<第6回>生活者パラダイムの転換 ― 生活者としての非正規雇用労働者

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非正規雇用の労働者の割合が年々増加しています。1984年には15%だったのが2014年には37%と2倍以上の割合にまでなっています。要因としてはさまざま考えられますが、ここでは企業と生活者の二つの視点から私見を述べたいと思います。

グラフ: 正規雇用と非正規雇用労働者の推移

文化通信_生活者パラダイムの転換⑥

 

まず企業側の視点で言えば、市場全体が縮小傾向にある中で正社員の終身雇用や待遇の維持を最優先に考えた結果、可変的な労働力である非正規雇用を重宝するようになったということが挙げられるでしょう。右肩上がりの経済成長が終焉した今、この傾向は今後も継続すると考えられます。

一方、生活者側からの視点で言えば、正規雇用と非正規雇用の違いについて、これまであまり理解が浸透していなかったのではないかと考えています。非正規雇用にはメリットとデメリットの両面がありますが、デメリットとしては、相対的に賃金が安いこと、雇用契約期間が短いこと、キャリアアップの機会に乏しいことなどが挙げられます。しかし、社会経験のない若者に、就職活動時点でそのようなことを深く理解するのは難しかったのではないでしょうか。最近になって、非正規雇用の社員が高齢化してくるのに伴い、社会問題としてメディアに取り上げられる機会も増えたことで、ようやく理解が浸透してきたように見受けられます。

一般に、非正規雇用労働者層は購買力が低いため、彼らを正面からターゲットとした商品やサービスがなかなか出てきにくいのが現状です。しかし、労働者のうち4割近くのボリュームを占めることを考えれば、対象市場として無視できる状況ではありません。特に住宅ローンや保険などの金融商品については、従来のように終身雇用の顧客のみを前提とするのではなく、非正規雇用者層のニーズを満たすような商品を拡充することが求められます。

マーケティングは、ともすると購買力の高い層ばかりにフォーカスしがちです。しかし、社会のニーズに着目し、それに応えられるようなビジネスを生み出すことも、一つの大きな使命なのです。

(文化通信 2015年7月20日号掲載)
本連載は文化通信に寄稿した内容を転載しております。

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