心理的安全性が高い組織における次の課題とは? ~オンラインセミナーのご案内~

依田 真幸

依田 真幸

  • 組織改革・人材育成

組織が成長し継続して結果を出し続けるためには、従業員個人のモチベーションの向上や連帯感の醸成に加え、クレドや共有価値観への理解を促進し企業文化に根付かせていくことが重要である。企業にとって大切な共有したい価値観をベースとして従業員同士が称賛し合う文化を形成することは、個人が「共同体感覚」をもって楽しく自律的に働くことや、心理的安全性の担保にも繋がる。本セミナーでは、組織活性化を促し、称賛文化と企業パーパスの浸透を可視化する「PRAISE CARD」を用いた実証実験の事例を交えながら、称賛文化に必要な心理的安全性の陥りやすい罠や、新たな課題とその解決手法について紹介する。

 

1.組織の継続成長に重要な「称賛」と、それを可視化するサービス「PRAISE CARD」

組織が成長し継続して結果を出し続けるための成功サイクルのひとつに、マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授が提唱している「組織の成功循環モデル」がある。これは、組織を「関係の質」「思考の質」「行動の質」「結果の質」という4つの質で捉え、組織が活性化する“グッドサイクル”を回すためには、まず「関係の質」を向上させることが重要である、という考え方である。

参照:前回コラム「「称賛」と「感謝」の文化がもたらす組織の未来とは?」

 

この成功循環モデルを回すためのきっかけとして有効なキーワードは「称賛」であり、他者からの「称賛」により、自分らしさという価値を発揮し、組織エンゲージメントが強化される。
博報堂コンサルティングでは、その「称賛」文化と企業が掲げるパーパスの浸透を可視化し、知的創造社会の実現を目指すPRAISE CARDをBIPROGY、博報堂とともに開発した。

 

【PRAISE CARD について】

PRAISE CARDは、従業員同士が専用のスマホアプリを用いて、日頃の協力や行動に対する称賛・感謝の気持ちを、デジタルカードで贈り合うことができるサービスである。デジタルカードには会社のクレド(企業全体の従業員が心がける信条や行動指針)やバリュー(企業・組織が社会に対して提供したいとする価値)が記載されており、それらに沿った行動に対する称賛・感謝のメッセージを通じて、社員のモチベーションの向上や連帯感の醸成に加え、クレドや共有価値観への理解を促進し企業文化に根付かせていく。

また、本サービスにはブロックチェーン技術が使われており、記録される各従業員のデジタルカードの送受信量や保有量といったデータを元に、ネットワーク分析の手法を用いて活性度を分析することで、各コミュニティの状態を可視化することができる。部署単位や部門単位、全社単位で活性度の推移を把握することで、組織の課題を発見し、職場環境の改善に活かしていくことが可能になる。
それゆえPRAISE CARDは、貢献度の可視化、組織風土の醸成に加え、自律的に行動する従業員の可視化とモチベーション向上、また従業員同士のコミュニケーション活性化に寄与する。

 

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2.組織には心理的安全性の担保と価値観を共有した自律的組織文化の醸成が重要

組織の継続成長に必要な「称賛」文化を根付かせるためには、心理的安全性の担保と価値観を共有した自律的組織文化の醸成が重要になるが、心理的安全性の捉え方には陥りがちな罠がある。

心理的安全性の担保には、組織内外においてメンバー全員の意思疎通がしやすい環境が必須となるが、意思疎通の面だけ捉えたような何でも言い合えるだけの組織は、馴れ合いのぬるい組織になってしまい、成長が停滞してしまう可能性があるので注意が必要だ。

心理的安全性は与えられるものでなく、自ら作っていくことが重要である。それが「自律的組織文化の醸成」につながり、良い組織に成長していくと考えられる。組織の仲間からの称賛により、勇気をもってチャレンジできる個人を、さらに仲間が応援していく好循環が生まれ、それにより組織におけるイノベーションが起きやすくなる。

例えば、まず、個人が自ら能動的に心理的安全の場を作っていくことで、自分が影響を与えうる輪(組織)をもつことができ、その輪の中では心理的安全性が担保されている。しかし、他部署に輪を広げていくには、自分自身で調整しながら心理的安全の場作っていく必要がある。
影響の輪を少しずつ広げてチャレンジをすることは、自分の枠を越境していくことにつながっていく。

その個人の行動が「称賛」により仲間から勇気づけられるので、次のチャレンジをしていくことへの怖れが薄れる。また、仲間からの的確なフィードバックによって、成長を実感(可視化)することもでき、モチベーションにつながると考えられ、イノベーションに発展していく。

PRAISE CARDでは、「称賛」のベースとなる価値観が、企業が大事にする「パーパスを実現する」価値観(バリュー)に基づくことで、組織内の共同体感覚をもって個人が楽しく自律的に働くことができる。

3.心理的安全性を重視した社内風土変革の取組によって得られた課題を解決
PRAISE CARD実証実験事例 ~千代田化工建設株式会社 様~

PRAISE CARDの実証実験に参加している企業の中でも大変興味深い、千代田化工建設株式会社様の事例をご紹介したい。
千代田化工建設株式会社様は「心理的安全性」を重視した社内風土の変革に取組んでいる。2020年に社内有志で「次世代DIGGING LAB.」プロジェクト(通称:DIGLAB)を立ち上げ、社内の課題を認識し、社内外の有識者の知⾒を積極的に取りいれることで課題解決アイデアを提案する“場”を提供し、社内に眠っている熱い思いやアイデアを持った優秀な人財を掘り起こす(DIGる{ディグる})活動を実施している。この取組が評価され「心理的安全性AWARD2022」において「シルバーリング」を受賞している。

 

 
【『「DIG」って「LAB」って変革を!~心理的に柔軟な実践コミュニティDIGLAB~』について】

 ◇概要

DIGLABとは、COVID-19やカーボンニュートラルの加速などにより事業環境が激変する中、主体的な変革の必要性を強く感じた社員が中心となり、ボトムアップで会社変革に挑戦するプログラムとして2020年に立ち上げた有志活動。「新規事業開発」「ライフワークバランス」「人財育成・組織開発」「プロジェクトマネジメント」といったテーマで約4ヶ月間にわたり社内外で対話を重ね、経営陣に解決策を提案するのみならず、スモールスタートで実行にまで結び付けることを目指す。現在第3期まで継続しており、20224月には、新設された「バリューイノベーション推進部」における正式な活動へと発展を遂げている。

◇取組みのポイント

① 成果に繋げる土台として「心理的安全性」を位置づけ、メンバー同士が世代や役職に関係なく、安心して発言できる場を構築したこと。更には、ボトムアップの一方的な提言とするのではなく、経営陣も巻き込んだ対話を継続的に行い、「リーダーの心理的安全性」が醸成される場づくりを心がけている。

② その結果、世代や部署の垣根を越えた「タテ・ヨコ・ナナメのネットワーク構築の場」となっている。

③ 対話や提言に留まることなく、会社の成果・貢献に繋がる活動となっている。

 ◇成果・インパクト(一例)

  • 「働き方の多様性・柔軟性の向上」に関する提案がきっかけとなり、20224月に健康経営・ダイバーシティ特別推進室が設置。
  • 複数の新規事業に関する提案が他社との協業・連携に進展。
  • プロジェクトの枠組みを超えたコミュニケーション活性化支援ITツール(PRAISECARD)を当社大型案件遂行チーム(国内外数百名規模)に導入。

 

(出典:千代田化工建設株式会社 2022年5月31日 インフォメーションhttps://www.chiyodacorp.com/media/220531.pdf )

 

ただし、このように心理的安全性の高い職場づくりを促進していくにあたっては、各地から新たな課題も聞こえてくる。その課題とは、「仕事におけるグレーゾーン」の解決である。

仕事のグレーゾーン(隙間)を埋める従業員、仕事のために、そして組織や周囲のために動ける人が増えることは、組織と企業の成長につながる。自分のために自分の好きなことや評価・実績を上げられるスタンドプレーを行う人は多いが、仕事におけるグレーゾーンを埋めてくれる人材は貴重である。

どちらがやるか決まっていない曖昧な仕事や、そもそも想定していなかった仕事のグレーゾーンは、縄張り意識、縦割り組織の弊害でもあり、組織が大型化すればするほど、顕著な課題である。最初に決めた仕事の役割分担に固執して、自分のテリトリー、業務範囲を主張し、線を引いて、自分の範囲外の仕事はしない人は意外と多い。

そのグレーゾーンに対し、自発的にそれを埋める行動ができる従業員を増やしていく手法としてPRAISE CARDが活用されている。行動に躊躇する理由として、それを自分が担当してもいいのか、気づかれない、または評価されないのではないか、といった悩みが考えられる。そのため、自ら仕事を探していく行動自体を称賛しあうことにより、失敗を恐れる懸念が払拭され、仕事全体を回すために必要であれば、自分の役割の範囲を超えてグレーゾーンに入り込んで対応してくれる人材と組織を育てていくことができる。

PRAISE CARDによって行動を「称賛」されることは、グレーゾーンに対する自発性を促し、さらなるグレーゾーンの発見はスピードアップにもつながるので、仕事や組織全体がうまく機能していくことにつながる。

現在も実証実験中の千代田化工建設株式会社様をおよびして、心理的安全性づくりへの取組、そして取組継続における課題の解決方法についての現状を共有するセミナーを開催する。実証実験を通じて、どのようなことを感じ、どのような成果があったのかについて詳細なお話を伺う。今後の組織づくりのヒントにしていただきたい。

 

詳しくは、下記のオンラインセミナーでご紹介いたします。

ご興味のある方は、ぜひ下記の申込フォームよりお申込み・ご参加下さい。

 


―本内容を詳しくご紹介するセミナーを実施いたします―

<オンラインセミナー概要>
心理的安全性が高い組織における次の課題とは?


【日 時】2022年8月4日(木)17:00-18:00
【登壇者】
千代田化工建設株式会社 水素事業部 プロジェクトマネージャー 兼 バリューイノベーション推進部 次世代DIGGING LAB. 第2期プロジェクトマネージャー 林 千瑛 氏
BIPROGY株式会社 グループマーケティング部 小谷野 圭司 氏
株式会社博報堂コンサルティング プロデューサー 依田真幸

※こちらのセミナーは終了いたしました。

※本セミナーのお申込みにつきまして、博報堂および博報堂DY ホールディングスグループのNDAおよびレギュレーションにより、セミナーのご参加をお断りさせていただく場合がございます。予めご了承ください。

 


 

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