< 第2回 > 日本の企業は “内なるグローバル化” によって生き残る

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本コラムは、明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト『Meiji.net(http://www.meiji.net/)』に掲載された記事「日本の企業は “内なるグローバル化” によって生き残る(2018年4月25日)」の内容を転載しております。

大きく変わった企業と消費者のコミュニケーションの関係性

急激に発展したICT環境は、また、企業と消費者のコミュニケーションの関係性を変えつつあります。従来は、企業が自社のファン層を形成する有効な手段はマス広告でした。しかし、SNSなどのソーシャルメディアが発達した現在では、無差別的な幅広いマス広告を打っても、効果的なブランディングは期待できません。一方で、ネット広告の配信システムは、技術的にまだ過渡期にあり、短期的な購買に対してアプローチするのが中心で、持続性に繋がっているとはいえない状況です。そこで、いま注目すべきは、企業側からブランドの価値を伝達するというよりも、価値を消費者とともに創る取組みです。企業が従来行ってきた広告活動には、プロモーションだけでなく、文化やアミューズメント創出の側面がありました。コンテンツの少ない時代は、企業がそうしたコンテンツを一方的に送り出すことが有効だったわけです。しかし、ICTの発展とともに、様々な人たち、すなわち一般消費者各々が様々な大量のコンテンツを発信し、それを楽しむコミュニティが形成される環境になっています。すると、プロのクリエイターがスポンサーとなる企業と手を組んで発信することで得ていた効果にも、限界が現れるようになりました。逆に、企業は、一般消費者たちの創作活動に寄り添い、例えば、情報やネタを提供したり、そこに形成されるコミュニティを支援していく方が、マーケティング活動としては、より効果的であるといえます。つまり、企業と消費者のコミュニケーションの関係性が大きく変わりつつあることを意識したブランディングが必要になっているのです。


企業のトップがマーケティングの感覚をもつことが必要

近年、マーケティングの分野は、データドリブン・マーケティングに代表されるように、従来のマス・マーケティングから、顧客一人ひとりに対する深い理解を目的としたデータの作成、収集、分析を行い、企業と顧客の長期的で良好な関係を形成する方向へ向かっています。しかし、日本ではデータの収集や活用において過渡期にあり、まだ持続性に繋がっていないのが現状です。こうした現状を進展させ、少子高齢化が進む日本の市場に対応し、生き残る企業体質を構築していくには、企業のトップがマーケティングの感覚をもつことが必要です。例えば、欧米では、CMO(最高マーケティング責任者)という役職が存在感を増しています。アメリカのトップ500社のうち、約3割の会社がCMOのポストを設けているというデータがあります。それに対して日本では、時価総額上位300社のうち、CMOを設けているのは0.3%に過ぎません。[※1]欧米には、マーケティング活動を経営者の管理下に置き、企業活動の中核に位置づけるというマネジリアル・マーケティングの認識があるのに対して、日本ではいまだに、マーケティングは現場の担当者に任せる業務という認識なのです。しかし、企業が成長していくには、顧客を創造していくことが必要です。そのためにはマネジリアル・マーケティングの体制作りが不可欠です。内なるグローバル化も、自社のユニークネスを自覚し、強みとして転換することも、企業と消費者のコミュニケーションの関係性を再構築することも、データドリブンマーケティングを戦略化することも、企業のトップの判断と決断が必要なのです。

≫終

【参考】
 ※1: 経済産業省 商務情報政策局 「ビジネスモデル革新について」文中 経済産業省「消費インテリジェンス報告書」
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/shoujo/service_koufukakachi/pdf/003_06_00.pdf

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