デザイン経営のはじめ方~デザイン経営に必要な3つの要素~

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2018年に経産省・特許庁が発表した「デザイン経営宣言」。
企業の競争力向上には経営に「デザインを拡張させる」必要があるとしている。では、経営にデザインを取り込むとは具体的には何をすることか、何から手を付けるべきか。
本稿では、それぞれ詳しく解説する。

「経営をデザインする」とは

図1 経営における3つのデザイン

 

経営をデザインするという言葉には様々な要素や取り組みが含まれているが、我々は、以下の3つの意味合いに整理をできると考えている。

1.「設計する」デザイン

主に経営層が行うコーポレートブランディングの設計。企業として・製品領域として、ブランド価値規定やコンセプトメイキングなどを行うこと。広義のデザイン。

2.「具象化する」デザイン

開発担当者や現場の社員が行うクリエイティブ制作等。経営層が設計したコンセプトをもとに、サービス・プロダクト開発担当者が具体化・具象化すること。狭義のデザイン。

3.「つなぐ」デザイン

プロジェクトを円滑に進めるため、トップ層・ボトム層双方の認識を擦り合わせながらサービス・プロダクト開発を行うこと。インターナルコミュニケーション(社内コミュニケーション)のデザイン。

それぞれ詳しく解説していこう。

 

デザイン経営とは?1. 経営層が「設計する」デザイン

デザインの語源は、ラテン語の「デジナイア」という言葉である。デジナイアは、計画に基づいて作る、考案する、意図するなどの意味を持つ。つまり、デザインは構想・考案することに本質があり、デザインとはモノの形や姿とともに、計画することそのものを指す。企業のプロダクト・サービス開発において、この計画や設計を行う部分こそが経営層に求められるデザインである。

コンセプトメイキングの設計では、「企業のブランド構築に資するデザイン」と「イノベーションに資するデザイン」の2つの視点がある。まず、企業のブランド構築では、短期的な利益追求ではなく中長期的な視点で本質的に会社の役割を定義し、さらに社会を俯瞰し未来を考えてひとつのストーリーを作ることが重要だ。しかし、デザイン経営においてはブランド構築をし、統合して守るだけでは不十分で、そこから飛躍してイノベーションを生み出すことを意識する必要がある。

日本ではイノベーションを技術革新と訳すことが多いが、本来の意味は顧客にとって新たな価値を生み出し、人の生活や社会の仕組みに大きな変革をもたらすことである。

経営者は、自社のブランド構築に加え、顧客への新たな価値を提供させるイノベーション、これらを両立させるデザイン設計を行いたい。

デザイン経営とは 2. 開発担当者が「具象化する」デザイン

経営層が設計したコンセプトを実際の形に落とし込む作業であり、一般的に「デザイン」と聞いて想像するものに最も近いだろう。単純な具象化に留まらず、審美性はもちろん、社会と共有できる正義や倫理観のような企業の存在目的まで考え形作るのが理想である。企業のコンセプトを踏襲しつつ顧客や社会への価値提供を考えたプロダクトやサービスをいかに具象化していけるのかは、デザイナーの腕の見せ所だ。
プロダクトデザインやUI(ユーザーインターフェース)については、職としての「デザイナー」が存在していることが多いが、ようやく認知が進んだUXデザイナーという「体験をデザイン」するサービスデザインもこの具象化デザインに含まれる。

デザイン経営とは 3. 社内を「つなぐ」デザイン

通常、概念や構想と、実際に物質性を持つことには開きが生じることが多いが、デザイン経営ではコンセプト設計から実際に形にして検証するところまで一気通貫で行うことが重要とされている。3つ目のデザインとなるインターナルコミュニケーションは、コンセプトを形にするときに生じる認識の齟齬や乖離を出来るだけ少なくするために必要とされるものである。

インターナルコミュニケーションを円滑にするには、経営層は開発者へ概念ではなく具体的な目的やゴールを伝える力が必要であり、開発者は自分の持っている機能や役割を抽象化し、そもそもの目的や背景を捉え再解釈する力が必要だ。

しかし、日本企業ではこの部分は個別課題となっているためにトップとボトムの乖離が大きく、中間でつなぐ人もいないケースが多い。プロジェクトに関わる全員がコンセプトを深く理解し統合していくためにはインターナルコミュニケーションをデザインする人間が必要であり、担当者には経営層から開発者への翻訳の役割と、開発者自身が経営層の背景読みをできるようにトレーニングを行う役割がある。

社内をつなぐデザインとは「コミュニケーションデザイン」と定義でき、伝える内容、伝え方(媒体)、伝える・伝わる動機づくりを通した場のデザインともいえる。

 

経営をデザインしていくために必要なこと

デザイン経営の3つの要素全てにおいて重要なことは、「定義」するだけでなく相手に「体感」してもらうことである。

人間は本来五感で理解し知覚しているにも関わらず、こと経営やビジネスになると数字や言葉でのコミュニケーションに傾倒しがちである。そのため社内間でも歪みが生じデザイン経営が進まず、経営層が設計したコンセプトを現場の人間がズレた方向へ再解釈してしまうことが往々にして起こっている。

圧倒的に情報量が増えスピード感の求められる現代においては、数字や言葉だけのコミュニケーションでは限界が来ていると言わざるを得ない。認識の齟齬をなくすためには、誰もが直感的に理解できるコミュニケーションが鍵となる。それぞれの概念や構想、機能などをプロジェクト関係者に五感で感じ取ってもらい全員が腹落ちすることで、デザイン経営はうまく回っていくのだ。

相手に体感させる社内コミュニケーションには綿密なUX設計が不可欠である。

例えば、社内ブリーフィング時や会議資料の作成時にも工夫が必要だ。

製品開発のブリーフィング時には、経営層やディレクターが製品に対する顧客の便益や価値、所有体験を定義したものをビジュアライズ化して共有するなど、コンセプトの共通認識を醸成することが求められる。製品の色や書体、素材等の細かなディテールを共有するためにデジタルモックアップを作成するのも良い。

開発者サイドも同様で、経営層の考えを理解したうえで現場の意見を吸い上げてもらうための準備が必要だろう。それには、外部コミュニケーションで使っていた手法を社内コミュニケーションに活用することも有効だ。

そして、対顧客でのコミュニケーションにおいてはUXやUIの重要性は理解されているが、社内間では無視されているケースが多い。AI化、グローバル化が進む市場で生き残っていくためにも、社内での共通認識を高め経営全体をデザインしていくことこそ、これからの日本企業の課題と言えるだろう。

ここにアートシンキングとデザインシンキングの最も大きな違いがある。何を提示する/解決するか、という出し手視点より、何を受け取るか・何を得るかという受け手視点でのアウトプットを実現することがデザイン経営の要諦である。デザイン経営とは、戦略や製品・サービス自体のデザインでもあり、それを社内外に浸透させる=体感してもらう「コト」のデザインでもある。

当社では、デザイン経営導入の各フェーズにおいて上記の視点を踏まえた支援および実施や向けの研修を行っている。ご興味ある方は是非お問い合わせ頂きたい。

 


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