1. まずは「テクノロジーの使い方」に関心をもつこと

前回まで、マーケティングの「進化の系譜」について解説を行ってきたが、さてこれからのマーケターにどの様な視点を持つことが必要か。大きなところでいくと、「その時代のテクノロジーをフルに使って新しい仕組みを作るということ」にもっと頭を使うべきであろう。何故に日本からGoogleが出てこなかったのか、何故に日本からAmazonが出てこなかったのか。そもそもそこを問題にすべきだと考える。

コンビニエンスストアが凄いと思うのは、1970年代に、POSデータや、その時代の最先端のテクノロジーを如何にマーチャンダイジングや品揃えに使うかというところで非常に画期的なことを行い、そしてそのコンセプトがいまだに生きていること。既に世の中にあるテクノロジーの組み合わせによる新用途創出、というようなイノベーションはもっとあちこちに存在して然るべきだが、そのような「テクノロジーの活かし方」についてはあまりにも無意識過ぎるのではなかろうかと感じる。

ただ、注意しなければいけないのは、テクノロジーに関しては今まで様々なブームがあり、そして去って行くブームが多くあるということ。例えば、「マスカスタマイゼーション」は、一時かなり注目された言葉ではあるが、今や誰もそんなことは気にもしていなくなってしまった。メディアが報道するものは、一番変化が激しく、未知が大きいところになるのは必然的でもある。例えば今だったら、ビッグデータはだんだん話題ではなくなってきている気がする。ではビッグデータの重要性が、2014年に比べて2015年で下がったのかというと、全くそんなことはない。メディアの着目量にあまり振り回されてはいけない。「メディアや世の中が注目しているから、重要」というステレオタイプではなく、自身として、そこを上手く見極める力、そして覚悟が必要である。

一方で、多くの企業が、その様な「見極める力」「覚悟」を有しているかといえば、現実はその様なものでもないだろう。最も多いケースが、「ナンバーワンブランドが使っているから」という理由だけで採用を検討し始めるというケース。トップ企業は、自分の頭で判断し、覚悟を持ってそれを採用できるからこそトップたり得るのだが。また、ベンダーに対して企業が「何か先進事例はありますか」という聞き方をしてしまうケース。先ずは、見極められていない、見極めていないということを認識しないと駄目であり、前述のケースは、見極めているようで実は判断を外に委ねるだけなのだ。

例えば建機メーカーのコマツさんは、かの有名な“KOMTRAX”という、既存のテクノロジーを活用した新しい仕組みを、自分たち自身で、自分たちのために考えて開発した。それを見てうちも出来ないか、と他の企業が言い出し始める。そこの違いは、単に導入タイミングの違いよりも、もっと本質的な「テクノロジーへの向き合い方」という本質的な部分にあることを認識するべきであろう。

  

2. 目的意識を常にもち、自ら考え続けること

テクノロジーを見極めるために、もう一つの重要な視点があるとすれば、強力な「目的意識」を持ち、自ら考えるスタンスであろう。即ち、「こうした方がもっと儲かる」とか、「もっと良くなる」というのを、常に考えることこそが、然るべきテクノロジーを発見する力に繋がっていく。

例えば前述のコマツは、もともと「建機を現場で盗まれないようにするためにはどうしたらいいか」という、強力な目的意識があったと聞く。そういう中で、「じゃあ遠隔で止めることが出来たらいいんじゃないか」という発想につながり、GPSを載せた。そうすると稼働状況等が全て可視化できることがわかり、「このデータを使うと、壊れる直前に部品を届けておくことが出来る、これはサービス力をアップに大変役に立つ」、という様に繋がっていった。

セブンイレブンのPOSシステムも同様である。当時は、POSというかバーコードシステムはアメリカの方が普及していた。アメリカでバーコードを何に使っていたかというと、レジの間違いを減らすためとか、レジの人件費を減らすために使っていた。しかしセブンイレブンは、これは品揃えの錬度を上げるための情報収集に使えるのではないか、と考えてやってみて、実際に出来るようになった。申し上げたいこととは、最初からそれを全部構想していたのかというと、そうではなくて、最初は盗まれないようにするための工夫から、こういうことも出来る、ああいうことも出来ると進化させていったこの経緯である。強力な目的意識と、自ら考えるスタンスがあったからこそ、上記の様なイノベーションが生まれたのだ。

■マーケティング戦略の「進化の系譜」 ― 連載コラム一覧