ブランド実現の担い手は社員である。社員がブランドビジョンを自分ごととして捉え、仕事における行動や判断基準に反映することで実現に近づく。そのためビジョンのエッセンスとそれをめざす意義を社員に伝え理解と共感を促す施策は重要であり、恒常的に続けていく必要がある。その上でブランドビジョンを組織的アクションに転換していくには、2つのポイントがある。

1つ目は、ゴールイメージを明確に示すことである。いかに分かりやすいビジョンでも、概念だけで皆のイメージを合わせることは難しく、リファレンスとなるものが必要だ。例えばアップルは1980年代、コンピューターの未来像を表現したコンセプトマシンとイメージビデオを発表した。その映像は、同社の思い描く未来のマシンのあり方と使われ方を象徴的に描写したもので、描かれた機能の多くは実際にその後の同社製品で実現されている。映像以外にも、自社の将来像を文章でストーリー化する、BtoB事業であればめざすビジネスのモデルケースを作成するなど、様々な方法が取り得る。

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※図: ブランド社内浸透の課題と対応策

2つ目は、会社の本気度を示すことである。ブランドビジョンは長期目標であるため、裏を返せば社員にとっては喫緊度が低く感じられ本気度が伝わらないことも多い。本気度を伝えるには、上記に挙げた継続的活動に加えて、対外発信を効果的に活用することが有効だ。社外に対しビジョンとその実現への挑戦を発信することは、社員の目には顧客や社会に対するコミットメントと映り、真剣さが伝わる。具体的な発信手段は、企業広告はもちろん、トップインタビューやIRでのプレゼンテーションなど、会社の意思を伝える手段や場は全てその対象となる。これらのメッセージを社員が目にするよう手立てを講じておくことが重要だ。

(日経産業新聞 2016年2月10日付朝刊 スタートアップ面「ビジネス事始め」掲載)

 
 
■成長に向けたブランド戦略(全10回) ― 連載コラム一覧

※本連載は、日経産業新聞朝刊 スタートアップ面の連載コラム「ビジネス事始め: 成長に向けたブランド戦略」の内容を転載しております。