<第2回> ビジョンを構想し、共有しなければ イノベーションは創出できない

HCI広報

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西村 啓太

  • 組織改革・人材育成

※本コラムは、ダイヤモンド社『DIAMOND Quarterly / 2018 春号』に掲載されたタイアップ記事「ビジョンを構想し、共有しなければイノベーションは創出できない」の内容を転載しております。


経済的・社会的・文化的価値3つの視点から未来像を描く

編集部(以下青文字):とはいえ、不確実性が⾼まっている時代に、どうやって⾃社の未来像を構想すればいいのでしょうか。

西村:未来のことなので、社内を説得できるような構想を描くのは簡単ではありません。そこでよくあるのが積み上げ型のアプローチです。ロジカルに⾒て、この市場は伸びていて、CAGR(年平均成⻑率)はこうなる、そのうち シェアは何%取れるから進出するんだと考えたりしますが、絵に描いた餅に終わることが多いですし、その先にイノ ベーションは⽣まれません。
スープストックトーキョーの遠⼭正道会⻑に以前伺ったのですが、商社勤務時代にいろいろ事業を起こす可能性があった中で、なぜ、⾃分たちは⾷べるスープの専⾨店をやるのか。それは「世の中の体温を上げる」こと。街⾓で⼥性がスープを飲んでホッとする、そんなシーンが東京にあることが世の中の温度を上げることなんだとおっしゃっていました。
それはある意味、“志“でもあります。誰もがそれぞれ、いろいろなことができたかもしれない中で、あえていまの仕事に就いているのはなぜか。それは、そこに何らかの想いがあるからです。
我々は、この想いや“志“を⼤切にしながら、みんなで未来を描いていくアプローチを取っています。みんなとい っても、経営陣と次の経営を担っていくようなミドルマネジャーが中⼼となるのですが、彼らが個々に持つ想いを、 適切なフレームワークに則って形に落とし込んでいきます。

栗原:これから起業するのであれば、リーダー⼀⼈が想いを形にしていけばいいでしょう。⼀⽅、すでに社員が何千⼈、何万⼈といる⼤企業で、経営トップがいきなりやって来てビジョンを⽰しても、ついていけない社員が出てきます。
そういう時には、ビジョンそのものをみんなでつくっていくことが必要になります。また、社⻑によってはリーダ ーシップのタイプが違っていて、必ずしも志を語ることが得意でない場合もあります。でも、仕事への想いは、絶対に皆さんお持ちです。
ただ、⼝下⼿でうまく表現できなかったり、コミュニケーションする時に優先順位を間違えてしまったりすることもあります。そうした場合は、我々のような外部の専⾨家が中に⼊って潜在的な想いを引き出し、洗練された未来像へと磨き上げるのも⼀つの⽅法です。

企業の中では、過去の勝ち⽅を知っている⼈が意思決定権を持っています。彼らが過去の成功体験を捨てるのは難しいと思われますが、具体的にどのようなプロセスでビジョンを描けばいいのでしょうか。

西村:まずは役員全員が危機感を確認、共有するところからスタートします。そのうえで未来をどう描くか。我々の場合は、先ほどの“志“を⼀度  ひも解くことを⾏いますが、外部環境が⼤きく変化しているいま、創業の志はDNAとして残しつつ、新たな環境の中でどう変容すべきなのかを読み解くことが重要です。
その時のフレームワークとして、「経済的価値」だけでなく、「社会的価値」や「⽂化的価値」といった3つの視点から、⾃分たちの未来像を描いていきます。
企業活動のグローバル化が進み、⾃分たちが世の中に与える影響が⼤きくなればなるほど社会的責任は⾼まっていきます。たとえばそれは、健康によい⾷品をつくることであったり、より格差のない労働環境をつくっていくことで あったり、より環境負荷の少ない形で事業活動を⾏うことであったりします。世の中に対して与えているマイナスの 影響をいかにゼロに持っていくかというのが社会的価値の視点です。
⼀⽅の⽂化的価値はゼロをプラスにする部分、つまり暮らしをいかに豊かにするかという視点です。社会的価値と⽂化的価値の両⽅から⾃分たちの付加価値を考えながら、同時にビジネスとして収益を上げること、つまり経済的価値を考えていく。
これら3つがセットになって、新しい⾃社の姿が浮かび上がってくるのではないかと考えています。

【社外秘】P045_西村啓太氏

栗原:プロジェクトの最初にヒアリングを⾏うのですが、その時に私がいつも聞いているのが、「御社がある20年後の未来と、ない未来とでは何が変わるのですか」という質問です。たとえば、ある業界でいまの⼤⼿メーカーが20年後に⼀つや⼆つなくなったとしても、その製品⾃体は存在するはずです。それは、新興国のメーカーがもっと安くつくっているかもしれない。だとすると、存在意義はあまりないですし、このままでは価格競争にさらされるということになりますよね。
ただ、その裏に秘めている想いがあるはずなんです。次に聞くのは、「御社らしさとは何ですか」。質問を重ねていくと、普段は表⾯化していないような、想いや“志”が⾒えてきます。世の中をどうしたいのか。なぜこの仕事を⽣業としてやっているのか。それは、未来においてどう役に⽴つのか。そういう想いを⾒える化して、共有できるような形にしていきます。
いいビジョンができた時というのは、未来に向かって⾃分たちがやるべき事業も⼀緒に浮かび上がってくることが多いものです。

 

≫第3回に続く


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