ユーザが多く集まり、活発にやり取りが生まれる優れたプラットフォームを作るにはどうすればいいのか。プラットフォーマーとして、プラットフォームビジネスを展開したいと考える企業の多くが、行き当たる疑問であると思う。

私は、プラットフォームに求められる”場力”の非常に大きな要素として、ブランド力があるのではないかと思っている。

ブランドは生活者との約束であり信頼の証である。また別稿国領先生の言葉をお借りすれば、プラットフォームの本質は、共通化された言語すなわち「ルール」の存在と、「信頼の提供」にある。この信頼をいかに形作っていくのか。それは、プラットフォームのブランディングを考えるということに他ならない。

では、プラットフォーム自体に求められるブランド力とは、どのようなものなのだろうか。

プラットフォーム自体にブランド力が求められる理由

プラットフォームのビジネス上の利点につながる最大の特徴はネットワーク効果にある。つまり、ユーザが増えれば増えるほど、それ自体が新たな価値を創造していく、というメカニズムが存在するということだ。

そのためには、一定のユーザ数を獲得し、かつ継続的にプラットフォームに参加してくれる状況をつくらなくてはいけない。

他の手段や他のプラットフォームではなく、そのプラットフォームを使ってもらう差別性を持った価値を作る必要がある。

では、差別性をどのように作り出すのか。このときに最初に押さえなくてはいけない特徴として、ある意味でプラットフォームは「半成品」であるということがある。プラットフォーム単独ではユーザ(サービスの受け手)に対して価値を提供できず、そのプラットフォームを活用するサービスの出し手としてのユーザ(他の一般ユーザの場合もあるし、企業であることもある)が存在して初めて、サービスの受け手は満足しうる。

そのためプラットフォームの実例では、「優れたサービスの出し手=キラーコンテンツを囲い込むこと」を持って差別性を担保しようとしたケースがあったように思う。例をあげるまでもなく、この手法で差別性を図ったプラットフォームはその後後発者との厳しい戦いに巻き込まれていく可能性が高い。サービスの出し手側に制限をかけてしまうことは、プラットフォームの持つネットワーク効果のメカニズムを意図的に封じることになるからだ。そして、他の優れたサービスの出し手が登場した時点で優位性は損なわれる。

キラーコンテンツはプラットフォームの初期にユーザを集めるキーとしては機能し得る。だがそれが唯一のプラットフォームの差別化の源泉になってないけない。

プラットフォームにとっては、サービスの出し手もユーザであると考える必要がある。サービスの受け手が増えることが、サービスの出し手にとっての価値となり、サービスの出し手が増えることがまたサービスの受け手にとって価値となるようなサイクルがプラットフォームの特徴だ。だからこそ、片側のサービスの出し手に頼るのではなく、“プラットフォーム自体“が他の手段や他のプラットフォームとの差別性を持ったブランド力を持っている必要がある。

 

プラットフォームは何を提供するのか

プラットフォーム自体に場力 = ブランド力を持たせるとして、そのためにユーザに約束する価値は、どのような種類のものでもよいというわけではなく、いくつかのパターンがあると考えている。

① ユーザ同士のつながり、交流
② (新たな)出会い、マッチング
③ 信頼の付与
④ 情報の集約、提供
⑤ 手続きコストの省略
⑥ 選定の代行機能

これらの機能を、ターゲットユーザにとっての魅力と感じられる域にまで高められるかどうかがカギとなる。

プラットフォームに求められる6つの場力

この 6 つの提供価値は、排他的なものではない。
そのプラットフォームがターゲットとするユーザのニーズに合わせて、時には組み合わせて設計をしていくべきものだと考える。

例えば、とある商品のファンを対象としたプラットフォームを作ると考えたとする。その商品自体の性質を踏まえ、ユーザが商品について語りあいたいというニーズを持っているのであれば、 ①ユーザ同士のつながりや交流をベースとしたプラットフォームとなるし、コレクターが多く、ユーザどうしで交換をしたりしたいというニーズを持っているのであれば、②の出会い、マッチングをベースとして、③および④の機能を付加していくような形になるだろう。

もしも自社の商品のファンのニーズがこの 6 パターンで満たせないとするならば、そのターゲットを対象としたプラットフォームは成り立たない、と考えるべきであるし、他の価値だけを売りにしてはいけない。例えば、そのプラットフォームに参加することで自社製品の優遇を受けられる、というような設計を考えてみてほしい。参加者は増えるかもしれないが、それだけではトランザクションは増えていかないだろう。この形のプラットフォームは作るべきではなく、既存の他のプラットフォームをメディアとして活用する形で十分代用できるものである。

場力を保ち続ける努力

プラットフォームが提供する価値を決めたら、それを具現化するべく、実装していく。その時、これも当たり前の話だが、プラットフォーマーは継続して、提供する価値を強化し続けていく必要がある。プラットフォームの持つ、ネットワーク効果のメカニズムは、このプラットフォーマーの努力なしに継続するものではない。

例えばユーザに合った商品を提案するような、マッチング型のウェブプラットフォームを考えてみよう。プラットフォーマーは、そのマッチングがユーザーにとってより精度が高くなるように、マッチングを提案するベースとなる情報の収集を行い、マッチングの精度を高めていくだろう。それは一度作って終わりではなく、新しいマッチングの軸を追加したり、より使いやすい機能を付加したりしていく努力を求められるものだ。デザイン性や機能性に加えて、エコであることやフェアトレードが選択理由となってきたように、時代背景や生活者の価値感の変化に合わせてマッチングの為に必要な情報は増えていくだろう。それでこそ、プラットフォームの持つネットワーク効果が最大化し、競合の追随を許さない強いプラットフォームを生む。

プラットフォームとマネタイズ

さらに、プラットフォームをどのようにマネタイズするか、という点を考えたい。プラットフォームのマネタイズ方法はいくつか考えられるが、このときに、プラットフォームの自体の持つブランド力とバッティングする形の課金モデルを採用してはならない。

これはちょうど、ブランドをエクステンションしていくときに、顧客と約束した提供価値を満たしていないような商品を出してはいけないというのと同じことだ。

例えば、①ユーザの交流、つながりに対して、一人当たりいくら、と課金したらどうだろうか。活発な交流を求めているのに、活発になればなるほどお金がかかるとなれば、それはその場所の価値をつぶすことになる。

③信頼の付与を価値にしているのに、信頼をお金で買えてしまってはいけないだろう。当たり前の話だが、決して忘れないようにしなくてはならないポイントだ。
プラットフォームが強くなれば、そこに集まるユーザの数が様々なビジネスの可能性を持ち始める。ただこの場の力は、継続した努力によって守られているもので、安易なマネタイズに走ることはプラットフォーム自体の崩壊を招くことにつながりうる。

プラットフォーム自体がブランド力を持った時、その場の持つレバレッジの力はより大きなものになっていくだろう。ただ、当たり前の話だが、そのためには強いブランドを構築する際と同様、プラットフォームの設計、機能全体でユーザとの約束を守った継続した努力が必要になる。

何かの魔法の杖という捉え方ではなく、地に足をつけたビジネス展開の一つの選択肢としてプラットフォームを活用できれば、その大きな力は企業にとって新しい展望を開くきっかけとなっていくはずだ。

(『Marketing Horizon』(2013 Vol.2)掲載)