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競争激化するスマートスピーカー市場

「手の平を占有するスマートフォンは理想的なデバイスではない。」世界最大のモバイル機器メーカーのエリクソン社は、今や世界中に浸透したスマートフォンについてこう語っている。日本国内におけるスマートフォン普及率は2017年に77.5%を超えるまでに拡がった。[※1] アップルは昨年末、10万円を超えるモバイル機器「iPhoneX」を発売したが、これまで同様に発売前から行列ができる程の人気っぷりである。
私たちは、つい最近まで利用していた固定電話やPHS、“ガラケー”なる携帯電話を経て、スマートフォンというとてつもなく便利なデバイスを手にした。WEBサイトのみならず、様々なアプリケーションが生み出されていったことによって、当時、PCが手の平の中に納まっているかのような感覚と感動を受けたことを今でも覚えている。しかし、そんなスマートフォンもテクノロジーの進化に伴い、近い将来に淘汰されゆくデバイスと言われている。たしかに、現在のスマートフォンは扱う際に片手ないしは両手を使用することになるため、運転中や家事中には利用できない等、スマートフォン利用中はそれ以外のことができないというデメリットがある。さらに今後5Gの実現によって、現在の4Gより数十倍程度も通信速度が向上して大容量通信が可能になることで、IoTは加速度的に普及してくることは明確といっていい。モノ同士がインターネット上でネットワーク化されると、私たちの生活は大幅に変わってくるだろう。そうした環境の中、家庭向けIoTとして昨今市場で売上を伸ばし、注目されているのがVUI(Voice User Interface)の代表とされる「スマートスピーカー」である。Amazonの「Amazon Echo」、Googleの「Google Home」、LINEの「WAVE」等、昨年より日本でも各社が発売を開始しているため、既にご存知の方や利用している方もおられるのではないか。

SmartSpeaker1

昨年国内市場で他社に先んじて発売されたGoogle Home

 

このスマートスピーカーの最大の要は“音声アシスタント”の搭載だが、音声アシスタントとはつまり人間が発した言葉を解釈して適切に返す人工知能(AI)機能であり、これこそがスマートフォンに搭載されるタッチ操作の次となる新たなプラットフォームになるとされている。前述のAmazon Echoには“Alexa”、Google Homeは“OK Google”、WAVEには“Clova”、またAppleのHomePodにはiPhoneでもお馴染みの“Siri” が、それぞれ搭載されている。今後、家電製品や自動車等の様々な機器にAI機能を持つ音声アシスタントが搭載されていく際に、どの企業がそのプラットフォームを掌握するかが彼らのビジネスの命運を握ることになる。

こうした背景により、IoT競争の初陣として現在AmazonやGoogle、LINE、そしてApple等の最先端テクノロジー企業たちがこのスマートスピーカー市場でしのぎを削っているわけだが、日本よりも先行して発売されている米国・英国を中心にしたグローバル市場では、2017年で既に2,400万台が出荷台数として予測されている。その内訳として、Amazon Echoが71%、Google Homeが15%、その他で14%といった市場シェアになっており、現時点ではAmazonが圧倒的優位な立場に立つ。[※2]

SmartSpeaker2

“ながら利用”が可能なスマートスピーカー

 

音声アシスタントがもたらす未来とは

昨年の全米テクノロジー協会(※2015年までは全米家電協会)主催の新製品お披露目イベントであるCESにおいても、機械学習や自動化、インタラクションな反応といったテーマが全体として多く扱われていたが、その中でも「The New Voice of Computing」は主催者側が発表した重要トレンドの筆頭としてあげられた。この過酷な競争の中でAmazonは中心的な役割を果たしており、サムスン社やフォード社といった企業がスマート冷蔵庫や自動車にAlexaの搭載を検討していると言われている。2018年のCESでは、昨年からの発展としてスマートホームの更なる進化版や、第2の家とも呼ばれる自動車におけるIoT関連製品が多く発表されることだろう。

これまでスマートフォンの普及によって情報やコンテンツがデジタル化してきたが、今後は家電や自動車を筆頭にあらゆるものでIoTが進むことによって、生活自体がデジタル化していくフェーズを本格的に迎えることとなる。その時、我々ブランド・企業サイドとして考えることは、音声アシスタント機能が現在のスマートフォンの役割に取って代わるとすると、音声インターフェースを通して多くの購買活動が行われることが想定される。そうした時の「○○が欲しい」にあたる○○はおそらくカテゴリ名称や固有ブランドであり、すなわち今以上にカテゴリNo.1でいること、もしくは生活者から純粋想起されるブランドであるということが、“生活者”から選択を勝ち得るために最も重要な要素となる時代に突入する。スマートスピーカー市場勃興のすぐ先には、自社におけるスペシフィックな特徴を洗練させられる少数の企業と、そうでない大半の企業といった形で二極化していくシビアな戦いの始まりを予感させる。

 

 

 
【参考】
※1: 博報堂メディア環境研究所「メディア定点調査2017」(http://mekanken.com/mediasurveys/
※2: Strategy Analytics “Global Smart Speaker Forecast 2014-2022″(https://www.strategyanalytics.com/access-services/devices/connected-home/consumer-electronics/market-data/report-detail/global-smart-speaker-forecast-2014-2022#

※本コラムは、スルガ銀行グループ 一般財団法人企業経営研究所(http://www.srgi.or.jp/)発行の季刊誌『企業経営 2018年冬季号』(No.141)に掲載された連載「最近のビジネス・コンシューマートレンド」の内容を転載しております。


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