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  • 組織改革・人材育成

どう取り組む?「働き方改革」

「働き方改革関連法案」によってもたらされるものは何か。安倍首相が掲げる一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジと位置づけられる働き方改革。政府は多様な働き方を可能とすることで中間層の厚みを増し、格差社会の解消、そして成長と分配の好循環を実現することが狙いであるとしている。
この法案の善し悪しはさておき、昨今この働き方改革が、民間企業においても注力するテーマになっていることは皆さんも感じるところだろうと思う。長時間労働の是正や、テレワーク・副業といった柔軟に働きやすい環境整備等について既に取り組まれている企業も多い。そうした背景には、売り手市場と言われるように企業にとって人材獲得難の時代ということが挙げられる。価値観・生き方が多様化する中で、かつてのような企業のネームバリューを軸にした安定的・画一的な就業・給与形態ではなく、それぞれの社員が自身で選択して働ける環境が、優秀な人材を惹きつけていく構図となる。こうした時代においては、企業は優秀な人材を囲うのではなく、優秀な人材と“繋がる”という意識への改革や、自社に惹きつけるための魅力的な“サービス”を本気で検討することが必要となっている。そんなサービスのひとつのアプローチとして、社員の「食」をサポートする企業が増えてきている。

すぐ取り組める社員向けサービスのトレンド

社食サービスの代表例といえば、やはりGoogleだろう。社員には朝昼晩3食すべてが無料で提供され、世界中の料理が現地で食べるのとほぼ同じ味で食べられるというGoogleの社員食堂は、早い・安い・多い定食が主流だったこれまでの日本企業の社員食堂とは大きく異なるという意味で、当時のオフィスワーカーに与えるインパクトは大きかった。今は、GoogleやAppleといった先進的大企業のみならず一般企業にも浸透しているが、一方で充実した社食の導入におけるハードルは意外と高い。今や社食が充実しているとよく挙げられるSmartNewsにおいても、30人規模だった創業当初、提供数の少なさから導入は簡単ではなかったという。とはいえ、中小企業の割合が99.7%※1を誇る日本においてSmart Newsと同様の例は少なくない。ただ最近は、そうした社食を導入したくてもできない中小企業に向けて、社食サービスを提供する企業も出てきている。
例えば、株式会社AIVICKが運営する置き弁サービス「タベナル置き弁」や、株式会社おかんが提供する「オフィスおかん」だ。タベナル置き弁とは “富山の置き薬ならぬ、置き弁当で実現する画期的な簡易社食サービス” である。彼らが提供する置き弁は、管理栄養士監修による栄養バランスの取れた美味しいご飯という前提のもとで、「国産素材・無添加・野菜150g・500Kcal前後・塩分2g前後」という特徴に加え、ストレスからカラダを守る高い抗酸化力と、保存料や防腐剤等を一切使用せずに〈製造日+4日間〉の消費期限というロングライフを実現したものとなっている。特に、このお弁当としては長期の消費期限は、急な会議や出張で食べられなくなっても翌日・翌々日に食べられるという利便性をもたらし、現代の忙しいオフィスワーカーのアンメットニーズに応えていると言えるだろう。

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「タベナル置き弁」

筆者が勤める博報堂コンサルティングも、今年1月からタベナル置き弁を福利厚生の一環として導入し、現在では同僚の多くが利用しているが、繁忙期は圧倒的に不規則になりがちな食生活をサポートしてくれている。
マンパワーグループの自主調査を参考までに挙げると、会社の福利厚生として良いと思うものとして、「住宅手当・家賃補助」が48.3%で最多、次いで「食堂、昼食補助」が33.9%、「人間ドックなど法定外の健康診断」が33.0%という調査結果がある。また、実際にあった福利厚生で良かったと思うものとしては、「食堂、昼食補助」が最多で17.1%、次いで「住宅手当・家賃補助」が16.7%、「余暇施設、宿泊施設・レジャー施設などの割引制度」が14.5%だという※2。
企業成長においては優秀な人材が必要なのはいつの時代も不変でありながら、優秀な人材の獲得が極めて難しい現代において、被雇用者が企業を選定する際に重視するポイントは仕事のやりがいや金銭的条件、ワークライフバランス等様々であろう。そうした要素を、企業努力によって被雇用者に魅力的なものとして提示するのは限界もある。だが、被雇用者がその企業で働きたいか否か/継続して働くか否かを考える時、食にこだわりがある方であれば社食サポートがその揺れ動く気持ちを押すこともあるだろう。バブル時期のようにお金や名声が社会を席巻していた時代から、各々の価値観で物事を判断する現在の社会潮流は、企業にとっては優秀な社員を惹きつける工夫ができる余地が拡がっているともいえる。経営者の立場からはもしかすると、たったそれだけのことと思われるかもしれないが、一被雇用者として自身に置き換えて考えてみると、意外とそういうところが大事なのかもしれない。

【生活者・社会潮流を捉えた、新規事業開発/事業成長戦略を検討したい】
・新規事業開発/事業成長戦略ソリューション ⇒ 担当 横田

 

 

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メニュー例「紅鮭の塩麹焼き」(左)/「ポークジンジャー」(右)

※1:経済産業省中小企業庁調査室「平成29年4月 2017年版中小企業白書 概要」
※2:マンパワーグループ自主調査
https://www.manpowergroup.jp/client/jinji/surveydata/150422_01.html
※写真提供:株式会社AIVICK

※本コラムは、スルガ銀行グループ 一般財団法人企業経営研究所(http://www.srgi.or.jp/)発行の季刊誌『企業経営 2018年夏季号』(No.143)に掲載された連載「最近のビジネス・コンシューマートレンド」の内容を転載しております。


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