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<第1回>オムニチャネル時代の流通との関係性 ― メーカーがしかける流通ガバナンス

作成者: HCI広報|2016年07月18日

 

生活者に自社製品を選んでもらうには

メーカーにおけるマーケティング活動において、生活者の購買活動をユーザーシナリオとしてとらえる際、あるブランド(製品)の購入に至るプロセスを3段階でとらえてみる。

①来店前購入意向
②来店後購入意向
③レジ前購入意向
___
__購入

ファンコミュニティなどのエンゲージメント施策は、来店前からのブランド購入意向を上げ、それを購入まで継続させる動機付けになりうる。また、ダイレクト(自社通販など)による生活者との直接接点は、そもそも自社ECサイトへの誘導を主にはプロダクト(ブランド)を用いて行うことが多いため、商品を指名してもらえないとサイト自体に来てもらえない、という前提がある。
つまり、いずれにせよ、両施策におけるキモは、自社ブランドを「来店前から指名買い」させることである、といえる。

生活者から見たときに、はたしてその買い方=始めから指名買いすること、はどれほどの頻度で行われるのだろうか?

少量多品種の商品群をもつ、カテゴリーMDを行っている企業を除き、多くの企業は1つの商品カテゴリーにおいて商材は数SKUであろう。生活者の一日、一週間における飲食・活動・消費においてその商品のタイムシェア(どの程度の時間その商品と接しているか/心奪われているか)、ワレットシェア(手元のお金に対するインパクト)、マインドシェア(その商品の選択・購入や消費にかける注力度など)を踏まえると、24時間365日コミュニティと接し、エンゲージし続ける試みははたして有効なのか?
そもそもメーカーサイドとして資金的に、人員数的に可能なのだろうか?

その答えはシンプルである。
エンゲージメント施策には大きな意味がある。ただ、生活者の購買すべての成果が実現されるわけではない。

では、他にどのような手があるのだろうか?

生活者は店舗でカテゴリーを選び、そのカテゴリー内での商品を選ぶ(「2.来店後購入意向」の醸成)。最終的にはレジ前で買物かごに入った商品の価格と財布を見ながら決断をくだす(「3.レジ前購入意向」の醸成)。その時、自社の商品のブランドを体現してくれるのは、「流通」に他ならないのではないか。

 

BtoB(toC)ブランディングの必要性

つまり、メーカーは、生活者とのエンゲージメントにおいて、ダイレクトだけではなく、流通を経由してブランドを構築している事実と、その影響度を再認識すべきであろうと思う。

なぜ、生活者に対してはブランディング活動を行っているにも関わらず、流通という「顧客」に対して、条件交渉やプロモーションの約束といった「直接的な」営業活動の実施のみになってしまっているのだろうか。
あらためて、BtoBブランディングについて真剣に考えることを提唱したい。メーカーにとって、流通もブランディングすべき対象であり、自社のブランドを伝えてくれる伝道者でもある。

流通に「自社のブランドを代弁してもらう」ためには、BtoBブランディング=「流通に対する」ブランディング、を行うことがとても重要なのである。