「人」の能力を引き出し、組織力を向上させる「タレントマネジメント」を支援する株式会社TM Futureの代表取締役、竹内美奈子さんのインタビュー連載第2回です。(以下敬称略)

 

第2回 プロジェクト併走型の「タレントマネジメント」

(1)  「タレントマネジメント」の形態

楠本: 竹内さんが実施されている「タレントマネジメント」とは、単に採用や選抜するだけではなく、プロジェクトとして実施されるということで、とても興味があります。そのプロジェクト併走型のタレントマネジメントの形態と目的を教えてください。

竹内: 基本は企業や組織の中で対象となる方々、例えばマネージャーや幹部候補の方とか、接客をする店舗の方などを集めます。最も特徴的な点は、一方的にレクチャーをするという研修型ではないということです。そして、テーマやゴールを設定して、それに向かって確実にゴール、あるいはアウトプットにたどり着くようなプランを立て、そのプロセスを通して人の育成を行います。ですので、対象になる方々にはきちんと目的を持ってテーマに取り組み、実際にアウトプットを出していただきます。例えば、幹部候補の方の育成の際には、実際に施策を作成し、それを役員会に提言をして施策を通すという目標を立ててもらい、そのためにはどんな施策を作ったらいいかということを実際に考え立案していただきます。できるだけ現場で使っていただけるようなものを実際に作っていきます。

楠本: その中での竹内さんの役割は、対象者の方がゴールに向かって頑張れるよう導くことなのですね。例えば、我々もコンサルティングのプロジェクトで、クライアントの皆さんに実際にやっていただくこともあるのですが、「タレントマネジメント」のような視点はあまりなくとても面白いアプローチだなぁと思います。実際のプロセスを簡単に教えていただけますか?

竹内: 私がやる時は必ずインタビューを入れます。「メンタリングインタビュー」というものです。例えばある企業で幹部候補の方の研修を行った際、その企業の社長様が選ばれた14人の候補の方がいらしたのですが、最初に全員にインタビューを実施しました。そのプロジェクト期間は6か月だったのですが、中間と最後にも実施しました。メンタリングインタビューの目的は、最初は彼らが持っているスキルがどれぐらいかとか、どんなことを日頃考えていらっしゃるかといった思考特性のようなものを見ます。さらに、彼らの課題認識やどんな姿勢・意識を持たれているのかなどの情報収集と、目標設定やゴールの共有です。
中間のインタビューは、プロジェクトの中間で一緒に振り返るということと、彼らの成長を確認することが目的です。あるいはうまく行っていないこともありますので、振り返って彼らの成長の状況や意識の変化などを確認する。そして、最後も同様です。結果やゴールに対しての認識を合わせたり、最も重要なことは、彼らが一体どういう内省をしているかです。何を学んだか、身に付けたことを身に付けたときちんと理解しているか、まだ身に付いていないことは、例えばここまでは身に付いたけどここから先は足りないとか、まだもう少しストレッチしなければいけないなど、彼らの現状認識をインタビューで確認します。

 

(2)  「タレントマネジメント」を進める上での工夫

竹内: プロセスの2つ目のポイントは、フレームワークは提供するが、あくまで対象者に主体的に取り組んで頂くということです。実際に使うフレームワークや手法はレクチャーしますが、それを実際に使ってケースをやっていただくあくまで体験型です。ゴールに向かって今日は問題の分析をやりましょうとか、今日は施策を立案する第1ステップをやりましょうとか、フレームワークを提供して、それを元に実際に取り組んでいただきます。問題解決の手法を身に付けていただくことが重要ですので、あくまで私の役割は、そのファシリテートですね。

楠本: 身に付けていただくというのは、フレームの使い方ですか?

竹内: フレームワークを使って課題解決を前に進めていくということを身に付けていただきます。それを繰り返しながらゴールに向かいます。

楠本: 皆さんが議論をしている内容を聞きながら、伸びたなとか、ちょっと変わったなどと感じられることはありますか?また、インタビュー以外で観察されることもありますか?

竹内: それはありますね。例えば、グループワークの中での発言や行動の変化から感じたりします。それらを観察記録にして、プロジェクトのオーナー、社長や役員の方にも報告します。

楠本: コンサルタントもプロジェクトをやるのですが、そこに竹内さんのような方が伴走されるようなケースも増えていますか?

竹内: 企業の中でも、組織をまたがったプロジェクト型の仕事って増えていますよね。例えば、経営企画室の仕事も、いわゆるオペレーショナルな仕事だけではなく、そういったプロジェクト型のものもあります。私はそういうところと人財の育成をつなげていくというニーズはあると思っています。育成だけが現場の仕事からかけ離れているのも望ましくないですし、現場で効果が実感できることや、実際にアウトプットを出していくということと結び付けられるものならば、その方がずっといいと思っています。

楠本: そういった場合は、プロジェクトと人財育成のどちらが主体になるのでしょう?

竹内: 私の場合は人財育成が主体ですね。こういうものを作ってほしいと言われて、人財育成が主体ではなく、プロジェクトマネジメントそのものをお受けする場合もあったりするのですが。
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(3)  「プロジェクト併走型」を行う3つの理由

楠本: 「プロジェクト併走型」で実施される理由はどのようなことでしょう?

竹内: 三つあります。一つは、人の育成ってすぐに効果が出るものではないので、定点観測をしていく必要があるためです。
二つ目が、人の育成や人の成長は受け身ではなく、自分で気付いて内省して、主体的に行動や言動を変えていくことが大切ですので、決して一方的にレクチャーして終わりではないこと。
そして三つ目が、その組織風土を知ることです。課題は育成の場だけではなく、組織風土にも必ずあるはずですので、月2回訪問したら、研修の場のみではなく、その会社の様々な組織に属する方々と話してみて、その組織風土を知るようにします。
この三点がそういう「プロジェクト型」でやるという意味かなと思っています。

楠本: プロジェクト併走型のタレントマネジメントは、どのようなプロジェクトテーマと相性がいいと思われますか?例えば、業務プロセスの改善なのか、事業開発なのか、マーケティング戦略なのか…。様々なテーマがあると思うのですが、竹内さんとして、こんなテーマのプロジェクトを併走してやるとより効果が上がるなぁとお考えのものはありますか?

竹内: これじゃなきゃいけないというお題は特にないのですが、なるべく全社的なテーマで行うようにします。よくあるのは、自分の部署のことは分かるけれども、他の部署のことを考えたことがないとか、考えられないとか、部分最適はできるけれど全体最適が考えられないケース。でも、そこでストレッチしていただくということはすごく重要なんです。そうすると、自分の得意分野以外のこと、他の部署のことも知らなきゃいけないし、それこそ他にどんな持ち味を持った人がいるんだろうっていうことも理解しないといけません。そういった全社的なテーマや、マルチファンクションの人たちで構成する必要のあるテーマが望ましいです。例えば、接客のクレドの作成を、店舗スタッフの方だけではなく、マーケティング部門や教育部門、営業部門、場合によっては人事部門も巻き込んで、全社的なプロジェクトとして実施する。なおかつ、単なる育成プログラムではなく実際の業務で、でき得るならばスモールスタートができ、効果がすぐ現場で確認できて、振り返りができることが望ましい。その振り返りを通してまたプロジェクトは成長していきますので。テーマは大きいけれど、スタートは小さくしましょうとよく言っています。

楠本: そうじゃないとリアリティがないですものね。

竹内: そうですね。育成だけが宙に浮いているのではなく、その育成のプロセスを通して作ったものが、実際に現場の施策になり、そのこと自体を回していくことが、組織を動かしたり、人を動かすことに必ず直結しますので。

楠本: 壮大なテーマ、例えば2025年の会社を考えようといった内容も面白そうですよね。

竹内: それはそれでもいいんですけれど、アクションプランとして、実際に明日からできることは何だろうっていうことも考えられた方がリアルでより面白いですよね。そのことを通してまたいろいろな振り返りができるので、継続的なテーマが望ましいなと思います。

 

―「企業経営における『タレントマネジメント』の重要性―第3回:人財育成のビジョンとチームビルディング」 に続きます


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株式会社TM Future 代表取締役 竹内 美奈子 氏

立命館大学法学部卒。
NECの人材開発部門にて10年間人財育成に従事、その後SE職に職種転換、プロジェクトマネージャー兼ラインマネージャーとして、システム構築の統括や組織マネジメント、新規サービスの立上げを行う。2003年よりグローバルヘッドハンティング会社 スタントンチェイスインターナショナル(株)にジョインし、2007年より同社代表取締役副社長。2013年同社を退職し、「人」の能力を引き出し、組織力を向上させる「タレントマネジメント」を支援する(株)TM Futureを立上げる。企業、大学、パブリック、非営利法人を問わず、人と組織の問題、リーダー育成、人の能力を引き出し、成長を支援する、コンサルティング、プロジェクト支援、メンタリング活動などを行う。
2015年9月より、ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ(Bリーグ)理事に就任。


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