「称賛」と「感謝」の文化がもたらす組織の未来とは? ~オンラインセミナーのご案内~

依田 真幸

依田 真幸

  • 組織改革・人材育成

企業にとって、イノベーション創出はもはや手放すことのできない大きな命題だ。しかし、それを支える労働力はといえば、少子高齢化が進み生産人口は減少し続け、圧縮が進むばかりである。このような状況において、それでもイノベーションを生み出し続けられる組織とは、どのようなものか。また、それを実現するのに重要なポイントとは何か。本稿ではそのヒントとなる実験結果を提示するとともに、内容を深掘りするためのセミナーをご案内する。

 

1.企業と個人、それぞれの目指すもの

企業が少ない労働力でイノベーションを起こすには、社員一人一人が自律的に行動し、その持ちうる知恵と技術を共有してパフォーマンスを最大化することが重要だ。すなわち、企業は「知」を集結して創造を行う「知的創造企業」となることを目指す必要性が高まっている。しかし実際には、コロナ禍をきっかけにリモートワークが増えたことで、社員間の対面コミュニケーションが激減し、「知」を共有することのハードルが上がっているばかりか、そもそも自社への帰属意識も持ちにくくなっている等の課題に直面している企業が多いのではないだろうか。

一方、働く個人に視点を移すと、「働くこと」に対する価値観が多様化し、これまでのように社員としてだけでなく、副業や兼業、フリーランス、在宅ワークなど働きかたの選択肢が大きく拡大している。そして、「本当にやりたいことは何か、自分は何のために働くのか」を改めて見直す人も増えている。その結果、「会社から指示されたことをやるのではなく、自分の価値観や能力を活かした仕事がしたい」という欲求が高まっていると考えられる。これは言い換えれば、社員がやらされ仕事からの脱却をはかり個々の価値を発揮するということであり、企業側からすると、働きかたが自由に選べるこの時代の環境下で人的資本を確保するためには、「この会社で仕事をする意味」を明確にし、求心力をあげることが必要となってくる。これまで以上に、パーパスへの共感の重要性が増しているのである。

“「集団的知性」を獲得し、パーパス(存在意義)を実現できる創造的企業になることを目指す”という企業の視点と、“「越境力(=組織の枠を飛び越える力)」を持ち、自分らしさを価値として発揮することに対して、自分自身の意思をもって前向きに行動にうつせること”を求める個人の視点。

この双方を満たすことができる理想的な姿とは、一体どのようなものであり、またどのように実現できるのだろうか。

まず大前提として、企業がイノベーションを起こすには、社員同士のコミュニケーションの活性化が必須であることは間違いない。しかし先にも述べたように、現状ではコロナ禍の影響でリモートワークが増えた結果、対面でのコミュニケーションが減り、リアルな場での会話を通じて培われていた社員同士の信頼関係や連帯感が希薄化してしまっている。この課題の解決なくして、イノベーションを生むためのコミュニケーション活性化は成し得ない。

 

そこで博報堂コンサルティングでは、BIPROGY、博報堂とともに、このコミュニケーションの問題をオンライン上で解決する方法として「PRAISE CARD」を開発し、2021年8月より、実証実験を行った。

開発時のプレスリリースはこちら
※2022年4月1日に日本ユニシス株式会社からBIPROGY株式会社へ商号変更しました。

2.「称賛」でまわす成功循環モデルとは?

組織が成長し継続して結果を出し続けるための成功サイクルのひとつに、マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授が提唱している「組織の成功循環モデル」がある。

これは、組織を「関係の質」「思考の質」「行動の質」「結果の質」という4つの質で捉え、組織が活性化する“グッドサイクル”を回すためには、まず「関係の質」を向上させることが重要である、という考え方である。「関係の質」すなわち組織の中のコミュニケーションや関り方が良くなると、「思考の質」つまり前向きな思考や幅広い視野が得られ、それは「行動の質」を受動的なものから能動的なものへと変え、「結果の質」を高めることにつながる。そしてその結果、「関係の質」がますます向上する、という循環が生まれる。

この成功循環モデルをまわすことで組織のエンゲージメントを高めることができれば、オンライン環境であってもイノベーションを加速させる好循環を生み出すことができるだろうと考えた。今回の実証実験は、この成功循環モデルを回すためのきっかけとして有効なキーワードは「称賛」ではないか、という仮説をもとにスタートした。

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具体的には、スマートフォンのアプリケーションを通じて、他者の行動に対して相互に称賛の意思をカードとして贈り合う。その際、複数のカードの中から「なぜその行動が称賛されるのか」を選択して贈ることができる。

 

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たとえば、「〇〇さんのこの行動は企業理念に沿っている」や「とてもいいアイデアを出してくれた」などの称賛や、「〇〇さんのおかげで助かった」という感謝など、日々の仕事の中で、相手の仕事を称賛したいときに、カードの中から「なんの価値観に沿っているのか」という“称賛したい理由“を選択して贈りあう。こうすることにより、メールや口頭で伝えるより手間も心理的負荷も少なく、気軽に他者に気持ちを伝えられるようになるのである。blog_202205012_3

 

また、カードを活用したコミュニケーションの実績は、定期的にレポートとして提供される。このレポートにより、ネットワークを可視化して分析することが可能となる。図の(事例2)ように、コミュニティ分断の様子や、コミュニティ間を繋ぐメンバーの存在なども捉えることができる。また、贈られているカードの内容に基づき、これまでは表面化していなかった個々の社員のもつ価値も見えてくる可能性がある。

 

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3.実証実験から見えてきたもの ~PRAISE CARDが実現する未来像~

今回の実証実験を経て、以下のような気付きが得られた。

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まず、もっとも大きな気付きとしては、他者から称賛される/他者を称賛するという「他者とつながること」により、自分自身の価値や価値観を認識することができるという点である。特に、他者から認められることでそれまで自分では認識していなかった価値に気付くと、それは自信につながるほか、自分がその組織に役立っていることを確認することができ、組織へのエンゲージメントが強化される。

次に、他者への称賛を繰り返すことは、いつしか相手の良い部分を探すようになり、自分自身からフォーカスがはずれていくことに繋がるという点である。相手視点での思考がまわり始めると、自然と利他的な行動をとることができるようになる。

そしてこのように、自分の価値を発見し、自信がつき、利他的な行動がとれるようになると、自ら他の組織に越境していき、そこで自分の価値を発揮して他の組織と協力することができるようになる。次第に越境して協力することが楽しくなり、組織のエンゲージメントはますます強化され、社内で多くの越境が行われるようになる。

これこそが、イノベーションを生むための「集団的知性を獲得した創造的企業」の成功循環モデルである。

さらには、これが多くの企業に広まり、企業間での越境が始まると、個々の企業という枠組みに捉われることなくそれぞれの価値を提供し合い、世界をよりよくするための共創プロジェクトによるイノベーションも可能となるのではないだろうか。

称賛文化が根付くことで、そんな「知的創造“社会”」を実現できるのである。

そんな未来の社会の姿を、皆さんはどのようにイメージいただけるだろうか。

そして、それを可能にするPRAISE CARDとは、具体的にどのようなものか。

知的創造社会を実現するために、越えなければならない課題とは。

 

詳しくは、下記のオンラインセミナーでご紹介する。

ご興味のある方は、ぜひ下記の申込フォームよりお申込み・ご参加いただきたい。

 


―本内容を詳しくご紹介するセミナーを実施いたします―

<オンラインセミナー概要>
【追加開催】「称賛感謝文化がもたらす組織未来とは


【日 時】2022年6月16日(木)16:00-17:00
【登壇者】BIPROGY株式会社 グループマーケティング部 小谷野 圭司
     株式会社博報堂HAKUHODO Blockchain Initiative 伊藤 佑介
     株式会社博報堂コンサルティング プロデューサー 依田 真幸

※こちらのセミナーは終了いたしました。

※本セミナーのお申込みにつきまして、博報堂および博報堂DY ホールディングスグループのNDAおよびレギュレーションにより、セミナーのご参加をお断りさせていただく場合がございます。予めご了承ください。

 


 

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