「自社の社員には発想力がない」と嘆く経営者は少なくない。経営者にとって必要なのは、そう嘆く前に社員が持つユニークな発想やアイデアにスポットライトを当て、それを革新的なビジネスとして実現していくことではないか。高い発想力を持つ企業に共通する「4つの張力」について、博報堂コンサルティングの2人の共同CEOに解説してもらった。



「企業の発想力」とは 社員の発想を照らす力である

喜馬:経営視点で捉える企業の発想力とは、「社員(人)が発想するアイデアを革新的なビジネスとして実現することができる力」と定義できます。
一人のカリスマの発想が突出した企業は例外として、多くの企業ではまず社員からアイデアが発想されます。次にそのアイデアがビジネスとして成立することで、初めて世の中が「発想力のある企業」と認識するのです。企業の発想力を高めるには、社員の中に胎動する発想を照らす力が必要です。社員がアイデアをビジネスに転換できる環境を整え、挑戦を後押しする風土が重要なのです。

山之口:問題の本質は、社員一人ひとりの発想が企業としての発想に結びついていないこと。経営者はさまざまな仕掛けを用意し、社員が自由闊達に自分の発想を世に問うことができる仕組みをつくるべきです。先の読めない時代だからこそ、過去のデータや経験則に頼っていたのでは、イノベーションは創出できません。社員の心のうちに眠る発想をうまく引き出し、事業へと転換していく仕組みが必要です。たとえば、博報堂グループでは、広告づくりを通して、生活者の“次の欲求”を先回りして提案してきました。そこには、個の力に頼るのではなく、ブレーンストーミングなどの共創作業、多様な人材による“雑談力”からアイデアを養う独自の仕組みを活用しています。

喜馬:高い発想力を持った「イノべーティング・カンパニー」とは、どのような企業でしょうか。私たちがコーポレートブランディングのプロジェクトで協働したパーソルグループとダイハツ工業という2つのベストケースを紹介します。
「パーソル」は、多彩なHR(人材)事業会社が参画するアジア最大級の企業グループです。2016年、「はたらいて、笑おう。」のタグラインの下、新ブランドを導入。「人々が“働く”を通じて幸せになれる社会づくり」という統一の思想を共有し、それぞれの事業会社が革新的なビジネスを創出しています。
たとえば、傘下のテンプスタッフが手掛ける「iPS細胞培養技術への派遣事業」は、グループ内で蓄積された人材発掘のナレッジから最先端医療を支える高度な技術適性を算定するロジックを科学的に解析。多くの派遣登録者の中から潜在的な才能を持つ人材を発掘し、新たなキャリアデザインを提案する画期的な事業です。医療の人手不足を解消するだけでなく、派遣社員にも最先端医療に携わる新しい体験がもたらされる、すばらしいイノベーションと言えます。
「ダイハツ」は、軽自動車販売で国内最大級のメーカーですが、少子高齢化や車離れを背景に、事業戦略の見直しを迫られていました。「軽」に強いダイハツは、都市圏よりも地方に広く普及していることから、その強みを活かし、「ローカル主導型マーケティング」を採用。世界有数のカーブランド群が多数存在する日本市場で、独自性を発揮しています。
その主役は地域の販売会社と現場スタッフ。彼らが地域ごとに独自のマーケティングコンセプトを定め、地域単位でダイハツブランドのファンとエンゲージメントの強化に責任を持つ。地域で育ち、そこで働く社員だからこそ発想できる「地元の価値化」をブランドの中核に据え、新たなサービスの創出に結びつけた好事例です。

 
パーソルダイハツ

(左)パーソルグループは共有したビジョンに基づき、各事業会社が革新的なビジネスを生み出す。
(右)ダイハツ工業は地域単位でファンとのエンゲージメントを強化している。

 
≫第2回に続く

 
 
※本コラムは、DIAMOND Harvard Business Review(2018年 9月号) 掲載のタイアップ記事 ”イノベーティング・カンパニーへの変革 -社員の発想と行動を跳躍させる「4つの張力」- ”より転載しております。