グローバルイベントは、どう見るべきか? どう使うべきか?
2010年代が終わりを迎えた。振り返ると、2010年から2019年の間に最も生活を革新させたテクノロジーは、スマートフォンという「UI」の急速な普及であったと言える。2010年には9.7%しか普及していなかったスマートフォンは、2016年には71.8%まで跳ね上がり、それに伴うようにしてSNSの利用も急速に拡大した(※1)。たった十数年前にも関わらず、スマートフォンのなかった時代がもはや想像できないほど、私たちの日常と個人情報を取り巻くビジネスはこの「UI」によって一変させられた。
そして2020年代が幕を開けた今、次の10年間を見据える時がやってきた。AI、IoTそしてDroneなどニュースやネットを賑わす、テクノロジーのキーワードは見えていても、それらは実際の我々の生活にどのような影響を及ぼすのだろうか?もしくは我々の生活に根付くことなく、ただのテクノロジートレンドとして消え去るのだろうか?比較的行き先を予測しやすい技術開発とは異なり、多様な価値観や思惑が行き交う複雑な社会についての予測は極めて難しい。しかしだからこそ、マーケットの未来を予測し、競合に先駆けたイノベーティブなビジネスを展開することができるのである。
このように製品や技術に留まることなく、その先にある生活や社会の変化を見据えようと世界中の企業が集まる場が、グローバルテックイベントである。これらのイベントは年間を通して世界各国で開催されており、それぞれが異なる役割を果たしながら未来のマーケットについて語られる場となっている。
注目すべき4つのグローバルテックイベント
次世代のテクノロジーを共有する場であるグローバルテックイベントは年間通じて世界各地で無数に開催されているが、その中でも経年での、そして単年での「テクノロジートレンド」と、企業側からの「情報発信」に対して大きな影響をあたえる特に注目に値する4つのグローバル(テック)イベントをご紹介したい。
グローバルテックイベント:CES(Consumer Electronics Show):シーイーエス(セス)…アメリカ・ラスベガス(1月)
毎年1月に米ラスベガスにて開催されているコンシューマー・エレクトロニクス分野の見本市。次世代のイノベーションや先端技術を世の中に提案する場として50年以上の歴史を誇り、4,400以上の展示企業と170,000人以上の参加者が世界160か国から集まるメガイベントとなっている。近年、自動車関連企業のプレゼンスが高まっており、多くの自動車メーカーが出展しており、SmartMobilityからSmartCityまでその展示と発表の幅が広がっている。
グローバルテックイベント:MWC(Mobile World Congress):エムダブリュシー…スペイン・バルセロナ(2月)
毎年2月に西バルセロナで開催されている世界最大級のモバイル関連展示会。世界各国のモバイル関連企業(携帯電話会社、端末メーカー、テクノロジープロバイダー、販売会社、コンテンツ会社)による展示会と、世界を代表する経営層による講演によって構成されており、世界200か国から100,000人以上の参加者が集まる。2014年にはアジア圏を中心としたMWC Shanghai(中国、6月)、2017年には北米・中南米を中心としたMWC Americas(アメリカ、10月)も開催も始まり、地域別の展開も進められている。
なお2020年は新型コロナウイルスによるアジア圏企業の出展取りやめが相次ぎ、中止となった。
グローバルテックイベント:CES Asia …中国(6月)
アメリカで開催されるCESのアジア版として、2016年から毎年6月に上海で開催。来場者や会場規模は年々増加し、継続的な成長を見せている。出展企業もこの2017年からの3年間で2倍となる500社に増加しており、その7割を中国企業が占めている。台湾で開催されているCOMPUTEXというアジア独自のイベントもあるものの、現在は中国経済圏を中心にCES Asiaの存在感が高まっている。
グローバルテックイベント:IFA(Internationale Funkausstellung):アイエフエー…ドイツ・ベルリン、9月
毎年9月に独ベルリンで開催されているコンシューマー・エレクトロニクス分野の展示会で、いわばCESが北米や中国で果たしている役割を欧州で果たしている存在。始まりは1924年と歴史は古く、1,800以上の展示企業と245,000人以上の参加者を集めている。最新の製品やサービスのショーケースとしてだけでなく、ブラックフライデー、中国のシングルデー、そしてクリスマス商戦に向けて“今売れる製品”を商談する、実ビジネスの場としての機能も果たしている。
また、ここ数年は展示会から、業界規制や行政への提言を行う「サミット」スタイルの「IFA+Summit」が2014年から始まり、EUを中心としたレギュレーションの方向性を定めるべく議論と発表が行われている。
グローバルテックイベント:GITEX(Gulf Information Technology Exhibition):ジーテックス …UAE・ドバイ、10月
毎年10月にUAEドバイで開催されているテクノロジーイベントで、中東・アフリカ・南アジア地域で最大規模のICT展示会となっている。以前は主に欧米を中心とするCES、MWC、IFAが三大テックイベントとなっていたが、近年は同地域におけるICT市場の成長に伴い、一気に規模が拡大。現在はIFA以上に、未来のマーケットについて語る場としての注目が集まっている。
特に2020年は開催直後に「ドバイ万国博覧会(ドバイ万博)」が開催される(2020年10月20日 – 2021年4月10日)こともあり、特にSmartCityやインフラについての提案が注目される。
グローバル(テック)イベントの活かし方
1年後、5年後、10年後の未来について語る場として世界から注目を集めているグローバルテックイベントだが、そこにはすぐに実ビジネスに活かすことのできる“機会”が数多く眠っている。それぞれ目的に合った活かし方ができるよう、日本企業にとってのグローバルテックイベントの活用方法について整理したい。
活用方法① グローバルマーケットに関する情報収集
最も多く見られる活用方法が、未来のグローバルマーケットに関する情報をインプットする場としてこれらのイベントを利用することである。特に海外展開を考えている企業にとって、世界各国から企業や参加者が集まるテックイベントは一度に様々な地域の動向に関する情報を一気に獲得できる場としての価値が大きい。展開する地域が決まっているような場合は、その地域で開催されているテックイベントに参加することで、よりその地域特有の情報を多く得ることも可能である。
活用方法② グローバルマーケットに対しての自社PR
海外展開を考えている企業にとって、グローバルテックイベントは情報収集だけでなく自己PRの場でもある。情報をただ集めるばかりではなく、未来を創る自社のイノベーティブなテクノロジーを発表する側に回ることで、最先端企業としてのブランドイメージを築くことができるだけでなく、グローバルマーケットにおける新たな顧客獲得やパートナーシップの形成という具体的なビジネスへの貢献も期待できる。
活用方法③ 海外の先端事例を国内ビジネスへの転用
グローバルテックイベントは、海外だけでなく国内ビジネスに役立てることもできる。他国ではどのようなテクノロジーを使ってどのようなビジネスが成功しているのかを知ることで、日本国内でも同様のビジネス、あるいはそこからヒントを得た新たなビジネスを展開することが可能となる。競合に先駆けて海外での成功パターンを国内マーケットに転用することができれば、未だ開拓されていないニーズを獲得することができるかもしれない。
グローバル(テック)イベントの見方のコツ
イベントにおけるプログラムは、展示や講演などいくつもある。そこに出展する・情報収集する・商談する、とする際に効率的かつ効果的にそれぞれのプログラムを活用する方法がある。
ここでは、CESを例に紹介を行いたいと思う。
■CESプログラム構成
(1)講演カンファレンス :KEYNOTEなど、企業の方向性の読み解きや新コンセプト、事業発信の場
(2)展示 :具体的な製品やコンセプトを体感してもらう場
(3)スタートアップ :構想やモックアップといった概念から、ローンチ前の製品サービスが陳列。国や都市などの支援対象としてのかたまりとしても把握できる
(4)メディアデイズ :一般参加者は入れない「メディア」のみに発表される場
特に、メディアに掲載される情報(速報)やアップの写真はプレスデイズで取材されたものがほとんどである。そのため実際はおおよその情報は事前に把握されている。つまり、ここで取材したコンテンツをいかに入手するか、現場でのガイドをしてくれる人を確保するかが重要になる。
■プログラムを見る視点
各プログラムは、実現(市場に展開される/一般化する)までの時間軸に違いがある。ここに留意し、どのような時間軸で情報を把握したいかによって、どのプログラムを主に情報収集するかを選ぶ必要がある。
(1)展示:
現在~2年以内に商品・サービス化されるものについての発表。そのため多くは商談につながる。また、M&Aや提携などの話を進めることも多い。
(2)スタートアップ:
現在~5年以内に上市することを想定したものの発表。機能するモックアップや時には構想だけの発表の場合もある。
(3)カンファレンス:
5年~10年先を見通した自社と市場や社会のフォーキャストの見立てを語る場。
同時に、テーマ(5Gなど)に対するスタンスや、今年一年での方向性を発表する。重要なキーワード(IoTなど)が発表される場としてキーノートというイベントの主要カンファレンスが使われることが多い。
それぞれのコンテンツで時間軸が異なるので、目的に応じて何を中心に情報収集するかの設計が必要である。
会場は非常に広く、また、スタートアップコーナー(CESのEureka Park)などは玉石混淆であり、そもそもどのような視点で見るかで価値が全く変わるため、ざっくり見ようとすると何を観るのか迷う人が多い。
よって、
✓ 直近のトレンドを知りたい場合は展示を中心に
✓ 今から数年後のトレンドだとスタートアップを中心に
✓ ○○テックの方向性を知るにはカンファレンスやキーノートを押さえる
といった見方をするとよい。
各テックイベントの動向について知りたい方は
博報堂コンサルティングでは、上記にて紹介した代表的なグローバルテックイベントの動向について、適宜コラム掲載をしていく。また、各イベントでの解説(バーチャルツアー)とレポートをリリース予定である。ご興味ある方は事前登録いただきたい。
事前登録/情報共有をご希望の方
※開催情報をご希望の方はツアー及びイベント概要が決まり次第ご連絡いたします。
※事前登録者多数の場合本募集を行わない可能性もございます。参加検討中でも事前登録をお勧めいたします。
1)ドバイ万博&SMARTCITY case ツアー
2020年10月20日~2021年4月10日にアラブ首長国連邦ドバイで開催されるドバイ万博。
SMARTCITYをはじめとしたテクノロジーを「新しいインフラを敷設できるケース」として最先端の事例が発表されることが見込まれています。それらから各国ブースをピックアップして閲覧。
同時に、すでに実証実験が始まっている自動運転交通網やドローン警察などのドバイの先端企業の訪問を予定しています。2025年には大阪万博が開催されるにあたり、ベンチマークとなることは確実であり、現地もしくは映像にて実態を把握が必須です。
<ツアー内容>
・ドバイ万博 各国ブース
・テック企業や行政訪問(予定)
<ツアー日程>
実施 2020年10月末予定
申込 2020年6月初予定
<バーチャルツアー日程>
実施 2020年12月予定
申込 2020年11月予定
2)IFA2020ツアー
主にEUを中心としたグローバルトレンドと最新TECHをとらえ、戦略PRに活用・事業開発/製品開発を加速させるための現地ツアー
・新規事業開発や製品開発に向けたインプット
・SUMMIT等による各社動向や興味関心テーマの把握
・協業パートナーや取引先候補の開拓
・自社事業領域の修正や情報発信テーマへのインプット
<ツアー内容>
・SMART CITY / SMART MOBILITY (予定)
・Tech/StartUp : health tech / Sleep tech /
Beauty tech / kids-baby-Edu tech (予定)
・Platformビジネス (予定)
<ツアー日程>
実施 2020年9月4日ー9日のうち、1日2時間 2コマを予定
申込 2020年5月末予定
<バーチャルツアー日程>
実施 2020年9月末予定
申込 2020年8月中予定
3)CES2021ツアー
グローバルトレンドと最新TECHをとらえ、戦略PRに活用・事業開発/製品開発を加速させるための現地ツアー
・新規事業開発や製品開発に向けたインプット
・協業パートナーや取引先候補の開拓
・自社事業領域の修正や情報発信テーマへのインプット
<ツアー内容>
・SMART CITY / SMART MOBILITY (予定)
・Tech/StartUp : health tech / Sleep tech / Beauty tech / kids-baby-Edu tech (予定)
・Placformビジネス (予定)
<ツアー日程>
実施 2021年1月6日ー9日のうち
1日2時間 2コマを予定
申込 2020年10月初予定
<バーチャルツアー日程>
実施 2021年1月末予定
申込 2021年1月初旬予定
※開催情報をご希望の方はツアー及びイベント概要が決まり次第ご連絡いたします。
※事前登録者多数の場合本募集を行わない可能性もございます。参加検討中でも事前登録をお勧めいたします。
執筆協力: 吉田寿美(フェロー)