CASE

「科学の進歩と、人々の幸せと。」 -東京科学大学における統合ブランディングプロジェクト

「科学の進歩と、人々の幸せと。」 -東京科学大学における統合ブランディングプロジェクト

国立大学法人 東京科学大学

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東京科学大学(Science Tokyo)の統合ブランディングプロジェクト。「みんなが関わり、みんなで考えるブランディングプロジェクト」としてのべ6,000人以上が参加する対話と共創を通じて、新大学の理念とロゴマークを策定し、未来への変革の土台を構築した 。

<課題点>

東京科学大学(Science Tokyo)は、東京医科歯科大学と東京工業大学の統合により2024年10月に誕生した国立大学法人です。指定国立大学法人同士の統合という国内最大規模の大学統合事例であり、単なる組織の合併に留まらず、両大学の伝統と強みを活かしながら、社会からの期待を超える新たな大学像を創出することが求められていました。

しかし、異なる歴史と文化を持つ二つの巨大な組織が一つになり、「全く新しい大学」をゼロから創り上げることは、極めて難易度の高い挑戦でした。既存の枠組みを超えた役割定義に加え、教職員、学生、卒業生、パートナー企業など、多岐にわたるステークホルダーの合意形成と、統合への自分事化が大きな課題となっていました。

そこで博報堂コンサルティングは、博報堂デザインと連携しながら、理念策定、ブランド戦略策定、VI(ビジュアル・アイデンティティ)開発、そしてインナー・アウターブランディングの実行支援、さらには自律的な運用体制の構築まで、統合プロセスの全体設計と推進を一貫してサポートしました。

<解決策>

本プロジェクトの最大の特徴は、これまでの「創り手と受け手」という一方的な関係性から脱却し、「ステークホルダー皆で創り、共有し、ブランドを拡張する」というエコシステムとしてのブランド構築に可能性を見出した点にあります。

このエコシステムの実現に向け、統合プロセスそのものを「ブランディング活動(=仲間づくりの場)」と位置づけ、「東京科学大学 Brand Action!」を展開しました。トップダウンでの一方的な決定ではなく、「みんなが関わり、みんなで考える」という参加型のアプローチを徹底することで、対話を通じた納得感の醸成を図りました。

1. インナーブランディング:のべ6,000人の「声」から作る
プロジェクトの初期段階から、学内外の多様なステークホルダーを巻き込む活動を設計しました。 特に象徴的だったのが、両大学の学園祭(お茶の水祭・工大祭)で実施した「オープンヒアリングイベント」です。「新大学を色で表すと?」「カタチにすると?」といった4つの問いを掲げたパネルを設置し、4日間でのべ3,000枚を超える投票シールが集まりました。この結果抽出された「濃い青」「上昇するらせん形」といったイメージは、その後のVI開発の重要な指針となりました。 また、計300名近くが参加したワークショップでは、ビジュアルカードを用いた未来像の検討や、粘土を使って「新大学らしさ」を表現するモニュメント制作など、クリエイティブな手法で対話を深めました。のべ6,000人以上が参加したこれらのプロセスを経て、新大学のMission「『科学の進歩』と『人々の幸せ』とを探求し、社会とともに新たな価値を創造する」および行動指針(Core values)が策定されました


2. アウトプット:進化し続ける「デザインシステム」
策定されたコンセプトをもとに、ロゴマークとブランドカラー「Science Blue」を開発しました。 特筆すべきは、これらを運用するためのルールを「デザインシステム 1.0.0」としてWeb上で一般公開したことです。博報堂コンサルティングはこのデザインシステムの全体設計や、ブランド運用に関わる方針策定、デザインシステムの更新ルールの策定に伴走しました。 デザインルールに加えて、ブランドの考え方、運用方法やツールを継続的に更新できる仕組みを整えたことで、誰もが常にブランドを体現でき、かつ硬直化しない持続可能な運用を可能にしました。

3. アウターブランディング:社会への問いかけ
新大学の開学に合わせて、「What is science?」キャンペーンを展開しました。「あなたにとって科学とは何か?」という問いを社会全体に投げかけ、学生や教職員から寄せられた「科学って、無限。」「科学って、人の温もり。」といった想いをポスター化してキャンパスジャックを実施。単なる告知ではなく、社会との対話を生み出すことで、新大学への期待感を醸成しました。

「『新しい大学をみんなで創る』というプロセスそのものがブランディングになると考えました。反対意見も含めた多様な声を可視化し、対話を重ねることで、納得感のある合意形成と深い愛着の醸成を目指しました」プロジェクトを担当したメンバーは振り返ります。

4. 組織デザイン:自律的なブランド推進体制の構築
各部局に分散していた広報人材を束ねる組織体(広報・ブランド推進員)を組成し、ブランディング・デザインに関する認識の共通化や部局間での取り組み共有・改善の場を設計しました。さらに、学内各組織の通常業務が新大学ブランドの育成に結びつき、自律的にブランド推進が行われるような体制・仕組みづくりを現在も継続して支援しています。

<結果>

多くのステークホルダーが自分事として参加したことで、新大学としての一体感が醸成されました。また、2024年4月の新ロゴマーク・理念の発表は主要メディアでも注目を集め、新たな大学像が社会へ浸透する契機となりました。

東京科学大学は現在も、策定されたデザインシステムと自律的な推進体制を軸に、オウンドメディア「Science Tokyoニュース」などを通じて積極的な発信を展開し続けており、科学の力で社会に貢献する世界トップレベルの大学としての進化に向けて挑戦しています。