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<第2回>イノベーティング・カンパニーへの変革 ― 社員の発想と行動を跳躍させる「4つの張力」―

作成者: 喜馬 克治|2018年09月20日

イノベーションを起こすには「4つの張力」が基盤になる

山之口::企業の発想力には「4つの張力(図表1)」が源泉になると我々は分析しています。1つは「アート」、未来の姿やビジョンを描く力です。それは企業特有の美意識、社員の誇りや存在意義を描く力とも言えます。さらに、全社員でビジョンや美意識を共有できることが重要で、共通のビジョンを社員が心から共有できる組織力が、新しい発想やビジネスの革新をもたらすのです。
2つ目は「インテリジェンス」。論理的に検証し、次なる打ち手の確度を上げるために科学する力です。企業にはデータベースやシステムを整えること、社員には事業活動の検証・分析を習慣づけることが問われます。また失敗や成功を言語化することも非常に重要です。

山之口:問題の本質は、社員一人ひとりの発想が企業としての発想に結びついていないこと。経営者はさまざまな仕掛けを用意し、社員が自由闊達に自分の発想を世に問うことができる仕組みをつくるべきです。先の読めない時代だからこそ、過去のデータや経験則に頼っていたのでは、イノベーションは創出できません。社員の心のうちに眠る発想をうまく引き出し、事業へと転換していく仕組みが必要です。たとえば、博報堂グループでは、広告づくりを通して、生活者の“次の欲求”を先回りして提案してきました。そこには、個の力に頼るのではなく、ブレーンストーミングなどの共創作業、多様な人材による“雑談力”からアイデアを養う独自の仕組みを活用しています。
3つ目は「カルチャー」。企業全体で新しい発想や行動を応援し、賞賛しあえる風土をつくる力です。新しい発想や異端の考え方を認める企業文化があるかないかで、イノベーションの実現確率は大きく変わります。
そして4つ目が「プロダクション」。社員や現場から生まれる発想を、ビジネスとして現場に定着させられる実行力です。昨今は製品やサービスをプロトタイプの段階から世の中に提案し、市場投入の前にユーザーからの評価と試作を繰り返す企業が増えています。社内のリソースだけで開発する自前主義ではなく、社外のパートナーと共にビジネスに定着させるオープンなスタンスが実行力を左右しています。

「ヒューマンリソース」から「ヒューマンリード」へ

喜馬::これら「4つの張力」は、そもそも発想力が豊かな20〜30歳代の次世代人材を活かす上で重要な視点になるのがポイントです。自己成長へのモチベーションがひときわ高く、身近で革新的なビジネスの誕生(スタートアップ)を原体験にもつ彼らには、特にアートとプロダクションの上下のテンションが重要です。いかに彼らと未来像を共有し、アイデアを実行に結びつけるスピードが備わった企業であるか。それが、「若き発想」を活かす大きなポイントと言えます。
博報堂コンサルティングは、4つの張力を基に「HRソリューション(図表2)」の整備に注力しています。発想を生み出す社員を単なる「リソース」と捉えず、革新を引き起こす牽引者「リード」として捉える新しいプログラムです。
「イノベーティング・カンパニー」への変革を模索する企業経営、人事・組織戦略にぜひ役立てていただきたいと思っています。

 

※本コラムは、DIAMOND Harvard Business Review(2018年 9月号) 掲載のタイアップ記事 ”イノベーティング・カンパニーへの変革 -社員の発想と行動を跳躍させる「4つの張力」- ”より転載しております。