差別化はマーケティングの基本であり、すべてと言っても過言でないが、そのアプローチは一つではない。顧客の製品・サービスに対する知識や期待を分析し、いかに戦略的・創造的に差別性を生み出すかはブランド構築上重要なポイントだ。

例えば、顧客は製品・サービスに対し、期待する便益と、便益の高さ・確からしさを判断する基準を持っている。洗剤であれば、顧客の主な期待は「汚れや臭いを落とすこと」と考えられるが、顧客がその仕組みを「汚れや臭いを分解すること」と理解している場合、多くの企業は「分解力」を競い、またその高さを伝えようとするだろう。一方、顧客の期待に立ち戻れば、実は「汚れや臭いがつかないようにする」というアプローチも成り立つ。その有望性を顧客に“啓蒙”できれば従来の製品・サービスに満足していない層を獲得できる。

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※図: 差別化アプローチの例

また、純粋にブランディング的手法として、自社の特徴を起点に、価値の意味を深め差別化を図る方法もある。例えば、経済性を訴求点とするブランドが「低価格」から「賢い選択」「シンプルな生活」「調和の取れた生き方」などに価値を展開する。

深めた価値に訴求力があり、またその過程で築かれたブランドへの連想が豊かであるほど差別性は高まっていく。無印良品などはまさにそうしたプロセスを辿ったブランドと言えるだろう。事実としての具体的特徴と、心理面にまでおよぶ価値が互いに結び付いて理解されることで、顧客の知覚の中に独自なポジションが築かれるのだ。

差別化を考える時、顧客志向の合言葉のもとニーズに「対応」する方法を考えてしまいがちだ。だが、その本質は顧客に「選ばれる」ことと考えれば、「顧客に働きかける」「自社の個性を磨き込む」といった考え方も持ち得る。

(日経産業新聞 2016年1月13日付朝刊 スタートアップ面「ビジネス事始め」掲載)

 
 
■成長に向けたブランド戦略(全10回) ― 連載コラム一覧

※本連載は、日経産業新聞朝刊 スタートアップ面の連載コラム「ビジネス事始め: 成長に向けたブランド戦略」の内容を転載しております。