ブランド学者の原田将氏は著書の『ブランド管理論』(白桃書房)の中で、情報という経営資源であるブランドには二つの特徴があると述べています。

第一の特徴は、「蓄積性」です。すぐに消費されてしまいがちなモノやカネなどの資源とは異なり、情報資源であるブランドは長い年月をかけて蓄積されていきます。例えばシャンプーや自動車などは、通常、ある程度のサイクルでリニューアルやモデルチェンジが行われます。しかし、リニューアルされて中身が変わっても、ブランドは変わらないことが多いです。

このことは、まったく新しい名前で新製品を出すよりも、長年の価値が蓄積されたブランド資産をうまく活用した方が得策だという各社のビジネス上の判断を如実に示しています。

第二の特徴は、「多重利用可能性」です。ブランドは何度使用しても、基本的に減少することはありません。ある製品で顧客からの信用を獲得することができれば、それを他の製品やサービスに転用することが可能となります。家電メーカーによる映画・音楽などの娯楽サービスへの進出、自動車メーカーによる金融サービスへの進出など、ブランドをてこにしたダイナミックな事業の多角化が行われるケースは多いです。

このように、製品ラインナップの拡張や新規事業立ち上げの際、ブランド資産を活用して失敗のリスクを著しく軽減することができるのです。

さらに原田氏は、これらの二つの特徴がもたらす強みが「模倣困難性」であると指摘しています。生産技術やビジネスモデルなどのノウハウは、資金力にものを言わせれば模倣するのが比較的容易だといえます。一方、過去からの蓄積が価値の源泉となっているブランドは作るのに時間がかかり、模倣するのが困難です。

ブランドは基本的にオンリーワンの存在であるため、ライバル企業の真似をしようと思えばM&A(企業の合併・買収)でブランドを丸ごと買うしかありません。しかし、一般的に優良ブランドであればあるほど、競合他社からの買収に応じる可能性は限りなく低いでしょう。だからこそブランドは模倣困難であり、競争相手との強力な差別化ポイントになり得るのです。

(文化通信 2014年4月21日号掲載)

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