顧客体験をアップデートするかというのも、多くの企業に共通する経営課題であることに異論はないだろう。このテーマについては、外部のデザイナー(狭義)に依頼をするということが一般的にもよく行われている。しかし、実はこのテーマだけに限定してデザイナーを起用しても、それは「デザイン経営」とは言えない。なぜなら、顧客体験の創出というのは、企業全体のビジョンや経営・事業戦略などの上流工程に深く関わるものであり、そこだけパーツとして切り出すことはできないからである。

●デザイナーは“超マクロ”と“超ミクロ”を調和させる存在

言い換えれば、上記の「課題① 社会課題への対応」→「課題② 組織・業務プロセスの再構築」 →「課題③ 新たな顧客体験の創出」は全て一連の流れとして有機的に繋がっており、相互の戦略的整合性こそが成功の鍵となっているということである。本当の意味で「デザイン経営」を取り入れるためには、経営の上流工程からデザイナーを巻き込み、根本的な議論から始めることが不可欠となる。つまり、デザイナーとは、社会課題という“超マクロ”な視点から、社員や顧客1人ひとりとの視覚的・物理的接点という“超ミクロ”な視点までを、自由自在に行ったり来たりしながら、それらを高度に調和させて具現化することのできるプロフェッショナルなのである。

「デザイン経営」の導入と実践に向けて

本稿では経営課題の観点からデザイナーの能力について解説してきましたが、次回セミナーでは、「デザイン経営」宣言の策定に委員として関わったHAKUHODO DESIGN代表の永井一史氏をお招きし、「デザイン経営」の本質について紐解いていきます。みなさまのご来場、ぜひお待ちしております。

 

 


■セミナー開催のお知らせ

2018経済産業省と特許庁が、デザインを日本企業の価値向上のための重要な経営資源として活用する「デザイン経営」についてまとめた報告書「デザイン経営宣言を発表しました。世界の有力企業が競争力としてデザインを戦略の中心に据えている一方で、日本においては「デザイン思考」は浸透しつつあるものの、「経営」と「デザイン」はまだまだ結び付けられていないという実情があります。そこで、本セミナーでは「デザイン経営」宣言の策定に委員として関わったHAKUHODO DESIGN代表の永井一史をお招きしデザイン経営の本質につい紐解き、さらに企業に実際に導入していくきっかけづくりとなる簡単なワークを行います。

「デザイン経営」とは

デザインの力を活用することで、企業の競争力であるブランド力とイノベーション力を高めていく方法論。ビジョンを明確にし、それを一貫した企業活動に落とし込んでいき、社会と企業が継続的に良い関係を築いていくこと。その推進にあたっては、人材や育成、評価、組織文化や働き方に至るまで、企業活動の中の様々なレイヤーにデザインを組み込んでいくことが重要となる。

 

|  講師   池田想(博報堂コンサルティング エグゼクティブマネジャー)
|  ゲスト  永井一史氏(HAKUHODO DESIGN 代表取締役社長)
       山口綱士氏(HAKUHODO DESIGN コンサルタント
|  日時   2019年12月13日(金) 16:00~17:30 (受付開始 15:30) 
|  会場   博報堂ラーニングスタジオA(東京都港区赤坂2-14-27 国際新赤坂ビル東館11階)
|  定員   50名様 ※お申込み多数の場合は抽選とさせていただきますことご了承ください
|  参加費  無料
|  対象者  経営層および経営企画、マーケティング・ブランディングの責任者・ご担当者様

 

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