ゴールデンパスを活用したBtoBビジネスの顧客戦略構築法

  • マーケティング

昨今、CRMSFAMAツールなどの普及によって顧客行動の可視化が可能になり、よりパーソナライズされたマーケティング活動に取り組める環境が整い始めている。リード獲得から見込み顧客の育成、成約に繋げるまで、デジタルツールは科学的・戦略的にマーケティングを展開していく際の強力な武器となってくれるだろう。この流れに乗り、BtoB企業でもマーケティングを重視する動きが出てきている。しかし、我々が相談に伺った企業の中には、そもそもどのような顧客を相手に何を価値として商売していくのか、マーケティングの前段階でつまずいているケースも少なくない。言うまでもなく、効果的なマーケティングを行うためには正しい顧客戦略は不可欠だ。これからの時代に即した顧客戦略とはどのようなものであるか、BtoBビジネスの顧客戦略の構築法とマーケティングの活かし方について、成功事例とともに紹介しよう。


高度化するBtoBビジネスにおける顧客戦略

BtoBビジネスにおいてマーケティングや顧客戦略の重要性が高まっている背景には次の理由がある。

●市場の競争が活発になり、買い手が選ぶ理由も多様化している

情報化社会が成熟期にあるいま、メーカーであっても単純なモノ売りでは生き残りが難しくなり、また買い手の選ぶ理由も多様かつ複雑になっている。顧客の購買プロセスをより詳細にトラッキングし、適切なタイミングでアプローチをする必要があることから、顧客戦略は企業が成長するうえで欠かせないものといえるだろう。

●顧客のLTV向上の重要性が上がっている

競合がひしめき合う市場の中で生き残るためにも、多くの企業は顧客との長期継続的な関係性を志向するようになっており、市場全体で顧客のLTVを引き上げることが命題ともなっている。多くのBtoB企業が昨今「パートナー」という言葉を使うのも、まさにその表れではないだろうか。しかし、自社と顧客との関係を正しく捉えられていなければ、中長期的な戦略において大きく道を外してしまうことになりかねない。どのような新規顧客にフォーカスし、いかにエンゲージしていくのか、さらに言えば、既存顧客との取引を深め拡大していくにはどうすれば良いのかといったロードマップを描くためにも、自社に合った顧客戦略の構築が求められている。

このように顧客戦略の重要性は叫ばれているものの、現状を見ると、戦略の外に顧客が置き去りにされていることも多い。企業は顧客に対して多くのベネフィットを伝えているつもりでいるが、顧客との関係構築のための様々な”ソリューション”ばかりが乱立し無法地帯になっているケースが散見されるのだ。この失敗を防ぐためにはどうしたら良いだろうか。ひとつの解決策として、顧客戦略構築の際、自社のトラックレコードを振り返る「ゴールデンパス分析」を行うことが有効と考えられる。

 

過去取引を振り返るゴールデンパス分析とは

ゴールデンパス分析とは、自社にある成功の軌跡を辿り、自社の価値や強み、顧客から選ばれる理由を可視化すること。これまでの新規顧客開拓のパターンや取引を拡大した「成功体験」を棚卸していくと、他社との差異性が明確になり、自社独自の成功モデルを構築することができる。ゴールデンパスを分析し再現性のある形に落とし込めば、事業戦略の方向性が明確になり、効果的な顧客獲得・拡大の足掛かりを作ることができるだろう。

 

ゴールデンパス分析の2つの効果

BtoBビジネスにおけるゴールデンパス分析は、さらに以下の2点においてメリットがあると考えられる。

●営業戦略・マーケティングに役立つ
BtoBの購買はBtoCと違い、顧客は取引先を何となく選ぶ、何となく打診することはほぼない。「顧客は合理性に基づいて売り手を選ぶ」というBtoBビジネスの特性上、自社が描いてきたゴールデンパスを分析し、「自社が選ばれる理由」を再現性のあるモデルに落とし込むことにより、マーケティングと営業活動の精度を高めることができる。

● ブランディングに役立つ
ゴールデンパス分析では、実際の取引に遡り、自社が選ばれてきた理由や顧客の生の評価を探っていく。そうして見えてきた固有の強みは、自社の独自性を内外に伝えていく試み=ブランド戦略に活用することができる。見えてきた他社との差異性を、内外コミュニケーションに活用し事業をブランディングすることで、ブランドイメージが形成され、認知度の向上にも寄与することが期待できる。

 

ゴールデンパス分析の進め方

次に、自社のゴールデンパスを観測する具体的な手順を確認しよう。まずは、ABC分析で重要顧客を定める。そして、その顧客に対する社内のベストプラクティスや成功エピソードの棚卸を行なっていく。可能であれば顧客にヒアリングをするなど定性調査を行い、企業側が考える自社の強みと顧客から見た企業の強みの擦り合わせをする。

棚卸ができたら、以下のような成功要因と考えられる項目をまとめ、自社の成功パターンを体系化していく。

  • 顧客から自社に声がかかった理由
  • 顧客に自社がどのような企業・サービスと認識されているか
  • 競合各社のなかから最終的に自社商品・サービスが選ばれた理由

ポイントは、売り手視点でなく、買い手の論理で考えること。顧客視点で成功パターンを整理していくことで、それまで見えていなかった自分たちの強みや、効果のあった戦略モデルが浮かび上がってくる。

 

事例で見るゴールデンパス分析

ここからは、実際の事例を参考としてゴールデンパス分析の理解を深めていただきたい。今回、例として取り上げるのは、ハイテク企業のA社。A社は大手製造業企業に端を発する企業で、創業当初はIT企業として足掛りのない状態からゴールデンパスを築いていった好例だ。BtoBのソリューション型ビジネスを行うためには高水準の技術力が必須であるが、高い技術力を持っていてもビジネスを成功させるのは容易ではない。そんな中、A社は主要顧客といかにして関係構築を行っていったのか。まずはその軌跡を追いながら成功の秘訣を探っていこう。

自社実績のない新たな市場を開拓する際、特に大手企業を相手に事業を展開していきたいと考えるなら、超えなければならない第一の壁がある。それは、新規プロジェクトに際する提案コンペの参加企業リストに載ることだ。しかし新規事業や設立間もない企業の場合、会社の知名度・ブランド力がないためにクライアントへ提案できる機会が極端に少ない。中には、創業初期から大手と肩を並べてコンペに参加しようと必死に営業活動を行う企業も見られるが、自社ノウハウや実績がない状態で経験豊富な競合他社と戦おうとしたところで無駄足を踏むことになる可能性は高くなるだけである。

A社が事業成長期に戦略的に行ったことは主に2つある。

1.有力サプライヤーと提携し、独自のケイパビリティを構築

自社の業界認知が低く、評価が確立されていない段階では業界トップクラスのシステムというブランドを背負う形で、そのスペシャリストとしての地位を築いていく。教育された社員のケイパビリティとサプライヤーとの強固な連携により、顧客に不具合が起きた時にも迅速に対応できるなど、高品質なITプレーヤーとして認知されることに成功し、取引先を拡大していった。

また、そうした業務の過程で、結果として会社としての技術水準の高さや課題解決能力も伝わり、継続的な関係作りへと寄与していった。

2.実績とノウハウに基づく横展開

様々な業界での実績が積みあがるにつれて、その知見やノウハウが武器となる周辺業界を中心に新たな顧客を開拓。業界やソリューションに精通した専門知識と、実績を持つが故の「現場課題に即した、地に足の着いた提案・アプローチ」により、競合案件を獲得していく。

 

ゴールデンパスを構成する要素

ゴールデンパスとは、別の言葉でいえば勝ちパターンである。ソリューションビジネスとは、製品を作ってカタログに載せれば売れるというものではない。

今のポジションから次に狙うポジションへどのように発展させていくのか、そのシナリオを描いたうえで、シナリオを実現するために活用できる要素、必要となる要素を整理していく。

商材・ソリューション:

新規顧客を開拓するには、きっかけとなる要素=商材・ソリューションが重要になる。商材・ソリューションの品質が高いことはもちろんだが、それと同じくらい重要なことは、その商材やソリューションが顧客からの関心が高まっているテーマ・領域のものであることだ。ニーズの顕在化した「ホットな」テーマであることで、多くの問合せに繋がる。A社の場合では、提携企業のシステムが業界内で注目を集める存在であったことが大きな役割を果たした。

ケイパビリティとナレッジ:

顧客との関係が始まったのち、その企業との取引が拡大していくには、サービスの「中身」に価値があることが大前提となる。つまり、自社の持つケイパビリティが高水準であったり、希少価値のあるナレッジを持ち合わせたりしていることで取引拡大に有利になるといえよう。A社の場合、ベースとして備えていた高い技術力や課題解決指向、有力サプライヤーの提供するシステムについてのナレッジが評価されたと考えらえる。

情報発信:

自社の情報を顧客に伝えていくことで、初めて顧客から声がかかる状態を作ることができる。コミュニケーション活動の代表的なものは広告だが、BtoB企業の場合、大々的な広告活動を展開することはどちらかというと少数だ。近年、企業の購買活動における情報収集の大部分はウェブで行われるようになってきている。自社のウェブサイト上に、顧客が自社を発見し、声をかけてくることを逆算して設計されたコンテンツを配置することで、非常に有効なコミュニケーション手段となる。

解決課題:

ソリューションとは、別の言葉でいえば「課題の解決策」である。企業の購買活動においては、こちらが一方的に商材やソリューションの説明をしても、まず購入されることはない。顧客が自社の課題を認識し、その解決能力があると認識してもらうこと・期待してもらうことがマーケティングや営業活動の目標となる。逆に言えば、顧客が自社を有力な課題の解決者と目して声をかけてきた場合には、かなりの確率で仕事に繋げていくことができる。

 

ゴールデンパス分析を起点とした顧客戦略構築3 STEP

ゴールデンパス分析により得た知見は一チーム、一つの担当のエピソードに終わらせず、組織知に替え、浸透・実践を促すことが重要だ。そこで次に、ゴールデンパス分析を行った後の顧客戦略のステップについて確認していこう。

●ゴールデンパス分析
前述の通り、自社のゴールデンパスを分析していく。

●ゴールデンパスの中核となる強みと提供価値・および顧客戦略規定
ゴールデンパス分析で得た知見を元に、顧客から評価され、ビジネスの拡大に寄与した自社の具体的な強み(ソリューション・ケイパビリティ・ナレッジなど)と、ターゲットすべき顧客を検討する。この時重要な点は、あくまで顧客の視点に立ち、顧客にとって何が価値となり、そうしたソリューションやケイパビリティが評価されたのかを明確にすることである。

●顧客戦略と提供価値の内外コミュニケーションへの落とし込み
導出したターゲットと提供価値を元に、マーケティングと営業による顧客アプローチの設計を行い、内外へのコミュニケーションに落とし込む。

 

まとめ

業界業種の成功パターンは一律ではなく、BtoBマーケティングに絶対解はない。そのため、事業リーダーは膨大な情報から自社の戦略とマーケティングに活用できるものをピックアップし、最適解を考えていくことが求められるだろう。手がかりとなるのが、今回ご紹介した過去の軌跡を振り返るゴールデンパス分析だ。過去に描いてきたゴールデンパスを丁寧に振り返り、成功を決定づける要因は何であったのかを分析、そして、自社の現状を客観的に見つめ直し選ばれる理由をもとに事業戦略とマーケティング戦略を再構築することで、自社にとっての最適解に近づくことができるのではないだろうか。

当社は、BtoBマーケティングにおけるインダストリー(業界特性)知見/顧客購買における組織及びプロセス設計経験、およびUX・CX設計実績をもとにした、市場や事業環境と業務プロセスから「売り込み営業を無くす」戦略設計と仕組み作りを行っています。

そして、その実行を可能とするオンライン・オフラインの各種ツールや多様な知見を持つ博報堂およびグループ会社と横断的に連携し、継続的に活動を持続するデジタルインフラ、業務インフラの整備と導入、そして運用を支援しています。詳しいノウハウや取り組み内容についてご興味がありましたら是非ご相談ください。

 

BtoB事業における選ばれるブランドづくり、ブランドマーケティングの実践

 

 


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