働き方改革でまず取り組むべき、「インターナルブランディングの進め方」。

HCI広報

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書籍「ザ・インターナルブランディング」の出版を記念して2021121日に開催されたオンラインセミナーインターナルブランディングの進めでは、コロナの影響で働き方改革がますます加速する中、今取り組むべき企業改革について段階を追ってご紹介した。

リモートワークが進み従業員との心の距離が離れてしまう企業もあれば、逆にテクノロジー等を活かして結束が増し、成長につなげる企業もある。それはつまり、インターナルブランディングが機能しているかどうかとも言い換えられる。

このコラムをご覧いただければ、その違いが生まれる理由と、インターナルブランディングを実施する具体的なステップもイメージいただけるだろう。

従業員の働き方を変える「インターナルブランディング」とは?

まず初めに、「インターナルブランディング」という言葉の意味からお伝えしたい。ある有名な組織における逸話『レンガを積む人、教会を作る人』を用いてご説明すると分かりやすいだろう。家を建てている現場に行き、そこで働いている人に「何をしているのだ?」と聞いた。すると、答えた内容が人それぞれで違うのだ。「レンガを積んでいる」と答える人、「壁を作っているのだ」と答える人、「私は教会を作っているのだ」と答える人。さらには、「人々の心が安らぐ場所を作っている」と答える人もいる。つまり、自分の仕事を“作業”と捉えているのか、“目的”と捉えているのか、“その意味”まで分かって働いているのか、という捉え方が大きく異なるのだ。


この捉え方によって、仕事に対するモチベーションやエンゲージメント、仕事での創意工夫や生産性が変わってくる。言い換えると、「オーナーシップ」、「自分ごと化」、「自律」ができているかどうかということであり、ご紹介した逸話では、一番下の段階“意味まで分かった働き方”が望ましいというメッセージが込められている。

コロナで激変する環境の中、「インターナルブランディング」が重要な理由。

この理想的な状態を目指す「インターナルブランディング」という概念は、コロナの影響もあって、ここ最近とても重視され始めている。例えば、リモートワークが増えたことで、会社に対する帰属意識が非常に持ちにくくなっている。特に新入社員は4月に入社して以来、一度も会社へ行っておらず人事部と総務部の社員にしか会っていないケースも少なくない。また、コロナの影響で自由な時間もあり人生を見直した結果、今の仕事ではなく自分の本来やりたかったこと、社会に対して意味があることをやりたいという理由で退職する人も増えている。さらには、コロナに対する会社やトップの姿勢や情報発信への評価として、不信感が高まっているケースも出てきている(※1)。

つまり、コロナによって激変する環境下においては、今まで以上に「働く意味を従業員と共有すること」の重要性が増しているのだ。つまり、理念やビジョン、ミッションやパーパスといった働く意味を企業が掲げたうえで、それを一人ひとりの社員の行動変容、さらには事業としての成果まで落とし込む必要がある。それを実現する方法を、我々はインターナルブランディングと呼んでいる(図1)。

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(図1)現場レベルでの「ブランドビジョンの実体化」のポイント

「インターナルブランディング」は、進め方で結果が変わる。

インターナルブランディングの実施には、段階がある。ビジョン、方向性をつくり、その上で人々に伝えていく。そして行動を変えていき、やがて企業文化のレベルになって継続され定着していく。この各段階を乗り越えるためには、それぞれに壁がある。しっかり腹落ちして行動が変わり、組織文化にしていくために、壁の乗り越え方を確認しよう。

 

STEP1:“現場に効く”伝達方法の選択

まず、最初は「会社の方向性を従業員にちゃんと分かってもらうためにはどうすればいいのか」という段階。これは特に経営者の方にお話を聞くと悩まれている方が多い。「折に触れて会社の方針を何度も言っているのに、どこまで本当に分かってくれているのか疑問だ」と、多くの経営者は語る。我々がプロジェクトでお手伝いするときには、必ずヒアリングをするが、「トップの言っているメッセージは、腹落ちして分かっていますか?」と聞くと、大体役員の半分ぐらいの人が「分かっている」と回答し、残りの人は「あまりよく分かっていない」のが標準的な会社の状態のようだ(多分想像以上に伝わっていないと思う)。

これは、単純に言えば伝える回数が足りていないことが大きな原因でありもっとも重要なポイントだ。例えば家庭内で、パートナーや子供の習慣や行動を変えてもらうために、どれだけ言葉を費やさなくてはいけないかをイメージしてもらうと、トップからのメッセージの回数が圧倒的に足りないということはご理解いただけるのではないかと思う。ただしトップは忙しく、何度も繰り返し言いつづけることには限界がある。そのため、トップから直接ではなく、従業員のあいだで会社の改革や方向性が話題に上り、議論されるような状況を作ることが重要になる。そしてメッセージの意味をただなぞるだけではなく、自分の頭に1回入れてアウトプットするという機会があれば、理解の度合いは大きく向上することになる。

最近では社長の方針演説を動画にする企業も多い。繰り返して見てもらえるように、イントラネット上に置いている、ということもよく聞く。だが、動画をただ作れば、見られる場所においておけばよいということでもない。プラスアルファの仕掛けが必要になる。

例えば我々がお手伝いをしたケースでは、従業員の間で話題化するために社長の演説をARアプリで展開した。それぞれの従業員一人ひとりの手元に、ある日、アプリインストール用のQRコードとマーカーが印刷された書面が送られてくる。アプリをダウンロードしてスマホをそのマーカーにかざすと、スマホの画面越しに、小さな手乗りサイズの社長が歩いてきて、会社の方針についての演説を始めるという施策だ。

ARのアプリになっているので、従業員は演説する社長を手のひらに乗せて、写真を撮ることもできる。社長が何か面白いことを始めたぞ、という話題がきっかけでよい。従業員の間で社長とそのプレゼン動画の件が会話に上れば、「面白いことするもんだよね。ちなみに、社長が言っている話なんだけど、どう思う???」という流れで、トップからのメッセージが会話の中に入り込む機会を増やすことを狙った。

くだらないかもしれないが、この施策によって「メッセージを聞いたことがない」という社員はかなり少なくできたように思う。

一方で一番良くないのは、会社がきちんとした社長メッセージと資料を作って全社員にメールで送ったものの、従業員は『全社メール』というフォルダーを作って自動仕分けしていて、一度も目に触れないまま・・・といったケース。残念だが、こういったケースは実際によくある。

(悲しいことだが)従業員はトップや会社からのメッセージを、自分がきちんと聞かなくてはいけないこととしてそもそもとらえてくれていないことすらあるのだ。社会人として、従業員としてあるまじき、というご意見には賛成するが、それが現実なのだという前提から考え始めることが大事なのかもしれないと思う。

次に、「自分の頭で考える機会をつくる」点に関しては、オフィシャルで会社の方針について従業員同士が話し合う機会をつくることだ。忌憚なくコミュニケーションをとる、それも普段接していない従業員同士でコミュニケーションする場をつくることが、非常に有効であり重要である。従来は多くの工数をかけて、全国に店舗のある企業であれば休みにして、飛行機代やホテル代を出して、会場をおさえて従業員を集めていたりしていたのが、今はリモートで比較的簡単に実施できる。今こそ、積極的に開催するチャンスだ。

 

STEP2:“行動変容を起こす”施策設計

「行動変容」という段階をどのように起こすか。こちらにはティップス的なやり口が2つほどある。1つは、“行動習慣から始める”というものだ。人は行動を変えると考え方がそれになぞらえて変わってくる。例えば、コロナ前の話になってしまうが、幾つかのタクシー会社で、運転士がいったん降りてドアを開けて迎え入れるというサービスをしていたのをご存じかと思う。実はこれも、意識改革の一環として取り組まれているもの。ドアを開けて迎え入れることは、つまり、乗客を運搬するだけが仕事ではなく、自分がサービスマンであるという意識をつくるために行われていると考えられる。

そこまで丁寧に迎え入れたお客さまに対して、運転席に戻ったとたん、ぶっきらぼうで不躾な態度をとると、直前の行動と整合性がとれない。サイコパスでもない限り人間はそういった行動はとりにくくなると、行動心理学的にも言われている。行動から変えることで、自然と丁寧な口調、返事もきちんと行うという意識が向上していく。アクションをきっかけに考え方を変えていく有効な方法だ。

もう一つ、社員の行動を起こさせるスイッチで有効なのが、外部からの期待値をつくるというものだ。これはミラー効果と言われる。例えば、広告を出して「これから我々はお客様のためにこんなことをやっていきます!一段上のサービスを展開します!」といった宣言をしてしまう。そして、「最近、おたくの会社いいサービスしていますね」とお客様から言われると、それに応えたいという気持ちが出てきて、従業員の行動が実際に変わってくる。

さらにミラー効果において、意外と重要なステークホルダーが家族だ。「従業員が属している会社がいかに良い会社なのか」、「これからどんなことをしようとしているのか」といった内容を家族に話した時の「お父さんの会社はすごいんだね!」といった会話が、従業員のやる気を起こさせる。

 

STEP3:継続的な成果を生み出す“仕組み化”

最後の段階では、こうして変わった行動を一過性で終わらせずに、きちんと企業文化に落とし込んでいく。そのために重要なのが、仕組み化だ。中でも“相互称賛”という仕組みで、会社のバリューや行動理念に沿った行動ができている人に対して、例えばグッジョブカード等を使って相互に評価をする仕組みである。

最近では実際に導入している企業も非常に多く出てきているが、やりとりをただするだけではなく、人事上の評価につなげていくと非常に有効だ。さらに、称賛をもらう側もそうだが、渡す側にも大きな喜びが持てる仕組みにできると、企業文化という深さで根付いていきやすい。

実はこれらの方法は、昔から有効だと言われていたが、運用が非常に手間で難しかった。

ところが最近出てきた「HRテック(Human Resource Technology)」のおかげで、かなり状況が変わっており、実施しやすい環境が整ってきている。

こういった企業変革、組織ルート改革において、我々は様々なお客様の課題と向き合って、数々のインターナルブランディングをサポートしてきた。

これらの内容にご興味のある方は、ぜひサービスページをご覧いただき、資料のダウンロードまたはお気軽にお問合せいただきたい。

※1:博報堂コンサルティング「WITHコロナ時代の新しい企業と従業員の関係構築のありかた ~業界別・年代別に見る従業員の意識変化とは~」より

 


書籍「ザ・インターナルブランディング」のご購入はこちらから

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<書籍概要>
タイトル:『ザ・インターナルブランディング』
著者:栗原隆人/鵜川将成
刊行:株式会社同友館
発売日:2021年1月7日
ISBN:9784496055232
本体価格:1,600円(税抜)
URL:https://www.amazon.co.jp/dp/4496055236/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_CBZ5FbDHT6H5P

 

 


 

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