企業がブランド経営を推進するに当たって、アナログやデジタルなどあらゆるメディアをうまく活用したコミュニケーション戦略が不可欠です。コミュニケーションには広告やPRなど様々な手法がありますが、ブランドの視点から言えばメディアは単なる掲載枠ではなく、ブランド価値を高めるためのコラボレーションのパートナーだと捉えるべきです。そして、パートナーとしてのメディアを選定する上で重視すべき判断基準は、「自社のブランドターゲットに合致したメディアであるかどうか」です。
ブランドターゲットとは、そのブランドにとって理想的な顧客層であることは既に述べました(第5回参照)。広くあまねく不特定多数の人々ではなく、ある程度限定されたブランドターゲット層ということです。それは単純な性別や年齢に留まらず、価値観やライフスタイルにおいて共通性を持った層となります。つまり、企業がメディアを選定するに当たって重視すべきは、自社のブランドターゲット層とそのメディアのターゲット層がどれだけ重なっているかという点にあります。
わかりやすい例としては、雑誌メディアが挙げられるでしょう。雑誌は4大マスメディアの中でもリーチ(到達度)が相対的に小さいメディアです。そのため、リーチを追うのではなくターゲットの絞り込みに力を入れる傾向にあり、企業にとっては自社のブランドターゲットとの親和性を比較的イメージしやすいメディアと言えます。
ただし、雑誌単体の発行部数によるリーチでは、ときには費用対効果が不十分であると判断される場合もあります。それを避けるためには、雑誌とのコラボレーションによって制作したコンテンツをブランディング活動のシンボルとして活用し、誌面掲載に留まらず自社サイトや店舗、あるいはファンコミュニティなどを使って、自社の既存顧客層などにまで拡散するというのが有効なアプローチとなります。
このことは、雑誌のみならず他の様々なメディア選定についても同様です。在京キー局や大手全国紙などのごく一部の巨大リーチメディアを除けば、強い個性や独自性こそがパートナーとしてのメディアの持つ価値となるのです。
(文化通信 2014年12月22日号掲載)
※本連載は文化通信に寄稿した内容を転載しております。