経営戦略としてのブランド、すなわち「ブランド経営」とは広告業界ではあまり聞き慣れない言葉かもしれません。しかし、企業経営の戦略として近年注目を集めています。ブランド経営の考え方を知ることは、広告業界の関係者にとっては広告主へ新たな提案を行うチャンスにつながるはずですし、メディア企業自身の経営戦略構築のヒントにもなるはずです。

ブランドという言葉はさまざまな文脈で使われ、明確に定義することが困難です。定義に関する詳細な議論は別の専門書などに譲るとして、この連載において一つだけ押さえていただきたいポイントがあります。それはブランド論を語る上で、「製品ブランド」と「コーポレートブランド(企業ブランド)」を明確に区別して考えなければならないということです。

もともとブランドはマーケティング論の中から出てきた言葉です。マーケティング論では、いかにして製品の差別化を図るかということを追究してきました。かつては機能や価格、販売チャネルなどが差別化要素として考えられてきました。しかし、時代とともに競争が激化するにつれて、どの要素も行き着くところまで行き着いてしまい、差別化が難しくなってきました。

そこで考え出された最後の差別化要素がブランドです。心理的なイメージによって付加価値を生み出すこの手法は、今日ではブランディングと呼ばれ、マーケティングの世界では既に定着しています。

やがてこのブランディングの考え方は、企業経営の領域にも拡張されていきました。ブランドという無形の経営資源を活用し、競合他社に対する持続的競争優位を築く。それがブランド経営の基本的な考え方です。そして、そのときにマネジメントすべき対象となるのはコーポレートブランドであり、製品ブランドとは明確に異なる性質を持つものです。

しかし、広告業界においてはいまだにブランドといえばマーケティングの話、すなわち製品ブランドの話が中心で、経営戦略の領域まで関心が及ばないのが一般的かもしれません。次回以降の連載を通じて、ブランド経営とはどのようなものなのかを明らかにし、それが広告業界やメディア企業などと一体どのような関わりを持つのかをお伝えしていきます。

(文化通信 2014年2月17日号掲載)

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