ブランドの魅力を対外的に正しく伝えることは、顧客や取引先からの好意を獲得するだけでなく、求職者からの就職意向を向上させたり、投資家からの評価を押し上げたりする効果も生む。さらには、それを見た自社の社員の満足度向上も期待できるだろう。本コラムでは、こうした効果的なブランドコミュニケーションを行うために必要な検討ステップについて解説する。
顧客、求職者、投資家などコミュニケーションの相手は様々でも、ブランドとして伝えるべきことの“核”は同じである。コミュニケーション戦略ではまず初めに、この“核”となるブランドコンセプト(提供価値)を規定する。手順は2段階で、まず市場や自社ブランドの現状分析を行った後、社内で合意形成を図りながら提供価値を取りまとめる。
現状分析では自社の事業成長シナリオや事業課題、ブランドへの認識の現状棚卸、そして提供価値の仮説構築等を行う。この際に重要なのはいわゆる「3C」の視点を持つことで、顧客だけではなく社員は自社ブランドについてどう考えているのか、ベンチマーク企業はどんなブランド戦略を成功させているのかといったことを分析する。
これらの現状分析をインプットとして、次にブランドコンセプトの規定を行う。そこではワークショップの活用が有効だ。ワークショップではマネジメント層から現場社員まで、多くの社員を巻き込んだ討議を行うことで社内の合意形成が図られ、のちに行うブランド施策が自分事化されやすくなる。ワークショップで抽出された要素は「強み・提供価値」「ブランドパーソナリティ」「ブランドエッセンス」などに精緻化され、最終的に「ブランドの扇」というフレームでまとめらる(「ブランドの扇」については当社サービス資料「提供価値規定」で解説している)。
ブランドコンセプトが規定できたら、それに基づいてコミュニケーション戦略の立案が行われる。コミュニケーション戦略では「誰に」「何を」「どのように」伝えるか、を定めることが肝要になる。
「誰に」を定めるプロセスは、具体的にはコミュニケーションターゲットの分析だ。現状分析の結果を踏まえて、コミュニケーションの目的ごとにターゲットを整理する。例えば、採用力の向上が目的ならターゲットは就活生や中途人材、マーケティングなら既存および潜在顧客、営業活動なら関係のある流通業者、といったように整理できる。その次にターゲットごとのコミュニケーションの目的をブレイクダウンしてKPIを設定する。ここで定めるべきKPIは「コミュニケーションの過程でターゲットの状態がどのように遷移しているか」を測定・評価する指標である。たとえばマーケティング目的であれば、顧客の状態を「購買段階ファネル」に沿って測定することで、購入という目的に向けた活動に反映できる。
「何を」を定めるプロセスでは、上記で述べたようなターゲットの状態遷移を実現するためには、彼らに自社のどんな強み・提供価値を理解してもらえば良いのかを明らかにする。この因果関係は、既存のコミュニケーション結果を多変量解析することで定量的に明らかにすることができる。また新規にブランドコミュニケーションを行う際は、仮説やベンチマーク企業の分析をもとに伝えるべき要素を決定する。
「どのように」を定めるプロセスはターゲット視点で行う。たとえば顧客相手のコミュニケーションであれば、カスタマージャーニーを作成し、購入ファネル(状態の遷移)ごとに顧客接点や顧客心理を想定する。そしてそれぞれの接点において、伝えるべき要素を具現化する情報やコンテンツを設計する。
以上のように策定されたコミュニケーション戦略や施策の骨子は、その実行者や期間を定めて活動計画にまとめられ、以降はこの活動計画にそって組織体制やシステム設計を行い、施策の実行・PDCAを進めていく。
当社は本コラムで解説した戦略立案フェーズから実行フェーズまでご支援させていただいている。このサービスの詳細にご興味のある方は、サービスページをご覧いただき、ぜひ資料ダウンロードまたはお気軽にお問合せいただきたい。