カテゴリーとは、生活者・顧客から見た製品・サービスのセグメントである。クルマでいえば、「ハイブリッドカー」「SUV」「ミニバン」などだろう。
カテゴリーがマーケティングにとって重要なのは、生活者・顧客がカテゴリーを起点に選択行動をするからだ。顧客は購入する製品・サービスのカテゴリーを選択した上で候補のブランドを検討する。いかに優れたブランドでも、他のカテゴリーを検討している顧客を獲得することはできない。
上記の検討の枠組みを踏まえると、ブランドの側としてはそれが属するカテゴリーを明らかにした上で、カテゴリー内での差別性を訴求することが必要になる。特に新ブランドをローンチする際は、ターゲットに対し彼らの選好するカテゴリーに属するブランドであることを示す必要がある。その手掛かりは広告宣伝でメッセージする(例えば、「○○向け」「○○系」と定義するなど)ことから、製品・サービスの機能やデザイントーン・ネーミング、販売店舗のタイプや売り場など様々ある。
※図: カテゴリーのシグナリング手段
一例を挙げればコンパクトデジタルカメラ市場で高級コンパクトカメラ、アウトドア向け防水カメラ等のサブカテゴリーが形成された際、前者のカテゴリーでは、普及型市場でカラフルなカラー展開が競われていたのと対照的に各社とも黒一色となり、後者では材質やデザインでタフさを表現するのが一般的となった。これらはまさに、新カテゴリーに属するブランドであることを伝える手段と捉えられる。
顧客の目が肥えた昨今、顧客は様々な断片的情報も手掛かりにして、それが検討対象とすべきものか否かを判断している。顧客の知覚構造を考慮し、既定のルールに沿う部分と、個性として打ち出す部分を見極めてブランドを設計する必要がある。
(日経産業新聞 2016年1月6日付朝刊 スタートアップ面「ビジネス事始め」掲載)
■成長に向けたブランド戦略(全10回) ― 連載コラム一覧
- 第1回 顧客の知覚で市場捉え直す
- 第2回 多様な知覚要素を考慮
- 第3回 顧客の認識力を考える
- 第4回 カテゴリー明示し個性付加
- 第5回 創造的に差別化を考える
- 第6回 自らカテゴリーを生み出し、ブランド化する
- 第7回 優れた「企業ビジョン」カギ
- 第8回 キーアクションでビジョン体現
- 第9回 社内浸透で実現を促進
- 第10回 デジタル技術で伝達効果進展
※本連載は、日経産業新聞朝刊 スタートアップ面の連載コラム「ビジネス事始め: 成長に向けたブランド戦略」の内容を転載しております。