■デジタル化によるマーケティングの進化
デジタル化により、マーケティングは不断の進化を遂げている。様々なデータを介して、企業と企業、企業と生活者、そして生活者と生活者はつながっていく。これにより、従来よりも精密な顧客(市場)への働きかけが可能になった。例えば、現在の企業が直面するテーマには以下のようなものが挙げられる。
・顧客行動における統合的管理
ある調査によれば、生活者の7割はインターネットを通じて情報収集や購買を行っている。しかも、生活者の9割近くはオンラインでの顧客サービスを希望している。すなわち、企業にとっては販売促進に留まらず、購買後まで含めて顧客との接触行動を統合的に管理することは時代の要請とも言える。
・マーケティングPDCAの仕組みづくり
インターネット上での生活者の行動は、足跡として辿ることができる。データに基づき、短期間に仮説検証を繰り返すことが、マーケティングの基本動作になった。担当者がデータから気づきを得て、迅速に行動し、成果を捕捉する仕組みをつくることは、マーケティングを志向する全ての企業に求められている。
・成熟市場を克服する新たな価値創出
成熟し縮小局面にある市場においては、これまでの競争相手と異なる考え方で行動する企業が侵入し、カテゴリーの枠組みごと破壊してしまう恐れがある。防衛か、攻撃か。企業としての新旧を問わず、その市場で新たな顧客価値を産み出しつづけることが生き残りにおける要件となる。
■新たなプレーヤー、これからの顧客
アマゾンのようなインターネット流通業者が巨大化する一方で、ファッションなどの分野では、無店舗型SPA(小規模製造販売業者)のブランドが次々に生まれている。その成功要因は次の3つである。
● 小ロット対応可能なEMS(外部製造委託先)
● 販促手段としてのソーシャルメディア
● ブランドサポーター
アイデアさえあれば、モノをつくり、インスタグラムなどのソーシャルメディアで情報を拡散する。受注・配送はほぼインターネット経由。ときにはその資金をクラウドファウンディングで調達する。大きなインフラも巨額な自前資金も要らない。新規参入のハードルは極めて低い。こうしたビジネスモデルの構築を可能にするのがブランド(コンセプト)である。ブランド(コンセプト)への賛同が集まれば、デジタルネイティブである若者は熱狂的に支持し、さらに成長を遂げていく。
これは、ネットベンチャーのみならず、全ての企業に当てはまる、これからの競争の形を表している。アイデアを形にし、サポーターを募り、ブランドを鍛えていく。そのためには次の二つが重要になる。
①顧客価値の創造
②顧客体験のマネジメント
それぞれ見ていくこととしよう。
■ブランドを鍛え、成長をもたらす2つの要件
①顧客価値の創造
顧客価値とは企業(ブランド)が顧客に提供する便益の総和である。そのため、企業(ブランド)は次の問いを繰り返し検証し、戦略的に振る舞うことが求められる。
・どのような「便益」を? (セグメント)
・誰(顧客)に?(ターゲット)
・どうやって実現するか?(ビジネスモデル)
このとき、ブランドは事業活動を通じて生じた価値を溜める役割を担っている。ブランド価値の源泉は、顧客がブランドに対して有する様々な連想。従って、ブランドにはDNAや一貫性の担保が期待される。
一方で、単なる名前や名称でしかなかったものが、イノベーションによって意味をまとい、あたかも固有名詞のように振る舞い始めるのがブランド化する瞬間である。ブランドは、そもそも未来に開かれているものであり、新価値創造の旗印になるべきものである。
②顧客体験のマネジメント
新たな顧客価値は、顧客体験(UX)を通じて具現化される。優れた顧客体験には、次の特長がみられる。
・これまでにない(卓越性)
・もう前には戻れない(習慣化)
・いつも新しい提案がある(期待醸成)
・多くの人が使っている(ネットワーク効果)
ただし、このような体験をつくることは容易ではない。誰もが提供しようとする体験は、すぐにコモディティ化し、レッドオーシャンになる。その一方で、まだ誰も注目していないような体験は、その実現手段が分からない。そもそも可能性がないとして、検討の俎上にすらのらないことが多い。
新たな体験を考える上では、新たな技術や新たな仕組みの視点が大切である。出来なかったことが出来るようになる。当たり前だと思っていたことが良い意味で裏切られる。こうした体験の手数を増やすには、外からの技術や外部との協業が必須になる。顧客体験を通じて、一人ひとりのお客様との絆を深める。つながった世界においては、まさに顧客体験のマネジメントがブランディング活動になる。
■UX(顧客体験)ブランディング
新たな顧客価値が新たな顧客体験を産み出し、そこで得られた顧客満足がブランド価値をまた高める。この好循環実現の核にあるのが、UX(顧客体験)ブランディングである。トップラインを上げる新たな武器。その考え方と具体的な方法論について、次回セミナーではご紹介します。
みなさまのご来場、お待ちしております。