ますます、タコツボ化していく組織

「正論だけでは、人も組織も動かない。」 そんな事は我々も百も承知であり、コンサルティングの際にはそれを見越し様々な気遣いや工夫を講じる訳ですが、それでもなお、「正しい内容を普通に進めること」が、簡単にいかなくなりつつあるような感覚があります。

様々な理由はありますが、主に、自分の担当業務にしか関心がなく、また自分の方法論にのみ固執するという、全体に共通する傾向の強まりがそうさせている気がします。仮に、誰もが正しいと判断できる内容でも、自分の業務範囲を超えるものや、従来の方法論を変える必要があるものには、非常に防御的であり、時として攻撃的反応すら見せてきます。「そんなことは昔やった」 「それは既にこちらで検討している」 「そもそも、何故それを今やるのか(と堂々巡り)」などの理屈を使い、結局何もやろうとしない。厳しい言い方ですが、これはドラッカーの言う「企業衰退の始まり」にあたる状況であり、これを放置すると、気づいたときには既に手遅れとなっている恐れがあります。

それを解決するための「インナーブランディング」というけれど

その様な、「閉じた」企業風土を刷新すべく、理念やブランドを社内求心力として位置づけ、全社を挙げてその浸透を図るという「インナーブランディング」活動に、今般多くの企業が取り組もうとしています。その場限りの対処法でなく、じっくりと企業風土自体から変革していこうとする姿勢については決して間違ってはいません。しかし、理念やブランドを掲げ、単純にその浸透活動に一生懸命取り組めば、企業風土刷新の糸口が見つかるかといえば、そんなことはただの幻想でしょう。そもそも、やってもやらなくても、自分たちにとって直接的な影響がない様に見える類のテーマであることから、簡単に言うと「さらっと流されて」しまうことが多く、普通の状況であったとしても失敗する可能性がそもそも高く、更に受け手側の意識が閉じている状況下では、相当の工夫がないと成功には決して到達出来ないことは言うまでもありません。

「閉じた組織」における、進め方のポイント

では、どうすればこの難題と対峙することができるのでしょうか。今般、そのニーズの高まりから、インナーブランディングや社内浸透に関する書籍も数多くリリースされています。そこで共通して語られているノウハウ、例えば「巻き込み型で進めるべし」「双方向のコミュニケーションが重要」などは、皆さんご承知の通りだと思いますので、ここではプロジェクト経験を通じて見えてきた実践的なポイントを、幾つか紹介したいと思います 。

1. 「意識」と「環境」の関係性を捉えなおす

人の意識を変え、仕組みを変えていくという通念と逆の発想を持つ。啓発的なアプローチは、時間がかかりすぎるし受け手側の抵抗感を招く恐れもある。人の意識に影響を与えるための「環境」や「仕組み」のあり方を考えるということ

2. 理屈ではなく、感情にアプローチする

「分析し、考えて、変化する」というアプローチと、「見て、感じて、変化する」というアプローチでは、どちらが人の意識や行動の変革により強いインパクトを与えるか?論理的な正しさで「理解」はできても、イコール「納得」できている状態とは異なるもの

3. 「その進め方自体」を考えさせる

インナーブランディングの推進計画は、事務局が組むことが通常だが、無理なく組んだ計画でも、そういう人たちにとっては、それだけで押しつけに感じられることがある。大きなテーマだけ与え、その浸透方法から部門別に個別に議論させる方法が上手くいくケースも多い

4. 追い込み過ぎない。ワイガヤでもよしとする

運営側としては、真面目にやろうとすればするほど、しっかり議論させ、枠の通り記入させ、取組方針をコミットさせたいという願望に駆られるもの。しかしそこを強引に進めたとしても気持ちは付いてこない。時には、「今日はワイガヤで終わってもよし」という位の余裕が必要。時間は充分にある

5. キーとなる職層にのみ、丁寧すぎるほどやる

但し、インナーブランディングを展開する際の「基点」となる職層に対しては、丁寧すぎるほど、ブランドやその活動に対する深い理解と、それを具体的にどの様な方法で自らの口で語ればよいかについての手引きを行うべき。思い切ったメリハリの効かせ方が必要

以上の5つのポイントについては、セミナー等の機会で詳しくご説明したいと思います。何れにしても、全ての企業に共通して使える「一般解」というものはありません。「とりあえずはじめてみる」のではなく、個々の状況をじっくりと捉えた上で、その進め方を丁寧に検討することからはじめることが必要です。

(博報堂BCニュースレター 第26号掲載)