仕事柄、BtoB企業含め、多くの企業の経営者やマーケティング担当の方との接点がありますが、最近、そこでよく伺うお話があります。様々なモノやサービスが同質化しつつある今般、全ての企業にイノベーションが必要な時代。必然として、マーケティング戦略も従来の方法から脱却した、(その企業にとって)新しい取組みとなることが多くなります。そうでないとやる意味がありません。ここまでは当たり前の話。

よく伺うお話とは、「やらなければいけない取組」と皆が理解しているにも関わらず、何故か実行されないことがあまりにも多いということ。 新しい取組が、誰しも納得できる内容であったとしても、その施策の実行担当者の「今までこうやってきたから」という抵抗の論理だけが強烈にまかり通り、あら探し的な言い訳や詭弁が真実のように語られ、結局何も実現されなくなるという構図。

これが「思い込みの罠」。皆様の周りでも思い当たる節はありませんか?
我々がご支援する際にも、そのようなことは頻繁にあります。

何故、このような事態が頻繁に起こるのか。これは、終身雇用制度や曖昧な業務分掌を背景に、自発的な協力関係を成立させていた日本企業が、成果報酬型給与体系や、小単位の組織・個人毎のミッション設定にシフトした結果、その悪い方の出目として、組織や個々人の勝手な思い込みで「閉じてしまう」危険性が増えたとの見方があります。

そのメカニズムとは、以下の3段階で説明されます。

  1. 仕事自体が自己完結できる環境で、やるべきことを毎日ひたすらこなす
  2. 自分の仕事の「殻」に閉じこもるようになり、外部に触れず勝手な理屈で考えるようになる
  3. 外からの指摘に、著しい防御的反応を示し、時に攻撃的反応すら示すようになる

こういう状況を放置すると、同じケースが企業内で頻発することになり、結果として企業の生産性が著しく低下していきます。

ちなみに、BtoB企業の広報部や宣伝部は、直接営業活動とリンクしない取組が中心です。どうしてもそこだけで完結してしまいがちになり、気をつけないと、「取組自体が目的化」してしまう恐れがあるとも言えます。その活動は、そもそも何の目的で行っているのか? 本当にそれで顧客が動くのか? 実際に効果が出たのか、きちんと検証してみたか? 「思い込みの罠」には決して陥らず、目的との整合性を常に見つめなければいけません。

勿論これは、どんな企業、組織でも起こる可能性があります。大切なことは、そういうことが「必ずどこかで起こりうる」ことを、個々人が常に念頭に置いておくこと。そしてそうならないよう、個々人が常に「健全な自己否定精神」を持つこと。勿論、我々のような立場の人間も含めて。

逆に、もし動かす必要がある人が、「閉じて」いたら? これは本当に大変な状況です。「リアルなブランディング」を標榜し、具現化に徹底的に挑戦する我々として、得た経験値から語りたいことはありますが、それはまた別の機会に。

(「産業広告」2010年11月号 掲載)