前回記載した通り、生活者・顧客はブランドを多様な次元で知覚する。それらの知覚の総体で他との違いを評価し、選択している。従ってブランド戦略を考える上では、知覚要素のどこにフォーカスして差異性を作るのかがテーマとなるが、そこでの大きな課題は「多くの顧客は提供者が考えるほど製品・サービスについて明確に情報を認識・理解した上で選択するわけではない」ということである。特に生活者においてはそれが顕著である。

「多様な次元で知覚する」ことと逆説的だが、自分自身の購買行動を振り返ってみると、製品・サービスに凝らされた工夫の全てを理解して選んでいるのではないというのが実感だろう。もちろん高額なものであれば、失敗を回避すべくより多く情報を集め検討するが、購買判断に影響し得る全ての側面で候補のブランドを事細かに比較・吟味し、それらを総合して選択するケースは多くない。むしろそうして知り得た情報の中から一つ二つの要素が認識に残り、その中で好ましいと感じるブランドを選ぶような、より単純で感覚的な選択をしていることが多いのではないだろうか。

ブランドの特徴の認識力や理解意欲
※図: ブランドの特徴の認識力や理解意欲

こうした情報の理解力や処理能力の問題は、スタートアップ企業が世にない製品・サービスを送りだす場合にも起こりうる。革新的であるほど、受け手にはそれが何かを理解することが難しい。

以上のような前提のもとで差別化のあり方を考えたとき、効果的に違いを認識してもらう一つの方法として、前回の記事でブランドの知覚要素の一つに提示した「カテゴリー」を活用することが考えられる。人はカテゴリーで製品・サービスの利用目的を理解したり、ブランドの品質や価値の高さを認識したりしている。カテゴリーに紐づく知識に+αの要素を掛け合わせることで違いを効果的に伝え、理解を得るのである。次回はその具体的なアプローチを考えてみたい。

(日経産業新聞 2015年12月16日付朝刊 スタートアップ面「ビジネス事始め」掲載)

 
 
■成長に向けたブランド戦略(全10回) ― 連載コラム一覧

※本連載は、日経産業新聞朝刊 スタートアップ面の連載コラム「ビジネス事始め: 成長に向けたブランド戦略」の内容を転載しております。