街はワールドカップの話題で盛り上がっています。勝っても負けてもその責任は監督に集まります。代表チームは様々なチームからの寄せ集め集団であり、しかも短期決戦で結果を出さなければならないのですから、極めて高度なマネジメント能力が必要とされます。企業に置き換えれば、社運をかけたプロジェクトの担当マネジャーの状況に近いのではないでしょうか。

一方、永続的に続く企業のマネジメントは、年間を通した総合的なチーム力の勝負となるクラブチームのマネジメントに近いでしょう。クラブチームにも様々な経営形態があり、有望な若手選手を早期に育成することでチーム力を高めていく中小規模のクラブもあれば、豊富な資金力を生かして、実績のある選手を外から集めてチームを編成するビッグクラブもあります。面白いのは、必ずしも能力の高い選手を集めるビッグクラブがいつも勝つわけではないということです。

個の力だけでは勝てない

マネジメントの視点から見れば、高いコストを払っている人気選手を常時起用する方が、興行面でも有利です。そのため、チームの看板選手はたとえ不調であっても試合に出ざるを得なくなり、結果として、チームのパフォーマンスが落ちて、勝てなくなる悪循環が起こりえます。
そもそもサッカーはチーム競技ですので、攻撃の上手い人と守備の上手い人、シュートの上手い人とパスの上手い人、技術の高い人と体力のある人など、それぞれの役割を担う選手が集まってこそ、チームとして機能します。個々の選手の能力は劣っていても、選手の組み合わせがチーム戦術と一致していれば、勝ち続けるこができます。選手の能力も人気も上がっていきます。

勝ち続けるためのブランドポートフォリオ

この話は、企業における商品ブランドのポートフォリオ戦略のあり方を考える良いアナロジーとなると思います。具体的には、以下のような活動指針が導きだされます。

  • 企業ブランドを代表する商品ブランドを維持しながら、将来の主力となる商品ブランドに新しい企業ブランドイメージを加えていく役割を担わせる。
  • 単独のブランド力は弱いが、他の商品ブランドとの組み合わせで収益を下支えしてくれる商品ブランドを設定する。
  • 有力な商品ブランド同士がカニバリを起こしたり、不協和音を起こさないようにするために、適切な距離を置いたり、使い分けを行う。
  • かつて絶大な人気があり、多くの固定ファンを抱えるブランドを有効活用するために、名誉職的なポストを与えて囲い込む。

このような戦略的なブランドポートフォリオ強化のためには、以下の3つが必要だと考えます。

  1. 現場の監督や選手の声を聞きすぎることなく、大局的視点からクールに判断する
  2. 3~5年先の将来を見据えて、将来のスター選手候補を辛抱強く起用する
  3. 理念や提供価値に合った人材は、内部/外部問わず積極的に取り入れる

どれも基本的なことでありながらも、実行するのはとても難しいことばかりですが、それだけに成果は大きいといえます。

ブランドポートフォリオは生き物であり、完成形がありません。サッカーチームのフロントが、それぞれの選手(=商品ブランド)の成長ステージ、心身の健康状態、チーム内での関係を細心の注意を払って見続けていくように、時間とお金と気配りをかけて育てていくものと言えます。

(博報堂BCニュースレター 第18号掲載)