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<第1回>インターナルブランディングの進化が、企業のビジネスモデル転換を加速させる

作成者: HCI広報|2018年05月01日

ビジネスモデル転換と働き方改革という両面から組織変革が求められる現在、組織が成長し続けるためには、一人一人の社員がオーナーシップを持ち、旧来のやり方にとらわれない発想で壁を乗り越えていく自律型組織であることが求められる。今、そういった背景の中で「インターナルブランディング」という考え方に再度光が当たっている。

変化の中で求められる自律型組織への変革

グローバル化と技術革新をはじめとする環境変化により、多くの企業はビジネスモデルの転換期を迎えている。一方で、働き方改革に向けた取り組みも重要性を増しており、両面を考慮した組織風土改革のアプローチが求められている。 企業のありかたと社員の働き方を変革する必要がある中で、多くの経営者から似たような相談を受けることが増えた、と博報堂コンサルティングのシニアマネジャーの栗原隆人氏は語る。主として、どの企業も従業員が自律し、旧来のやり方にとらわれない発想で仕事を進めていく組織になることを求めている。その過程にある壁は企業の事情により様々であるように見えるが、実際にはいくつかの共通項がある。

 

超巨大グローバル企業、日立製作所の挑戦

グローバルで30万人の社員を擁する日立製作所では、東原敏昭社長兼CEOが先頭に立ち、組織風土改革に取り組んでいる。ビジネスモデルがメーカー型からソリューション型にシフトしていく中で、顧客のニーズを掘り起こし、社内の壁を越えてリソースを組み合わせ、新しい価値を生み出せるプロデューサー型の人材が必要とされている。具体的な取り組みとして「一人称のマインドセット」というワードを掲げ、社内ビジネスアイディアコンテスト「Make a Difference!」を開催している。

その2016年度受賞案件の一つが、企業の働き方改革、健康経営を支えるアプリ「MyLifePal」だ。このアイディアは事業化へ向けて動き出すことがニュースリリースとして発表され、ブーメラン効果によって社内の変革意識が強化された。また、ある受賞者は現業を離れて新規事業を企画する部署に異動し、プロジェクトの推進を担っている。
会社の目指す方向性を体現したアイデアを表彰し、発案者にチャンスを与える。仮に失敗しても評価は高いまま据え置く。この事実が会社の本気度を表すメッセージとなり、従業員が感化されていく。その積み重ねにより組織変革が推進されていくのだ。

新しい “インターナルブランディング ” というソリューション

日立の取り組みはインターナルブランディングの思想に基づいていると言える。インターナルブランディング自体は決して新しい考え方ではなく、80~90年代のCIブームの頃に注目を浴びたテーマだが、先述したような潮流の中で改めて注目が集まっている。

インターナルブランディングが求められる状況は大きく2つに分けられると鵜川将成氏は言う。企業が持っていた「らしさ」を失って組織がばらばらになっている状況と、逆に「らしさ」に固執しすぎてしまい事業との齟齬が生じている状況だ。典型的なケースとしては、組織が革新的な発想を求められているのにもかかわらず、旧来的な安定したオペレーション重視型に留まっているという場合があり、ビジネスモデルの急速な変化に組織風土の適応が追い付いていない状況だと言える。

≫第2回に続く

 

本コラムは、ダイヤモンド社『DIAMOND Harvard Business Review(2018年3月号) 』に掲載された記事「インターナルブランディングの進化が、企業のビジネスモデル転換を加速させる」の内容を転載しております。

 

栗原隆人 / エグゼクティブマネジャー

早稲田大学商学部卒。外資コンサルティングファームを経て現職。

鵜川将成 / アソシエイト
一橋大学商学部卒。広告代理店のコピーライターを経て現職。