< 第1回 >デジタル・ブランド・フェイルファーストの実現を 効率的なマネジメントを実現する「部下が主役」の組織づくり

HCI広報

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昨今のマーケティングを取り巻く変化から、各企業はどのような組織再編を行うべきか。
主に30歳代~50歳代の上司世代に向けて、博報堂コンサルティングの池田氏が「自律組織へのシフト」という基本コンセプトと「3つの原則」の考え方について語る。

4月から新年度を迎え、新しい部署や店舗などのリーダーとなる上司世代の方々も多いのではないでしょうか。かつてないマーケティング環境の激変によって「昔取った杵柄」がみるみるうちに陳腐化してしまうこの時代、組織のリーダー役を担う方々の中には、自分の組織やチームをどのように設計したりマネジメントしたりすればいいのか、お悩みの方も多いかと思います。本稿ではそんな上司世代(主に30歳代~50歳代)に向けて、いまの時代に適した組織の基本的な「設計思想」と「3つの原則」について述べたいと思います。

組織の基本的な設計思想「自律組織へのシフト」

あらゆるものが変化する中で、当然ながら組織やチームのマネジメントの仕組みも、変化への適応が求められます。しかし組織とは難しいもので、長年同じ組織に属していると、その慣習が骨の髄まで染み付いてしまい、能動的に変化させられなくなるものです。
とりわけ日本のような終身雇用型の社会では、組織の仕組みも硬直化しやすい状況があります。何かを変えようにも、何が可変で何が不変なのか、その境目もよくわからないし、どこから手を付けていいか皆目見当がつかない。そんな上司世代の方々に対しては、「自律組織」というキーワードをご紹介したいと思います(くわしくは高橋俊介氏の著書『人材マネジメント論』が参考になると思います)。
まず「ピラミッド組織」と「自律組織」という2つのタイプの組織を比較した上で、これからの販促組織・チームの基本的な設計思想は、「自律組織へのシフト」であることについて、ご説明しましょう。

 

ピラミッド組織とは?

ピラミッド組織とは、一握りのトップが「What(やるべきこと)」を決め、中間管理職がそれを「How(やり方)」に分解し、ヒラ社員がそれを、「Do(実行)」するタイプの組織です。つまり、組織の末端を「具体的な命令」によって管理していきます。
日本の伝統的な大企業組織のほとんどがこのタイプに当てはまります。この極めてシンプルな組織マネジメントは、高度経済成長の時代に大いに力を発揮し、日本企業の躍進の原動力となりました。とくに、日本人のヒラ社員のひたすら実行し続ける力というのは、世界的に見ても非常に高いレベルにあります(ちょうどいまの上司世代の中は、このスタイルで育ってこられた方々も多いかと思います)。
しかし、近年、このピラミッド組織は徐々に時代に合わなくなってきています。なぜなら、世の中や消費者の多様化・複雑化により、ひと握りのトップだけで正しい「やるべきこと」を判断するのが難しくなってきたからです。その結果、多くの企業が、これまでやってきた「やるべきこと」を惰性で継続する状態に陥り、消費者のニーズからズレが生じてきてしまっているのです。
 

自律組織とは?

一方、自律組織というのは、WHAT→HOW→DO→CHECKのサイクルが、組織の序列で分業されておらず、顧客との接点である現場で、自律的にまわる仕組みの組織タイプです。トップが提示するのはビジョンやブランド提供価値などの「抽象概念」のみで、具体的に何をすべきかは、顧客接点の第一線にいるチームや個人の自律的な判断に委ねるアプローチです。
とくに店舗型のビジネスにおいては、リアルの顧客接点が最も重要なブランド体験の場であり、ここで消費者の心を動かすには、現場スタッフ一人ひとりの自律的な判断や当意即妙な行動こそ生命線となるのです。
今日の販促現場においては、ピラミッド組織のように一握りのトップが会議室の中で「やるべきこと」を決めてくれるのを待っている時間的余裕はありません。また、仮にそれを待てたとしても、その判断が正しいという保証はどこにもありません。現場のスタッフ一人ひとりが、トップが提示したブランドのビジョンや提供価値を自分なりに理解し、自分なりにそれを言葉や行動で体現することで、顧客接点でそれを自ら発揮しなければならないのです。
業界や企業によって多少の差はあれども、今後の販促組織、あるいは店舗型ビジネスにおいては、いかに早くこの自律組織へシフトできるかが生き残りのカギになると私は考えています。このことをシンプルに言い換えれば、「”部下が主役”の組織づくり」ということに他なりません。上司世代の方々には、とにかく「主役は自分ではなく、顧客接点の第一線を担う部下である」というマインドセット(価値観)を強く持っていただければと思います。

 

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「部下が主役」というマインドセット

実際に部下を動かす際にも、このマインドセットは非常に有効です。あなたにそのつもりはなくても、自分の言葉や顔には本音がにじみ出るもので、部下はあなたの根底にあるマインドセットを敏感に感じ取っているはずです。もしもあなたが部下に対して「主役はお前だから……」と口では言っておきながら、心の中で「つべこべ言わずに、いいからやれ」などと本音のところで思っていれば、その内なる声は100%部下に伝わってしまっていると思ったほうがいいでしょう。
「部下が主役」というマインドセットを、自分の中でしっかり腹落ちさせ、定着させることができれば、部下とのコミュニケーションもより円滑になるはずです。上司世代の中には、「なんだ、主役は上司であるこの俺じゃないのか…」とがっかりしてしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、気を落とす必要は全くありません。顧客接点の第一線でブランド体験を提供することについては部下世代に任せ、上司世代は自分たちにしかできないことに注力すれば良いのです。そして、それこそが組織再編やマネジメントの仕組みづくりになります。
たとえば部門を再編したり、評価制度を見直したり、決裁基準やプロセスを見直すといったことは、さまざまな現場経験の蓄積があり、販促業務の全体像を把握したベテランである、上司世代にしかできないことです。つまり、上司として組織のマネジメントの仕組みを再設計し、部下世代がのびのび働ける環境を整備することこそ、上司世代が取り組むベき重要な役割なのです。

第2回に続く

 

※本コラムは、株式会社宣伝会議発行の「販促会議」(2018年3月号)に寄稿した内容を転載しております。


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