ブランド経営のステークホルダーである顧客・従業員・投資家のうち、顧客のことを「ブランドターゲット」とも呼びます。ブランドターゲットは、「ブランドが意思を持って提供する価値と価値観が合致しているロイヤルユーザーで、ときには広告塔として他の潜在顧客層を引き込む吸引力のある層」と定義できます。

重要なのはブランドが目指す価値観と一致しているかどうかであり、実購買層とは重なる部分はあるものの完全に一致するものではないというのがポイントです。このブランドターゲットをどのように規定するかは、ブランド戦略の核心の部分となります。

基本的にはブランドターゲットを狭めれば狭めるほど、他とは異なるユニークなブランドを構築することができます。しかし、あまりにも狭め過ぎてしまうと、十分な顧客数を見込むことができなくなってしまうリスクもあります。

逆に、ブランドターゲットを広げれば広げるほど、大きな顧客数を見込むことができます。しかし、あまりにも広げ過ぎてしまうと、ブランドの個性が失われてコモディティ化してしまうリスクもあります。ブランドの個性と顧客数のトレードオフは、ブランド戦略立案の実務でも最も難しい点の一つです。

定義にある通り、ブランドターゲットは他の潜在顧客層への広告塔の役割を果たすこともあります。人は自分の好きな商品やサービスについて、周囲に語りたくなるものです。

特に最近ではソーシャルメディアの普及によって、この傾向がより強くなっています。ソーシャルメディア上では、お気に入りの商品やサービスについて、人々の間で日々膨大なコミュニケーションが交わされています。

皆さんも、友人のフェイスブックやツイッターなどで紹介されたことがきっかけで、そのブランドに興味を持ち、購入まで至ったという経験があるのではないでしょうか。

テクノロジーの進化によって、ブランドターゲットを狭く規定した場合でも、ソーシャルメディアをうまく活用すれば、その波及効果によって十分な顧客数を確保することが可能な時代となったのです。

(文化通信 2014年6月23日号掲載)

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