ギリシャにみる Value for Moneyの神髄

横田 康平

横田 康平プロジェクトマネージャー

  • ブランド構築
  • 組織改革・人材育成

『マンマ・ミーア!』
世界中にファンが多い同ミュージカルは2008年に映画化され、世界的なポップミュージックグループABBAの曲をベースに心地良いコメディタッチで人気を博し、ミュージカル映画史上歴代1位の興行収入を獲得した。イギリスでは不朽の名作『タイタニック』を凌ぐ程のヒット作品になった。そうした人気を背景に、昨年8月にはシリーズ映画となる『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』が公開された。このマンマ・ミーア!の撮影地とされるギリシャ・エーゲ海のスコペロス島の街並みは、エーゲ海特有の青と白のコントラストがきいた、とても鮮やかで美しい景観である。
実はいま、この3,000を超える島々を持つギリシャへの観光客数が大きく増加しているのである。

 

我々が“ギリシャ”と聞くと、2010年のギリシャ危機が記憶に新しい。当時、欧州委員会がギリシャの統計的不備を指摘したことを発端に、ギリシャの巨額の財政赤字が表面化し、ギリシャ国債のデフォルト懸念によってギリシャ国債価格が暴落、危機意識の感じられないギリシャ政府の財政健全化計画にも拍車がかかり、ギリシャの債務不履行リスクが現実味を帯びた。

さらには、ユーロ圏他国の財政健全性にも懐疑的な目が向けられた結果、スペイン・イタリアといった隣国の国債も暴落し、そうした国債を保有していたドイツをはじめとするユーロ圏全体の財務不安にまで波及した結果、株式相場や為替まで世界的に大きな影響を及ぼした。

そんなギリシャではあるが、他方で、古代ギリシャの時代が深く刻まれる歴史的に非常に重要な国でもあるため、アクロポリスに代表されるような歴史的建造物も多い。そのため、そもそもギリシャ政府は経済発展のための手段として、観光産業に力を入れている背景がある。たしかに2004年のアテネオリンピック開催を契機に観光省を再設置し、観光客の取り込みに本格的に取り組んでいたが、昨今の増加率は半端ではない。
国連世界観光機関(UNWTO)が発表した調査結果によれば、2012年に1,550万人だった国際観光客到着数が、2016年には2,480万人、2017年には3,000万人を超えている。2012年から2016年の5年間で60%を超える増加率を記録しており、調査が行われた各国の中でも最大の増加率となっている※1、2。

ではなぜ今、エーゲ海に浮かび悠久の歴史を持つ国、ギリシャなのか。要因としてまずあげられるのは、税率の引き下げであろう。ギリシャの税率はギリシャ危機の影響もあって変動が激しく、現在は対象商品・サービスによって税率が異なる。例えば日用品類は23%だが、飲食や宿泊に係る税率は13%に引き下げられている。実際に行ってみると、景色の良いお洒落なレストランや、有名なシェフがいるレストランであっても、1人当たり60ユーロ程度で愉しめるため、日本や他欧州諸国と比べると、とてもリーズナブルに感じる。
他方で、ギリシャ諸島の代表格であるサントリーニ島等のホテルでは、税率は抑えられているものの、昨今人気の高さに宿泊価格自体が上昇している。2013年から2015年の2年間の推移では7割~9割程度も上昇しており、2016年以降も価格上昇の傾向は続いていると考えられる。そうした価格上昇においても需要の落ち込みがみられないのは、体験価値視点でのValue for Moneyとして、上昇した価格であっても成立するブランド力が確立できているからだ。それはアメリカの総合情報サイト「U.S. News & WorldReport」が毎年発表するランキングでも表れており、2016年の「世界で最も優れたハネムーン目的地」のランキングにおいてサントリーニ島が第1位に選出されている※3。

 

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サントリーニ島の美しい景観

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洞窟的な内観を持つホテル「Perivolas Hotel」

 

このサントリーニ島の需要を支えているのは、近年のSNSを通じた表現欲求・承認欲求を満たすに適した、フォト/ムービージェニックな高級感のある景観であり、他のリゾート地に比べてそれ程メジャー感がなく行き尽くされていない地であるといった要素は当然あるだろう。だが、実際に行った人間の所感としてはそれ以上に、そこにしかない特徴的なホテルの内観デザインや行き届いた人間味のあるサービス、エーゲ海で獲れる魚介料理といったあらゆる要素が、支払った金額よりも値打ちがあると思えるものであった。

売上を伸ばすパラメータは、単純化すると1人当たり単価×延べ購入者数であり、購入者数が伸び悩むと、どうしても価格を下げて購入者数を上げようとしがちだが、価格だけ下げたところで購入者数が増える保証はない。ギリシャ観光客増加の肝は、税率引き下げによる割安感もさることながら、それと同時に、顧客の“マンマ・ミーア!”をいかに演出するかによって、顧客が感じるValue for Moneyを引き上げていることにある。機会があれば是非、本場のマンマ・ミーア!を体験するべく、今ホットなギリシャへ旅行してみてはいかがだろうか。


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