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<第6回>経営戦略としてのブランド ― インターナルブランディング

作成者: HCI広報|2014年07月20日

ブランド経営のステークホルダーである顧客・従業員・投資家のうち従業員は、企業のブランド価値を構築していく担い手ですが、同時に受け手でもあります。従業員として満足し継続的に働きたいか。自社のブランドを家族や友人に誇ることができるか。また、就職活動中の学生や中途転職希望者にとって、その企業のブランドは魅力的で身を投じようと思えるのか。パートや契約・派遣社員にとって、選びたくなるような職場か。このような視点を踏まえ、ブランド価値を社内に浸透させていくことは極めて重要であり、この活動をインターナルブランディングと言います。

インターナルブランディングのための具体的な施策は主に三つあります。一つめはツール・メディア開発です。例えばブランドブックやブランドビデオなどのことで、内容としてはブランドステートメント(ブランドの考え方を明文化した声明文)やブランド価値構造、社内行動規範などの詳細な解説です。これが社員にとっては自社ブランドのバイブルとなります。

二つめはイベント開発です。研修セミナーやワークショップなど、直接的な対話によって社員の一体感を創出し、ブランドに貢献するモチベーションを喚起します。最初は嫌々ながら参加した社員も、実際にプログラムが始まると議論に熱が入り盛り上がることが多いです。

三つめは制度開発です。研修制度や報奨制度など、社員のブランド知識、意識向上、行動促進を促します。ブランドと言うとやや抽象的な議論に終始しがちなこともありますが、具体的な制度に落とし込むことで実態を伴わせることができます。

近年では労働市場の流動性が高まり、従業員の定着率に課題を抱える企業も少なくありません。特に店舗を持つサービス業のようなフランチャイズビジネスにおいては、現場を支える社員やパート、アルバイトなどにも自社ブランドの価値を徹底的に浸透させることは効果的です。最近ではグローバルに事業展開する企業も増えており、外国人のローカル社員に対して本社の考え方を浸透させることが、競争力の強化につながることも多いようです。



(文化通信 2014年7月21日号掲載)
※本連載は文化通信に寄稿した内容を転載しております。