わずか6冊。これがAmazonで検索されるBtoB領域のマーケティングをテーマとした書籍の数です。一方で「法人営業」をテーマとした書籍の数は2000冊以上にのぼります。この出版タイトル数の大きな差は、BtoB事業における関心の領域が「営業」接点へと傾いている表れともとれます。が果たして、人を中心とした営業力の強化だけでBtoB事業はうまくいくのでしょうか?

BtoB買い手企業の状況

BtoB取引における顧客である買い手企業は、長期にわたる円高や国内市場の構造変化によって、購買対象の品質や価格にこれまで以上に高い水準を求めるようになっています。また、商材の選定における精度を高めるため、購買プロセスや購買関与者の役割をより吟味する傾向にあります。

我々は、購買対象の製品やサービスの特性、具体的には、「売り手と買い手の情報の非対称性」と「買い手企業の事業収益へのインパクト」の2軸に基づき、買い手企業の購買特性を分析する調査を行いました。
詳細な調査結果は別の機会にご紹介しますが、興味深い結果として、購買プロセス上の「デライト体験=印象に残る出来事」とその蓄積が最終的な取引満足や他者推奨につながることがわかりました。つまり営業接点以外でも、取引満足や推奨意向に高く寄与しうる要素があるということです。

BtoB売り手企業の状況

一方、売り手企業に目を転じてみると、経営課題や事業課題レベルでの解決策の提案が求められているにも関わらず、これまでの「義理人情」を中心とした対応から、(いまだその要素は重要であるとしても)なかなか抜け出せないという状況が多々見られます。買い手が必ずしも「営業の手厚さ」のみで意思決定をしていないにも関わらず、いまだ営業個人のスキルに頼っている傾向にあるのです。
そして、実際に我々にいただくご相談のほとんどが、個々の営業力強化ではなく、組織的なマーケティングテーマへとシフトしています。その代表的な5つのテーマを下記に示します。

  1. 新規顧客との接点が作れない/初期接点から営業訪問につながらない
  2. 既存顧客の他部署へのアプローチのきっかけが作れない/紹介してもらえない
  3. 広報宣伝部が行う広告やウェブサイト、展示会などのイベントと営業活動がうまく連動しておらず効果も測定できていない
  4. 一部の優秀な営業マンや販売店・代理店の営業力に頼っており、優秀な営業人員の退社=売り上げ減という状況になってしまう
  5. 新規顧客開拓のマーケティングプランの構築や業務連携の仕組みづくりなど、部門間を調整し要望をまとめる「マーケティング人材」の適任者がいない/プロジェクトが動かない・暗礁に乗り上げてしまう

これらは、BtoB事業の担当者であればいずれかは心当たりがあるのではないでしょうか。

そしてこれらの課題を解決するためには、状況に応じて複雑に変化する買い手の購買活動を捉え、購買プロセスの段階に応じた取引満足や継続意向を促す「組織的なマーケティング活動の設計」が重要なのです。

(博報堂コンサルティングニュースレター 第17号掲載)