「わが社もこれからは、シニア層をターゲットとした商品開発やマーケティングを強化しなければ」という機運が社内で高まっているという企業も少なくないと思います。確かにそれは重要で、会社の将来を左右するテーマと言っても過言ではないでしょう。しかし、そのときに具体的にどのようなターゲット像を思い描いているでしょうか? パリッとしたジャケットをスマートに着こなした白髪の紳士や、高級ホテルで友人たちとランチやティータイムを楽しむ上品なマダム。そんなステレオタイプなイメージに引きずられてはいませんか?

ここで冷静に数字を見てみましょう。グラフは65歳以上の高齢者世帯の所得分布を示しています。ご覧の通り、ボリュームゾーンは年間所得が100万円から300万円までの世帯であることは明らかです。その数およそ500万世帯と、日本の全世帯の実に1割を占めます。ただ、年収100~300万円と言えばそれほど生活に余裕があるとは言えないですし、実際、平成25年の国民生活基礎調査では54・3%の高齢者世帯が「生活が苦しい」と回答しています。どうやらステレオタイプなイメージである白髪の紳士やマダムたちとは、かなりギャップがあるようです。おそらくはそういう人たちは、どちらかと言えばグラフの分布の右端に属する方々なのでしょう。

グラフ: 高齢者世帯の年間所得金額階級別分布

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このことは、シニア層へのマーケティングを考えるときに極めて重要になります。自分たちが狙うべきターゲットは、ボリュームゾーンである年間所得100~300万円程度の人たちなのか、それともより収入の高い豊かな人たちなのか。

前者のいわば「普通の高齢者」をターゲットとする場合のポイントは、「貯蓄するよりも魅力的な消費」であることです。年間所得こそそれほど多くはないですが、実は彼らは多額の貯蓄を持っています。将来不安に駆られた多くの高齢者は貯蓄に励み、消費に対して臆病になっていると考えられます。これを払しょくするほどの魅力ある製品・サービスをいかに設計するかが、この巨大な潜在消費層を動かすための第一歩となるのです。

(文化通信 2015年3月23日号掲載)

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