<第3回>アセアン市場での持続的成長に向けた日本企業の課題とアプローチ

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6.マーケティングリーダーシップの必要性

日本企業は自社で研究開発したテクノロジーに対しての思い入れが強く、グローバル市場での会議においても、商品開発、技術開発担当者の発言力が強く、ローカル市場を知る営業やチャネル担当の意見よりも優先される傾向があると思います。

特に新興国においては、所得の限られた顧客がターゲットであることを考えると、使える機能は最小限度あれば十分であり、むしろ、テレビCMで広告をやっているカッコいいデザインの製品が、身近な料金プランで買いやすく売られていることの方が重要です。マーケティング担当者がリーダーシップを握り、マーケットでトライ&エラーを繰り返すという視点が必要だと思います。

一方で、全てのカテゴリーで日本企業が苦戦している訳ではありません。例えばデジタルカメラについては、日本企業が寡占的な状態を維持していますし、自動車についても、国による差はありますが、東南アジア全般で高いシェアを確立しています。このようなテクノロジーや品質による差別化が有効なカテゴリーでは、依然としてプロダクトイノベーション、プロセスイノベーションによる競争優位を構築することが可能だと思います。しかし、アセアン市場において急成長する「中間層」をターゲットするためには、マーケティングリーダーシップによる柔軟で素早い市場対応がなければ、一定のマーケットシェアと収益を上げることは難しいと思います。

7.「クラス」別に異なるマーケティングアプローチ

日本市場は総中流社会と言われ、先進国の中でも極めて所得格差のない市場であるため、富裕層、中間層といった「社会階層=クラス」を意識することが、他国に比べると圧倒的に少ないと思います。アセアン市場で、富裕層・中間層・貧困層が一定の比率で存在しており、「クラス」が明確に存在します。この「クラス」による違いを理解することも、日本企業の苦手科目と言えます。

例えば、富裕層のハイエンドマーケットにおいては、国や都市による違いは大きくありません。特に新興国では貧富の差が大きいので、富裕層は驚くほどお金持ちですし、海外の都市を頻繁に行き来しており、日本人でも顧客像をイメージしやすいです。この層であれば、日本企業が得意とする微妙な機能の違いや、隠れた高品質を理解してくれます。ここでは過度な個別化は不要であり、本社主導でマーケティング投資、出店・販売展開をすることが比較的有効だと思います。商品開発、技術部門のリーダーシップが比較的機能すると思います(ユニバーサル戦略)。

一方で、中間層を中心とするマスマーケットは多様で複雑です。生活習慣、居住環境、価値観などは、都市によっても異なります。マーケティングリサーチを実施しても、どこまでマスマーケット全体を代表しているのかわからないという声を良く聞きます。日本人にとっては顧客像をイメージするのが難しいため、現地における生の情報をもとに、如何にして実態を掴むかが重要になります。ここでは、マーケティングリーダーシップを発揮しつつ、本社と現地法人が密接に連携をとりながら、必要なタイミングで大胆なマーケティング投資を行うことが、成功のカギとなると思います(ローカルフィット戦略)。

 

表: ターゲット市場とマーケティングアプローチ

ブログ(吉田さん)_150323


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