バリューコマース株式会社は、商号を変更し、アフィリエイトサービスを提供しはじめて20周年を迎える2019年に向けて、インターナルブランディングに取り組んでいる。
第3回に続き、今回も同社の取り組みを社員はどのように受け止め、ともに“拓いて”いったのかについて紹介していく。社歴10年以上の社員と若手社員では、インターナルブランディングに対する受け止め方も違うようだ。



●会社が本気を出してきた

サービスプランニング本部カスタマーサポート部に所属する安藤理恵氏、アフィリエイト本部コンサルティング4部に所属する中原由実氏、サービスプランニング本部企画部に所属する若佐美奈氏の3名には、社歴が10年以上という共通点がある。バリューコマースの主軸であるアフィリエイトサービスの提供開始から今年で20年という歴史から見れば、会社の成長に伴う紆余曲折を、身を持って体感した面々と言えるだろう。

新しい企業理念『ともに拓く』を聞いたとき、「ついに会社が本気を出してきた」と感じたと話すのは若佐氏だ。
「香川さんが社長に就任されて4年(当時)経って、今までいろいろと改革してきたものの、このままではダメだと思われたんだろうなと私は受け止めました。今までは組織全体に向けて香川さん側の一方向から話しかけている感じでしたが、これからは香川さんが社員の一人ひとりに近づいていって対話していく。『ともに拓く』の“ともに”には、そんなメッセージが込められているのかなと感じました」(若佐氏)。

『ともに拓く』を宣言してからの香川社長のコミュニケーションの取り方に変化を見たという。それは中原氏も同様だ。

「これまで香川さんには、現場の社員からは遠い存在で、気軽に話しかけられないという印象を持っていました。だから香川さんの宣言ポスターが貼り出されたとき、こういうこともやれる人なんだとちょっと驚いたというか……。カンパニーワイドミーティングでは若手が司会をして盛り上げてくれたこともありましたが、香川さんがとても自然体で明るくなって、積極的に変わろうとしているんだと感じました」(中原氏)。
安藤氏もポスターに驚き、そしてぎこちなさを感じたと話す。このぎこちなさを感じた社員は決して少なくはない。インターナルブランディングに向けた施策が、「何をするつもりなのか?」という違和感を伴いながら始まるというのは、組織変革に取り組む企業の多くが経験する【失笑期】での、社員の率直な実感ではないだろうか。

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※図1 バリューコマース原案・博報堂コンサルティング作図

それでも3名が『ともに拓く』を受け止めなかったわけではない。若佐氏は当時所属していた部署で、イントラネットを通して社内の情報共有を行なっていたが、同じ本部に所属するインターナルブランディングを推進する社員たちが人知れず苦心しているのを、近くでよく見ていた。自分にもできることがあると感じた若佐氏は、自らが編集権限を持つイントラネットのトップページに『ともに拓く』のロゴを大きく配置し、その先のページに『ともに拓く』に関連した出来事を、すぐ近くにいるこの活動を推進しているメンバーたちには言わずに、自主的に掲載していった。こうした個々の自主性が【伝播期】を支え、社内に取り組みを浸透させていく足がかりになったのは言うまでもない。

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(左から順に)
サービスプランニング本部 企画部 若佐 美奈氏
アフィリエイト本部 コンサルティング4部 クライアントコンサルティングチーム チームリーダー 中原 由実氏
サービスプランニング本部 カスタマーサポート部 ネットワーク品質管理チーム 安藤 理恵氏


●仕事のやり方にも変化が生まれた

宣言ポスターが社内に貼り出され、部門ワークショップが開かれた。その後、部署のあり方が変わったと話すのは中原氏だ。
「他社との競争が激しい業界にあって、ビジネスにおいては私たちにとって厳しい予算交渉が生じることもあります。組織体制上、他部署から引き継がれてくる仕事も多く、4部のメンバーが誇りを持って働くためにはどうすべきかと、ずっと悩んでいました。部門ワークショップで話してみるとみんなの思いは一緒で、一様に改善への意欲が強いことがわかりました。
それに、自分たちの仕事に誇りを持っていること、バリューコマースのアフィリエイトが大好きであるということも再確認できました。自分たちが大好きなアフィリエイトを自信を持ってご提案すればいいんだ、という本質にたどり着けたことで、仕事のやり方や取り組む姿勢が本当に変わりました。実を言うとこのワークショップのあとに、私たちの部の部長が動くよりも先に、あの場でみんなで確認しあった“自分たちが貫くべき仕事の仕方”を、各々が勝手に体現し始めていたんです」(中原氏)。

他部署との連携面でも、譲れる・譲れないところがはっきりしたと中原氏。部門ワークショップをきっかけに【発散期】を迎えた部署の雰囲気は明るくなり、今まで以上に前向きな意見が聞かれるようになった。

安藤氏の所属するカスタマーサポート部は、3つの管轄に分かれているが、部門ワークショップ後は、各管轄を連携させようという意識が強くなり、部署全体の士気が高まる【流通期】に入った。

「部門ワークショップで考えた部署のキャッチコピーは、『小さな声はCSにしか拾えない。私たちの半分は優しさ、お客様のためには牙もむく』です。牙をむくという言葉はちょっと攻撃的な印象があるかもしれないけれど、私たちがバリューコマースの商品品質を守る最後の砦であるという誇りについて話していて、自然と出てきた言葉なんです。
私たちが時に牙をむくことが、バリューコマースに関わるすべての人のためになるということを再確認できたことは収穫でした。今までそんなことをメンバーみんなで話し合ったことはありませんでしたが、本音で意見をぶつけ合ったこの場があったことで、みんなの思いが同じであることが確認できました。結果として、部署内のコミュニケーションが今までよりも明らかに密になりました」(安藤氏)。

部署内の動きを他部署との連携にもつなげていき、事業について話す機会が増えれば、「今後の目標がより明確になるはず」と語る安藤氏の意見に若佐氏は大きくうなずく。

「バリューコマースの各部署には、昔から会社を守る砦になるような人材がいます。そんな砦のような社員たちが誇りを持ち続けてくれたから、今日まで来られたのだと思います。
これからバリューコマースはより成長していきます。その成長は若い社員たちがけん引してくれるはずです。若い社員たちが思う存分がんばれるように、砦は思いをひとつにしていかないといけません。『ともに拓く』をきっかけに、社内のコミュニケーションが今まで以上に活性化していけば、砦はより強いものになると感じています」(若佐氏)。


●下の代から積極的に動いていきたい

これまでのバリューコマースを支えてきた面々から期待を寄せられる若手社員たちは、『ともに拓く』をどのように体現しているのだろうか。アフィリエイト本部コンサルティング3部に所属する新卒入社3年目の大久保雄矢氏と、サービスプランニング本部デザイン部に所属する新卒入社2年目の中家海斗氏に話を聞いてみた。

2018年に開催されたカンパニーワイドミーティングの司会を10ヶ月間、同期社員と担当した大久保氏は、下の代から声を挙げることが大事だと考えて司会に立候補した。
「上下関係なく自分の意見を言える会社であるべきだと考えていたので、カンパニーワイドミーティングの司会の話が来たときにチャンスだなと思いました。以前のカンパニーワイドミーティングは、とても静かで淡々と進んでいました。せっかく全社員が時間を割いて集まっているのに、なぜなのかと疑問でした」(大久保氏)。

★大久保様P1010017
アフィリエイト本部 コンサルティング3部
クライアントコンサルティングチーム1 大久保 雄矢氏

若手なら多少のことは許される。そう開き直った大久保氏は、カンパニーワイドミーティングを明るく元気に盛り上げた。笑いを取れると思って発した言葉に会場が静まりかえったときもあったそうだ。

「最初のうちは散々失笑されて、“スベリ芸”なんて言われました。それでも徐々に、『次はどんなスベリ芸を見せてくれるんだ』と声を掛けてもらえたり、アンケート用紙に『ミーティングが変わった』といった声を寄せてもらえるようになりました。下の代でも動けば何かを変えられると手応えを感じました。ただこうした動きは継続されないと文化へと醸成されていきません。後輩たちが、どう動いてくれるのかも大事です」(大久保氏)。

大久保氏は、香川社長らが登場した宣言ポスターを見て、オリジナルの『ともに拓く』ポスターを自分で作成したとも話す。

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大久保氏が自身で作成したポスター

「香川さんたち上層部の人たちだけが宣言しても“自分ごと”にならないので、僕なりの宣言ポスターを作って、“自分ごと”にしようと考えました。
『ともに拓く』って抽象的な言葉だから、捉え方は人それぞれでいいと思います。しかし会社として進む方向を見据えながら、社員それぞれが自分の思う“拓く”を実践していかないと、会社は変わっていかないと思います」(大久保氏)。

 

●『ともに拓く』ことで事業拡大を

一方の中家氏も、『ともに拓く』に関連した取り組みの場で、自分らしい『ともに拓く』を体現した一人である。

部門ワークショップが入社直後に開催されたこともあり、会社のことをまだ理解していない新卒社員は、希望者のみ同席という形を取られた。先輩たちの意見を聞きながら、自分が所属する部署の存在意義や目指す方向性を知った中家氏は、その後に開催された新卒社員だけのワークショップで、「自分たちも何かを発信していきたい。できることから挑戦したい」と話し合ったという。

その何かにあたるのが、社内に掲示する『ともに拓く』ポスターのデザイン制作だ。デザイン部に所属している中家氏は最初にこの依頼を受けたとき、そんなに大事なものを担当するのが新卒の自分でよいのかと戸惑ったという。しかし、インターナルブランディングを推進する社員たちがあえて入社1年目の自分を指名してくれた意味や、先の新卒社員だけのワークショップで話し合った内容を思い出し、思い切って担当を引き受けた。

★中家様P1010049
サービスプランニング本部 デザイン部 UXデザインチーム
兼プロモーションデザインチーム 中家 海斗氏

「会社のポスターというオフィシャルな制作物のデザインを担当するのは初めてだったので、最初は戸惑いましたし、ダメ出しもたくさん受けました。それでも自分の力を発揮できる場を提供してもらえたことが素直に嬉しかったです。

ポスターが完成した後に、カンパニーワイドミーティングでお披露目がされたのですが、その場であいさつすることになりました。緊張して何を話したのか覚えていないくらいですが、新卒の自分が先輩方に顔を覚えてもらえるきっかけにもなりました」(中家氏)。

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       新ポスター

 
達成感が大きかったのではないかと聞くと、「達成感よりも反省点のほうが多いです」と謙虚な姿勢をみせる。
「次に何か制作物を担当するときに、どうしたら反省点を払拭できるのかと常に考えています。それから『ともに拓く』で会社の進むべき方向性が示されているので、それを自分なりに解釈して、どのように事業に落とし込んでいけばいいのかについても意識が向くようになりました。
ASP(アフィリエイトサービスプロバイダ)と言えばバリュ―コマースだという自負がありますが、会社がこれから新たに挑戦していくであろういろいろなことに自分も関わることで、会社の目指している『ともに拓く』という未来にも貢献できるのではと考えています」(中家氏)。


組織変革において正解はひとつではない。取り組む企業によって、何をどうすれば活性化に結びつくのか。その答えは大きく違う。しかしバリューコマースのような成功事例にヒントを得ることはできるだろう。
4回にわたりバリューコマースのインターナルブランディングの経過を追ってきた。もちろん同社での取り組みは今後も継続されるが、次回は本連載の最終回として、インターナルブランディングの推進に携わった立場から総括をお届けしたい。

>>第5回に続く

■「インターナルブランディングで現場から起こす企業変革」連載