東京都渋谷区は、「LGBT」と呼ばれる性的少数者への対応として、「パートナーシップ証明書」を発行する手続きを始めました。あくまで自治体レベルでの取り組みであるため戸籍のような法的な根拠にはなりませんが、LGBTのカップルが自分たちの関係性を公的に証明する手段として活用することができます。

LGBTへの対応は行政のみならず企業にも広がっており、結婚祝い金や休暇制度などに関する社内制度の見直しや、社員の理解を促進するための研修を導入する事例が増えています。グローバル化に伴うダイバーシティ経営を目指す日本企業にとっても、重要なテーマであるという認識が広がりつつあるようです。

LGBTをターゲットとした情報マガジンサイトを運営していたパジェンタ(現在は解散)が2006年時点で実施した調査結果によれば、日本のLGBT人口は約274万人に上るとのことで、これは京都府や広島県の人口に匹敵する規模になります。正確な数字や実態をデータで把握することは困難ですが、企業のマーケティング活動にも影響を及ぼす規模であることは間違いありません。

具体的な事例としては、携帯電話料金の家族割引や生命保険の受取人への適用などが挙げられます。また、旅行やホテル、ブライダルなど、カップルあるいは家族単位で消費されることの多いサービスについては、女性向けやシニア向けなどと同様に、特定のターゲット層のニーズに特化してきめ細かく応えたプランが今後増えていくでしょう。なお、日本政府観光局も2020年の東京オリンピック開催に向けたインバウンド需要の拡大を見据え、英語版ウェブサイトで東京や京都にあるLGBTにおすすめの観光情報などを発信しています。

このように行政や企業によるさまざまな動きが見られ、今後もこの市場は活性化していくことが予想されます。LGBTに限らず全てのマイノリティについて言えることですが、本来望ましいのはマイノリティもマジョリティもなんら区別なく商品やサービスの便益を享受できる社会です。その前提に立ったときに、現状の自社の商品やサービスの設計を見直すべき点があれば見直すというのが、効果的なマーケティングのアプローチになると考えられます。

(文化通信 2015年12月28日号掲載)

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